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ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

みくる「あわわ・・・キョン君に古泉君・・・男性同士で・・・」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,004秒 2008/02/01(金) 22:25:52.28 ID:cFIU2DuE0

小泉「女子はだまってろよおおおぉぉぉぉっ!!!」


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:02:17.50 ID:QZ0sc76m0
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,004秒 2008/02/01(金) 22:25:52.28 ID:cFIU2DuE0

小泉「女子はだまってろよおおおぉぉぉぉっ!!!」


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:02:17.50 ID:QZ0sc76m0

「キョン×古泉君で漫画書くから ちょっとやりなさいよ!」
ハルヒはそう言って、がっしりと俺たちの腕を掴んだ
「は?」
訳が解らん。男同士で何をしろと言うのだ。
思い切り眉根を寄せながら、隣で、いつもの笑顔のまま、少しだけ小首を傾げる古泉と目線をあわせる。
おい古泉、何とか言ってやれ。
「ええと、涼宮さん」
何か言いかける古泉を、ハルヒが制する。
「そう! それよ!! 今の目線で会話する感じ! なによ、アンタ達もうできてるんじゃないの?」


10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:09:08.64 ID:QZ0sc76m0

ハルヒの言うことは、何時も唐突である。
本人は自分の発言で、何もかもを説明したつもりになっているようだが、
凡人の俺からしてみれば、コイツの言葉はあらゆる所が足りていないせいで、全く不可解だ。
「おい、長門」
相変わらず我関せずで本に目を落としている長門に声を掛ける。状況を説明しろ。
長門は無言で、パソコンに目をやる。パソコンの前では、朝比奈さんが顔色を三色に変えながら、画面を見詰めていた。
「はわ…ぶ、ぶーんそううけ…? や、801って、何なんですか~~~~~」
泣き顔の朝比奈さんも、俺に又良し。……ではなく、一体何を見ているというのか。
「涼宮さん、具体的に、僕達に何をしろというのですか?」
訳が解らないといった表情を、一瞬でポーカーフェイスに戻し、古泉が尋ねる。
頼むから、無茶振りはするなよ。俺はリアクション芸人じゃないんだ。
そう言うことなら谷口にやらせろ。まったく。


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:19:56.08 ID:QZ0sc76m0

「だーかーら!」
大声をあげながらハルヒは妙に薄い本を、俺たちの前に突きつけた。
「BLよ! ボーイズラブ!! 最近流行ってるのよ」
「ぼーい…? なんだそりゃ」
目の前の本には、お世辞にも上手いとは言えないような絵柄で、男だか女だか解らん、人のような物が描かれている。
よく見ると、うん? キスでもしてるのか? それにしては身体のバランスが悪い、悪すぎる。
「BL、ボーイズラブの略称。少年や青年など、男性同士の恋愛及び性行為を描いた小説・漫画のこと」
「よく解ってるじゃない有希、そうよ、BLよ! 何でこんな物を世間の女の子は好きになるのかしら、コレって一種のミステリーよね!」
「はあ…」
古泉も、どう返したらいいのか解らないのか、まじまじとぺらい本を眺めている。
「だから決めたのよ! 私も腐女子になってみるわ! いい? これから私…じゃなくてオレは、身体は女でも心は男よ!」
ハルヒはそう宣言すると、どこからともなく漫画道具を取り出す。
大方、漫画研究会辺りからガメてきたのだろう。だが、どうして一人称や性別まで変える必要があるんだ。
「有希、アンタはこれから、一人称を僕にするのよ! みくるちゃんもね」
朝比奈さん、さっきから画面を見たまま固まってますが。
「うふふ、SOS団、始動よ…じゃなくて、始動だぜ!!」


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:30:46.30 ID:QZ0sc76m0

長門曰く。
ハルヒは、朝からこそこそと、何かの本を交換したり、見せあいをしていた女子数名に興味を持ったらしい。
本来なら彼女達は、ハルヒの関わることのない、大人しめな子達だったらしいのだが
その、いかにも何かを隠している風の態度が、ハルヒの第六感を刺激したのだとか。
で、ハルヒはいつもの通り尊大な態度で、彼女達の所へずかずかと乱入し、結果、必死で隠そうとしていた本
……つまり、俺と古泉が見せられた、同人誌(個人で製作している本のこと:長門談)を奪ってきたのだとか。
彼女達は泣いてハルヒから本を取り返そうとしたのだが、時既に遅し。
持ち前の行動力と調査で、同人誌や腐女子が何たるかを知ったハルヒは、その特殊性に興味を示し
自分も腐女子になる! と、張り切っている。のが、今の現状。
「で、アレか」
長門の説明を聞きながら、俺はちらりと惨劇を横目に見た。
いつもの通り、朝比奈さんにハルヒが愛情表現…と言う名の、羨ましいセクハラをしている。
だが、その様子は何時もと少し違っていた。


19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:38:50.39 ID:QZ0sc76m0

「みくる、相変わらず良い身体してんじゃねぇか。俺の愛人にしてやっても良いぜ!」
激しく胸を揉みしだきながら、ハルヒはすっかり男口調になっている。
「う、ふえええええ…い、痛いです! 痛いですぅ~~~~」
まあ、確かにあれだけ乱暴に揉まれたら、空気抵抗ありまくりにご立派な胸だって痛いだろう。
面白いぐらいに変形する、朝比奈さんの特盛りはもう少し見ていたい気もするが、流石にこれ以上は目にも毒だ。
「おいハルヒ、止めてやれ」
とりあえず、声だけ掛ける。下手に手を出して、やわらかすいかに指でも触れたら、何が起こるか解らない。
だが、いつもは俺の制止の言葉に、苛立ったような表情を浮かべるハルヒが、今日はにやりと嫌な笑みを浮かべた。
「何だ? キョン、お前俺の男に手を出す気か? 何ならお前も、俺のコレにしてやっても良いんだぜ」
ハルヒは楽しげに、小指を動かす。お前、そんな言葉何処で覚えた。
もう注意をする気もなくなり、俺は視線を外し、代わりに先程から無言のままの古泉に声を掛ける。
「おい」
「はっ…はい!?」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:47:36.16 ID:QZ0sc76m0

古泉は、普段の表情は何処へ行ったのか。明らかに狼狽した表情で、勢いよく顔を上げた。
手には先程の薄い本が握られている。
ハルヒは、女子から何冊もの同人誌を奪っていたらしく、机の上には数々のそれらがぶちまけられていた。
どうやら古泉は、その中の数冊を読んでいたらしい。
「で、どうだ。それ、感想は?」
俺は読む気も起きないので、とりあえず感想だけ聞いておく。下手に読まされてダメージ何ぞ受けたくもない。
「そ、そうですね……はい」
歯切れも悪く、赤面したまま、古泉は俯く。
「ええと、こんな物を、女性が読んでいるなんて…ちょっと、考えられなかったですね」
オブラートに包んではいるが、要は気持ちの悪いエロ本だったと言うことだろう。
流石の古泉も、平静ではいられなかったようだ。
「そ、その。僕は、こういった行為は、男性と女性の間で行う物だと思っていました」
俺だってそうだ、と言うか、具体的に想像しそうな発言は止めろ。嫌になる。
古泉は、視線を合わせないまま、口の中で何かを呟いていたが、やがてふっと、何かに気付いたかのように顔色を変えた。
「キョン君、涼宮さんは、先程……」
「二人とも! 私から提案があるのよ!!」
ハルヒの声に、古泉の言葉は掻き消された。


30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/01(金) 23:55:10.41 ID:QZ0sc76m0

「アンタ達、デートしなさい!」
ハルヒは、ぐっと足を机の上に乗せ、高らかに宣言した。
さっきまでは楽しげに、男言葉を使っていたのに、もう飽きたらしい。
ってちょっと待て。何でそんなことになっているんだ。
「アタシが身体も男だったら良かったんだけど、そう言うわけにも行かないでしょ! だからキョン!」
びしりと、指が俺の鼻先を掠める。
「古泉君とカップルになって、私に萌を頂戴!」
もう、反論する言葉もない。

長門は、男同士がやけにくっついた表紙の本を、ユニーク、と呟きながら読んでいる。
朝比奈さんは、涙を浮かべたまま『機嫌を損ねないように、お願いします!』と無言で訴えてくる。
古泉は、固まったまま、手に持っていた本を取り落としている。

こうして、俺の最低で最悪なデートが組まれようとしていた。


37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:01:45.53 ID:a3nkShRb0

デートをしろ、と言ったものの、ハルヒは具体的なプランを全く練っては居なかった。
どうやら、其所から考えてこその彼氏でしょうが! と言うことらしい。アホか。
俺自身はこんなふざけたハルヒの我が儘に付き合うつもりはなかったのだが、朝比奈さんに
『キョン君、こんな事頼んじゃって、ゴメンナサイ。ぐすん…私も出来るだけ協力しますから』
と、涙目で。綺麗に筋が谷間に落ちていくように頼まれたのだから、断れるはずがなかった。
古泉にも僅かな期待を託したのだが、アイツはさらりと
『神人が出現して、仲間の手を患わせるよりはマシですから』
などと抜かして、この嫌な計画に異論を唱えはしなかった。
まったく、役に立たない奴め。

しかし。何処に行けば良いんだ? 俺はデートなんて知らんぞ?


38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:05:08.27 ID:a3nkShRb0

デート場所>>50
やること>>55

安価でも良いか? と、言うか、>>1何処に行ったんだ。


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:11:11.18 ID:VuzIMeFo0

心霊スポット


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:12:21.90 ID:q8O+Jgwt0

幽霊探し


55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:12:34.79 ID:VuzIMeFo0

>>53


61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:18:03.16 ID:a5NjFynMO

デートじゃないww


63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:20:41.73 ID:a3nkShRb0

結局、俺たちは心霊スポットで幽霊を探すことにした。
何故この時期にこんな事をしているのか、それは定かではない。
あわよくば、幽霊にかこつけて逃亡することが目的といえば目的だ。

大丈夫、こっそり後を着けて来るであろう朝比奈さんに、「キョン君幽霊怖いです!」
と抱きつかれたいとか、そんな邪なことは思っていない。

とりあえず、基本は幽霊トンネルだとか、寂れた洋館とかが妥当だが、そんなところあっただろうか。
そうぼんやり考えていると、ハルヒから聞いたのか、鶴谷さんからメールが来た。
『にょろ~ん、鶴谷だよっ!』


65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:23:54.78 ID:yCtCIuR6O

鶴谷さん……?


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:29:15.91 ID:a3nkShRb0

>>65変換ミス、すまん

『心霊スポットなら、めがっさ素敵な場所を知ってるよっ! デートにはもってこいの場所だねっ』
メールには、簡易な地図が添付されていた。バスで少し行けば見えてくる、古い洋館らしい。
『うちが所有してる物件っちゃあ物件なんだけど、色々あって今は手入れもしてないんだよ~。
鍵は明日持って行くから、良かったら、ついでに中の様子を見ておいてくれたまえ!』
色々あって、の部分が気になるが、まあ、いいだろう。
貴重な休日が潰れるのはきついが、その辺りの責任は古泉に、飯でも奢らせて取って貰うことにする。

さて、嫌がらせをこめて、古泉にメールでもするか。
ついでに、何か持って行かせる物が在れば、それも書き込んでおきたいところだが。どうする?
>>75 古泉へのメール内容と持って行かせる物


75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:32:50.82 ID:q8O+Jgwt0

鶴屋さんに良い心霊スポットを教えてもらった事を簡潔に

・手作り弁当
・塩


84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:39:35.99 ID:a3nkShRb0

『心霊スポットを鶴屋さんに教えて貰った。地図は添付しておいたからな。
あと、結構時間掛かるだろうから、昼飯は弁当で良いか? 作るの面倒だからお前作って持ってこい。
それと、幽霊退治出来るように、塩な。じゃ、また明日。』
こんな文で良いだろうか、とりあえず、送ってみる。
ハルヒの我が儘に付き合ってるんだ、古泉には俺の我が儘に付き合って貰う。
弁当の下りは、まあ。冗談という奴だ。念のために俺も、カロリーメイトくらいは持って行こう。
そうこうしていると、古泉から返信が来た。
『解りました。彼女の提案なら、そうそう酷いことにはならないでしょう。
巻き込んでしまったこと、申し訳ありません。昼食は、僕の方で何とかします。
塩…ですか、古典的ですが、案外効くかもしれませんね。では、失礼します。お休みなさい』
…本当に、弁当作ってくる気なのか? アイツ。

そして、俺の最悪なデートが、始まった。


89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:48:34.33 ID:a3nkShRb0

「さあ! ここからがデート本番だぜ。俺とみくると有希は、三十分後に付いていくから、お前ら先に行け」
古びた洋館の戸口で、ハルヒが言い放つ。探険と言うことで、その格好は動きやすい……? 学ランを着ている。
口調も男口調になっており、何というか、完全にかぶれている。ハルヒの中に、また腐女子ブームが来たらしい。
朝比奈さんや長門も、ハルヒに無理矢理着せられたのか、朝比奈さんはブレザー、
長門は下がハーフパンツのセーラーを着せられている。
うん、朝比奈さん。ブレザーでも解るその盛り具合、素敵です。あとは下がスカートなら、猶俺的には嬉しいのですが。
とにかく、とハルヒは高らかに腕を差し上げる。その手にはシャープペンと、大きく『ネタ帳』と書かれたノートが握られている。
「お前達は思う存分いちゃいちゃしやがれ! 吊り橋効果だ吊り橋効果!」
そう言うと、ハルヒは楽しげに、肩から提げていた鞄を漁り、何かを取り出した。
何だ? と思う間もなく、手首に冷たい感覚が走る。がしゃん、という嫌な音が響いた。
「さ、行ってくるんだぜぇキョン!」

洋館内に押し込まれた、俺と古泉の手首には、ごつい銀色に光る手錠がしっかりと、離れられないようにつけられていた。


95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 00:55:50.11 ID:a3nkShRb0

はぁ、と溜息を吐くが、それで手錠は外れるわけでもなかった。
暫くがちゃがちゃと振ってみたり、外そうと引き抜いてみたりしたが、びくともしない。
扉はハルヒによってしっかりと閉められている。ココで三十分まって、ハルヒ達と一緒に洋館を回る…という手もあるが。
「どうしましょう。ココで留まっていては、涼宮さん、怒りますかね」
同じく手錠と格闘してた古泉が、諦めたように呟く。確かに、扉を開けた途端、一歩も動いていない俺たちが目に入れば
ハルヒは烈火の如く怒り出すだろう。俺はまあそれでもかまわんのだが。
ちらりと古泉の方を見ると、困ったように、古泉も此方を見て苦笑した。
「ココでハルヒを怒らせるのは、お前的に問題あるのか」
そうですね、とぼやきながら、古泉は少し躊躇うように、コートの袖口を見ていた。

さて、どうするか。
1 ハルヒを待ってみんなで行く
2 古泉と二人で別の出口を探す


107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:05:28.43 ID:a3nkShRb0

「よし、別の入り口を見付けるか」
自分に言い聞かせるために、声を出して宣言し、俺は古泉を手錠ごと引っぱった。
古泉は驚いたように、俺に習って身を翻したが一瞬遅く、手が引っぱられたのにつられ、バランスを崩す。
「わ、わ、わ」
「!? 古泉!!」
ぐらりと倒れそうになる古泉を支え……損なって、俺は大きく身体の軸をぶれさせてしまう。
咄嗟に手近にあった階段の手摺りを掴もうとするが、手が滑って、その下にある変な飾りの像を掴む形になった。
助かったと思う間もなく、しっかりとしていたはずの像がいきなり、がこんと音を立ててずれた。
へ、と変な声を出した次の瞬間、鈍い音を立てて足下から地面が消える。
「な、なななななななんだ!!!!」

俺と古泉は、悲鳴を上げることも出来ずに、深い暗闇の中へ落ちていった。


112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:16:30.17 ID:a3nkShRb0

「くん…く……キョン……キョン君!!」
肩を僅かに揺さぶられる感覚に、俺は薄く目を開けた。眩しい。頭の中でウェディングベルが大合唱をしている。
ぐっと強く瞼を閉じた後、再びゆっくりと開くと、心配げな顔をした古泉が、俺の顔を覗き込んでいた。
「ん、こい…ずみ?」
よく見ると、眩しいと感じていたのは、携帯の画面から放たれる灯りだったようだ。
俺は、先程の足下が無くなる感覚を思い出しながら、古泉に尋ねる。
「ココは、どこだ? 俺たちは落ちて、それで……?」
「落ちたままです。多分、ここは地下室でしょうね」
古泉は、手持ちの携帯電話で、周囲を照らした。ぼんやりとした光の中に、木製の棚や多量の埃を被った資材が見えた。
自分たちが落ちてきた上を眺めるが、そこはしっかりと隙間無く、板が塞いでいる。
「僕も、確認しました。手を伸ばせば指先は届くんですが、押しても引っ掻いても、こちら側からは開かないようです」
どうなってんだこの屋敷は。そうぼんやり考えながら、手に布の感覚がするのに気が付いた。
どうやら、置きっぱなしだったシーツの山の中に、上手く落下したらしい。怪我はない。
古泉は携帯の画面を見詰めている。圏外の表示が空しく光っている。
時間を見れば、三十分はすっかり過ぎていた、ハルヒ達は今頃何処に居るんだ?

1 兎に角ココから出る
2 助けを待つ


115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:18:04.18 ID:umnVq1AG0



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:18:04.20 ID:8e3Mf1MtO

3 内側からは出られない


117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:18:16.57 ID:eE+16le3O



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:18:19.06 ID:q4dzhCoXO



119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:18:45.37 ID:I4rlRRPd0

2


126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:23:44.46 ID:a3nkShRb0

ココで待っていても始まらない。俺は手錠を引っぱって古泉を呼ぶ。
「おい、とにかくココから出るぞ。階段でも見付けて、合流しよう」
「そうですね、こんなところでぼんやりしていたら、涼宮さんの力でどんなことになるのか、解った物じゃないですから」
珍しく真剣な表情で、古泉は頷く。携帯で辺りを照らすと、棚の向こう側に、小さな木製の扉があるのが解った。
あそこからなら、出られるかもしれない。
古泉に視線を送り、今度は下手に転けたりしないよう、手錠を軽く引き、合図をしてから、シーツの山を下りる。
薄明かりの中、手探りで扉を調べると、鍵は掛かっていなかったようで、あっさりと扉は開いた。
さて、もうこの部屋に用事はないだろうか。
何か持っていく価値のある物は、置いてないだろうか。

>>130 部屋の中にある、持って行くべき有益な物


130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:26:44.61 ID:YjxfVrkC0

刃物


133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:28:19.05 ID:yCtCIuR6O

刃物とか実用的すぎて生々しいな


134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:31:18.91 ID:dhyhpW9l0

まてよ・・・・今ここにいるのって俺と腐女子だけ・・・?


137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:33:22.07 ID:I4rlRRPd0

>>134
ぼく・・・男の子だよ


138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:34:05.44 ID:a3nkShRb0

よく見ると、部屋の隅には大きな鉈が置いてあった。
先が尖った形の、珍しい鉈だ、それも相当古い。持ち手を握り、確かめるためにじっくり眺めていると、妙な気持ちになってくる。
こう、上手くは言えないが、バットと殴り合いをしたくなってくるような鉈だ。
俺は護身のために、その刃物を持って行くことにした。
鉈を持つ俺をちらりと見て、古泉が、ほんの少し嫌そうな顔をした気がしたが、気にせず進むことにした。
武器を持っていると、何となく安心できる気がする。これは、男の心情だろうか。
「あなたが、そう言う物を持っていると、何だか変な気分になりますよ」
携帯で照らしながら木戸を開け、頭上の確認をしつつくぐる古泉の口から、妙な言葉が漏れる。
「そういうの、似合いませんから。いざとなったら僕に渡してくださいね」
俺は、yesともnoとも言わず、扉をくぐった。

先には、煉瓦ばりの狭い廊下が続いていた。


144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:41:33.76 ID:a3nkShRb0

こつこつと、靴音だけが響いている。
先程から階段を探しているのだが、やけに狭く、長い廊下の先には、何も見えてこない。
途中、幾つか部屋はあったもののどれも使われていない倉庫のようにがらんとしていて、めぼしい物も何も無かった。
梯子か、薄い天井が在れば、破って出て行くことも可能なのかもしれないが、とにかく。
薄暗い部屋と湿った空気に、俺はすっかり参っていた。
もう何個目になるのか解らない部屋を探っていると、不意に、古泉が手錠を軽く引いて俺に合図してきた。
「このランプ、未だ使えそうですよ。ほら、マッチも見付けました」
丁度良い具合に、油も残っている。火を付けると、今まで携帯の灯りしか見ていなかった所為か、随分明るく見えた。
炎の揺らめきに安堵したせいか、ぐうと腹の音が鳴る。
古泉は、おやおやといった風に笑っていたが、継いで自分の腹からも、ぐぅと言う音が鳴るのを聞いて、恥ずかしげに目を伏せた。
「どうしましょう、この辺りでお昼にしますか? 涼宮さん達も、各自で取っているでしょうし」
「そうだな、そうするか」

俺は、適当な場所に古泉と並んで座り
1 古泉の作った弁当を食べる
2 自分で持ってきたカロリーメイトを食う


148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:43:22.01 ID:eE+16le3O

1しかないだろ!


160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 01:53:32.80 ID:a3nkShRb0

折角のタダ飯を不意にするほど、俺は甘い男じゃあない。
もちろん、貰える物なら、例えそれが古泉手作りの弁当であろうが、何だって食う。
古泉が広げた弁当は、オーソドックスなサンドイッチと、少々のおかずの弁当だった。
正直、これが酷く綺麗な、雑誌に載っているそれこそ女の子が作るような弁当なら、俺も気が引けたというか、ドン引きしたのだが。
古泉の弁当は、意外と男らしい、悪く言えば、見た目的にはちょっと荒が見える、そこそこ手抜きの弁当だった。
卵焼きが綺麗に巻けていなくて、半ばかき卵になっているし、味付けも砂糖より醤油が多めで、個人的には好感が持てる弁当だ。
サンドイッチも、具がはみ出している。古泉自身食べづらいのか、自由な方の手で零さないよう、危なっかしげに食べている。
「どうしましょうか、これ、食べ終わったら」
「どうするって、また探すしかないだろ」
そう言い返しながらも、俺は冷静に考えていた。
この場所を訪れることは、鶴屋さんも承知の上の話だ。
だとしたら、例え今日中に俺たちがココを抜け出せなくても、そのうち彼女か、若しくは長門あたりが見付けてくれるだろう。
……もしかして、動いて無駄な体力消費してないか? 俺たち。
「涼宮さんが」
むぐむぐとハムサンドを咀嚼しながら、古泉がぼやく。
「こうなるように仕向けたんでしょうか」
確かに、その可能性はあるが…。だとしたら、目的は何だ? BLか?
「なあ古泉、俺は読んでないからしらんのだが」
何ですか? と、古泉が口元を拭いながら、此方を見てくる。
「BLって、どうすれば終わるんだ?」


170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:02:16.68 ID:a3nkShRb0

>>147 素でその選択肢忘れてた。

「全くよぉ、彼奴ら何処に行ったんだよ。せっっっっかく! このオレが! BL展開をじっくり見てやろうとしてるのに!!」
ハルヒは、ぷりぷり怒りながらも、男口調は崩さないまま屋敷内を探索している。
その後ろを、泣きそうになりながらみくるがちょこちょことついて回っている。
「あっ…あのぉ、迷子になってるって可能性は、ないんですか? ここ、広いですし……」
涙声になっている彼女を鼻で笑うと、ハルヒは腰に手を当てて、特注の学ランを翻す。
下は、ズボンではなくスパッツを穿いており、一見すると男装の麗人だ。
「迷子? どうせなら幽霊に誘拐された方がマシよ! …じゃなくて、マシなんだぜ!!」
ハルヒの発言に、ぴくりと長門の眉が動く。
「幽霊……」
「そうだ! 幽霊に操られて、とっととやることやっちゃって貰いたいもんだぜ!!」
更なるハルヒの暴言に、みくるは顔を真っ青にしながら、ハルヒの腰にしがみついた。
「そ、そ、そ、それは駄目ですぅううううううううう!!」
たゆんたゆんと揺れる胸が、ハルヒの細い腰を挟む。だが、ハルヒは進むのを止めようとしない。
「全く! 見つけ出したらオレの目の前で、たっぷり生BLを見せて貰うんだから!!」


178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:11:22.51 ID:a3nkShRb0

先程から、長門はハルヒにばれないよう、こっそりとキョンに連絡を取ろうとしていた。
だが、何者かに―――いや、間違いなくハルヒが、無意識のうちに、それを阻害しているのだろう。
長門は、先日見たBL本の内容を分析、統合し、幾つかの選択肢を脳裏に浮かばせる。
『涼宮ハルヒ、彼女が、あの本を全て見ていたとしたら、この状況で彼らに求められる可能性は、二つ』
1 幽霊にどちらかが身体を乗っ取られ、アッーな展開になる
2 奇妙な生物(触手系)が、彼らを襲う

どちらにせよ、ハルヒの求めることは、彼らの間に何らかの恋愛感情が芽生えることだ。
其所には、彼女なりの屈折した愛情があるのだろうが、その細かい機微まで理解できるほど、長門の感情は発達していない。
『どうする、私。じゃなくて…ボク』
そんな長門を余所に、ハルヒはみくるの鞄の中から、彼女お手製の弁当を見付け、奪い取ろうとしていた。


195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:26:18.22 ID:a3nkShRb0

俺の質問に、古泉は面白いほど綺麗に固まった。
硬直が溶けた後も、視線をあちらこちらに彷徨わせ、決して俺の方を見ようとはしない。
「ええっと、ですね。僕も…そのう、余り最後までは……見ていなくて」
「あー…ああ、もう良い、うん。大体解ったから」
古泉のうろたえる姿は、普段とは違っていて、結構退屈しのぎにはなるのだが、かといって詳しく話を聞き出したくもない。
正直、知る必要のない知識は、持っているだけで有害だ。
「す、すいません」
上手く呂律の回らない唇を、何度も擦りながら、古泉は申し訳なさそうに身を縮こまらせた。
コイツがココまで嫌がるのだ。相当な中身だったんだろう。そんなモノを楽しんで見ることの出来る女は、俺だって怖い。
その場の雰囲気を変えるために、俺は別の話題を出すことにした。
「そういや古泉、お前本当に塩持ってきたのか? 塩」
古泉は、救われたとでも言うように、ふっと息を吐き、何時も通りの笑みを浮かべて、手持ちのバッグを俺の方に寄せる。
「持ってきてますよ。とりあえず、家にあったのを一瓶、伯方の塩ですけれど」
本当に持ってきたのか、コイツ。
俺の微妙な表情を察したのか、古泉は慌てたように、瓶を取り出す。
「あ、いえ。幽霊が怖いとかじゃあないんですけれど、言われたのなら持ってくるべきかと思いまし……」
不意に、古泉が言葉を止める。俺は、取り出された瓶を受け取ると、古泉の顔を覗き込んだ。
その表情は、能面のように凍り付いている。

古泉じゃ、ない?
こいつは……

1 朝倉涼子
2 谷口


199: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:28:02.21 ID:qaY9hndGO

急展開だな
朝倉


209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:40:36.79 ID:a3nkShRb0

「朝…く、ら?」
その表情は、見覚えがあった。朝倉、涼子―――だが、どうして?
どうして彼女の表情を、古泉が浮かべている!?
『うふふ、お久しぶりね』
古泉の口から、楽しげな女の声が漏れた。朝倉だ。間違いない。
『涼宮ハルヒ。彼女が、幽霊と聞いて真っ先に思い浮かべたのが私だなんて…意外と、私が消滅したことに、勘付いているのかしら?』
こてん、と、古泉の顔で、朝倉は小首を傾げて見せた。
それは、古泉の取る、何処か間の抜けた仕草とは違い、明らかに狂気を帯びている。
『まあ、どちらでも良いわ。私の役目は只一つ』
ふっと、何も無い空間から、あの。ぎらぎらと光るナイフが取り出された。
『死んで?』

近距離から繰り出される朝倉のナイフを、俺は咄嗟に伯方の塩の瓶で受ける。
すぱっと蓋の部分が綺麗に切れて、天井にぶつかった。
手が繋がれているので、逃げようがない!
俺は、大きくのけぞると、傍らに置いてあった鉈を取り、古泉…いや、朝倉を迎え撃つ。
ナイフと鉈がぶつかり、きらりと火花が散った。不思議だ、俺には格闘の経験も何も無いのに、まるで。
鉈が意識を持ったかのように、滑らかに動く。
『うふふ…器用ね。もしかして貴方、この彼を、殺めてしまいたいの? それとも、彼が貴方を殺めたいと思ってるのかしら?』
朝倉は、楽しげに、大きな動作でナイフを振り回す。
『この躰の持ち主である、古泉一樹は、精神を、私にいとも容易く乗っ取られた。きっと、彼は思ってるんだわ』

『この世界なんて、本当はどうなったって良い。貴方にも死んで欲しいって』


217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:49:25.94 ID:a3nkShRb0

「嘘だッ!!」
俺は大声で反論して、鉈を振り回す。
「嘘だ嘘だ嘘だっ!! 古泉が、そんなこと思ってるはずがない!!」
『そうかしら?』
朝倉は、楽しげに嗤ってみせる。
そんなことはないはずだ。古泉は、ハルヒに好意を持っている。いや、少なくとも、嫌ってはいないいはずだ。
だが、冷や汗は止まらない。本当に、100%。古泉が、殺意を抱いていなかったと言い切れるか?
超能力者として、閉鎖空間で戦うことを余儀なくされ、何もかもをねじ曲げられて、それでも笑っていることに。
諦めを感じていなかったと、俺は、言い切れるのか?

『今更ね、お馬鹿さぁん』
朝倉のナイフが、煌めく。
古泉が、笑顔を浮かべて、俺を刺し殺そうとしている。
俺の手は自然に動き
1 伯方の塩を顔面に投げ付けた
2 鉈で身体の中心に斬りかかった


225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 02:55:21.32 ID:I4rlRRPd0

1伯方


230: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:03:10.23 ID:a3nkShRb0

俺は、思わず、未だに片手で持ったままだった伯方の塩を、朝倉の顔面に投げ付けていた。
朝倉は、一瞬何が起こったのか解らないようだったが、塩が目に染みたことで状況を理解せざるを得なかったらしく。
『きゃんっ!!』
という悲鳴を上げて、その場に座り込んだ。
尻餅の音が響き、辺りの空気が変わる。張りつめていた空間に、風が吹き込んだ。

古泉は、暫く何が起こったのか解らないようにぼんやりと、女の子のように座ったままだったが、
やがてはっと気が付いたかのように、目を必死で押さえてぱたぱたと涙をこぼし始めた。
「や…やりすぎ…です…いった…いたい………」
成る程、塩は本当に効くらしい。
変なところに感心しながら、俺は古泉の頭を掴み、ぐっと持ち上げた。
眉間に瓶の跡がくっきりと赤くついており、塩まみれになった顔は、染みて痛いのかぼろぼろになっている。
「悪い、やりすぎた」
一応謝っておくが、朝倉が去ったのは俺の御陰なんだと、後で恩を着せておこう。
そう思いながら、腫れ上がる瞼をじっくりと見ていると、風の吹き込んだ方向から、嫌な気配がするのを感じた。
「きょ、キョン……アンタってやつは……っ」
「あわわ…キョン君に古泉君…男性同士で……」
「……ユニーク」
開け放たれた戸口からは、何時から居たのか、ハルヒ達が、嫌そうな顔で、俺と、泣き続ける古泉を眺めていた。


240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:14:51.35 ID:a3nkShRb0

結局ハルヒ達は、朝比奈さんの弁当が転がり落ちた先から、この通路に続く階段を見付けたらしい。
で、どたばたする物音を聞きつけて来てみれば、いきなり泣き出す古泉と、その顔を覗き込む俺がいた。
つまり
「キョン…確かにアタ…俺は、古泉君とBLをしなさいって言ったけど、泣かせろとは言ってないぞ」
「ご、誤解ですよね! 何かの…誤解……」
「わた……ボクは、在る程度は理解している」
完全に、誤解されたということだ。

こうして、おれの最悪のデートは、最悪の形で幕を下ろす結果となった。

帰りのバスの中、運転席の近くで、例のぺらい本を読みながら、何があったのかを大声で推論するハルヒ達を無視して、
俺は、一番後ろの座席に座る古泉の隣りに腰を下ろした。
古泉は、こちらを見ることなく、窓の外へ視線を向けている。
「僕は、SOS団の皆さんが、好きなはずです」
古泉が、聞き取れないくらい小さな声で囁いた。
「ですから、彼女の言ったことは、全て嘘だと。言い切りたい」
ですが、と続けかけて、古泉はぐっと、握り拳を作った。その手首には、くっきりと、手錠の跡が残っている。
だが、俺の手に残るそれとは違い、古泉の手首には―――もっと、古い、幾つもの傷跡が、うっすらと見えた。
視線に気付いたのか、古泉は振り向かず、ただ袖口だけを上げて、隠す。
「神人との戦いにも、慣れていない時期はありましたから」
古泉は、それだけ言うと、もう何も話したくはないのか、ふっと目を閉じてバスの揺れに身体を預けた。


252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:24:12.00 ID:a3nkShRb0

バスから降りると、ハルヒは長門と朝比奈さんの二人の肩を抱き、俺に向かってべーっと舌を出してきた。
「キョンのバーカ! もう良い! 俺はこれから二人とデートするもんね!! 明日、学校で覚えてろよ!!」
さあ、行くぞ! と、今度は手錠を、自分以外の二人に填めて、鎖部分を引っぱる形で、ハルヒは歩き出した。
朝比奈さんは、この格好でですか~!? と、泣きそうな顔をしていたが、やがて諦めたのか、俺に向かってぺこぺこと頭を下げる。
長門は、端から諦めていたようで、俺の方をちらりとだけ見ると、すぐにハルヒの後を着いていった。
俺はと言うと、未だに、古泉に掛ける言葉を失っている。
「では、僕も帰りますね」
古泉は、俺が何か言い出すよりも先に、踵を返して歩き始めた。
俺よりも高いはずの身長が、やけに小さく見える。
その背に、俺は、思わず大声で投げかけた。
「俺は、卵のサンドイッチよりも、ベーコンレタスの方が好きだ!」
ぴたりと、古泉の足が止まる。少しだけ震えているように見えたのは、目の錯覚かもしれない。
「そうですか」
振り返る顔も、逆光で上手く見えない。
「なら、今度はそちらを作りましょう、では、また明日、部室で」


260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:32:44.82 ID:a3nkShRb0

後日、鶴屋さん曰く
『あの建物? ああ、面白い仕掛け一杯あったにょろ?
 いつかお化け屋敷にでも改造しようと思って、取っておいたんだよね~。で、どうだった?』
俺の返答
「や、止めた方が良いですよ。あそこ、本物出ます。WAWAWA忘れ物?って、忘れ物取りに来る生き霊が居ますから」

結局、ハルヒの腐女子体験は数日で終わったらしい、が、意外と男の格好をしたハルヒには需要があったらしく
そちら系の女子からは、コスプレだの何だので、お呼びが掛かることもあるそうだ。
朝比奈さんの誤解は、必死に解いた。暫くは疑いの眼差しを向けていた気もするが、とにかく違います言うと、
「そうです…よね?」
と、古泉を見据え、眉を顰めることもあったが、まあ、大丈夫だろう。
長門には、朝倉が出たことを話したが
『あれは、涼宮ハルヒが望んだから、朝倉涼子の形を取ることが出来ただけ。もう、あんな事はないだとうと、思う。ボクは』
とのことだった。

そして、俺と古泉はと言うと、相変わらず部室でゲーム三昧の毎日を送っている。
ただ、一つ以前と違うことはと言えば、罰ゲームに昼食を奢ることが含まれるようになったことと
古泉の昼食が、ベーコンレタスサンドになることが多くなったことだけだ。

【打ち切り】


261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:34:45.09 ID:/KsnfoGP0

打ち…切り…?


284: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 03:59:09.78 ID:a3nkShRb0

さて、先日の一件で気付いたことなのだが、どうも俺は、古泉が虐められて凹んでいる様を見るのが楽しいようだ。
そう言えば、以前から、ゲームで容赦なく古泉を打ち負かす度に、妙な爽快感があった気もする。

考えてみれば、俺は古泉に殺されかけたも同然なのだから、反撃くらいしたって良いはずだ。
ふむ、まずはどう動くか。

>>290 古泉を虐める方法

とりあえず続けてみた。不快なら止める。


290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:01:39.19 ID:dhyhpW9l0

トイレに行かせない
部室で(ry


298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:08:41.86 ID:a3nkShRb0

ふむ、とりあえず、あのポーカーフェイスを崩してみることから始めるか。
俺は朝比奈さんに頼んで、古泉の傍にある湯飲みが空になったら、すぐにお茶をつぎ足して貰うよう頼み込んだ。
朝比奈さんは、始め え? と途惑っていたが、やがて難しそうな表情で、解りましたと納得してくれた。

後は、古泉が部室に入ったのを見計らって、ドアが開かないように細工をすればいい。
とは言え、細かい作業は苦手なので、手っ取り早く扉を閉めた瞬間に、接着剤を流し込んだだけだが。
まあ、体当たりでもすれば空くし、そこまで焦る古泉を見れたら御の字だ。
古泉は俺の思惑に気付くこともなく、オセロ版の前で茶を飲んでいる。

さあ古泉、俺の復讐を思い知るがいい! そして、いつもスカした顔をしているその表情を歪ませてやる!!
…………って、俺、ちょっと谷口入ってないか?


305: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:15:19.31 ID:a3nkShRb0

まずは、何時も通り雑談をしながら一局。また一局。
今日は、なるべく長引くように、態とどっこいどっこいの試合をしているので、一つの勝負に掛かる時間が長い。
古泉も、俺が不調なことに気付いたのか、不思議そうに此方を見ている。
頑張れ俺、笑みを零さないようにしろ!

やがて、接戦とはいえ俺の連勝が何回か続いた頃、古泉は、ようやく席を立ち上がった。
「古泉、何処行くんだ?」
奴はにこやかに笑みを崩さない。
「ちょっと休憩しましょう? 僕も、外の空気を吸いたいですし。少し外しますね」
そう言って、ドアノブに手を掛ける、が、開くはずがない。
古泉は、暫くあれ? だのえ? だのと呟いていたが、やがて不思議そうに振り返る。
「あの…このドア、何か開かないんですけれど」
よっしゃあああああああ!!!
心の中で激しくガッツポーズを決めながら、俺は、傍目からは至って冷静に見えるように振る舞う。
「は? 何だって? 錆び付いてんじゃないのか? 放っておけばその内、ハルヒが突っ込んできて開くだろ」
不服そうに、古泉はドアノブから視線を外さない。
「ま、その内空くだろ。きっといつものハルヒの気紛れだ、さ、もう一勝負しようぜ」


311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:24:25.72 ID:a3nkShRb0

先程から、椅子の軋む音がしている。
全く盤面に集中できていないのが、手に取るように解り、俺は机の下でぐっと親指を上げた。
古泉の視線は完全に泳いでいる。助けを求めるように、俺を捉えることもあるが、まるで気付いていないように振る舞ってやる。
「おーい、聞いてるか古泉。ハルヒが居ないのが、そんなに不満か?」
「いえ…そんなことは」
俺の質問に答えるのも辛いのか、古泉は明らかに焦っていた。
本当に限界が来たなら、窓から出すなり何なり出来るはずだが、まあ、大抵の人間はやりたがらないな。うん。
長門は、座ったままぴくりとも動かず、『腐女子の生態』という本を読んでいるし
朝比奈さんは、相変わらずお茶くみに勤しんでいる。
まさに八方塞がりだ。
正直、俺がこんな状態になったら、恥も外聞も捨て去って、戸口を蹴り開けるだろう。
だが、古泉にはそれができない。

このまま動きがないのも面白くないので、俺は、更に行動を取ることにした。

>>320 更なる虐め
と、言うか。俺も長門とかを弄る方が書きたい。朝倉さんとか。
古泉の人気に驚愕。


314: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:26:23.14 ID:RGB5x7BAO

おもむろに長門のスカートに顔を突っ込んで「古泉、もらせ!俺見てないから!」と叫んで朝倉召喚


320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:33:22.68 ID:RGB5x7BAO

>>314


327: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:39:29.68 ID:a3nkShRb0

よし!
俺は覚悟を決め、徐に古泉に話し掛けた。
「古泉、お前……もしかして、便所行きたいんじゃないのか?」
俺の言葉に、古泉は驚いたように目を見開き、びくりと身体を震わせる。
朝比奈さんが、ひゃん! っと、素っ頓狂な声を上げて、顔を赤らめ古泉の方を見た。
古泉は、ぽかん、と、こちらを見ていたが、すぐに顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせる。
「そうだな、出ないとそんなに膝をがくがくさせたりしないよな…すまん、俺が無神経だった」
ぱんっと、目の前で両手の平を重ね、頭を下げる。
そして、鞄の中から、もしもの為に用意しておいた、空のペットボトルを取り出した。
「よし古泉、コレを使え! 大丈夫だ、俺は……」
椅子から立ち上がり、長門と向かい合う。俺の影に気付いたのか、長門はふっと顔を上げた。
その頭を軽く撫でて、そして―――。

スカートの中に、頭を突っ込んだ。
「古泉、もらせ!俺見てないから!」


328: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:41:01.93 ID:RGB5x7BAO

やべえ吹いたwww


336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:46:03.21 ID:a3nkShRb0

場の空気が固まるのが解った。
スカートの中からだが、その雰囲気は手に取るように解る。
ちなみに、長門のスカートの中は、古典的な紺色のブルマだ。
もちろん、長門には予め許可を取っている。でなければこんな行動出来るはずがない。
長門は、最初は俺の作戦を聞いて、責める出もなくこちらをただただ見詰めていたが
俺がこの作戦を行う意味を教えると、しぶしぶ了承してくれた。
もちろん、朝比奈さんにも、俺がこういった行動を取ることは、予め伝えてある。
後は―――。

「ちょっとキョン!! 扉が開かないじゃないの!!!」

鮮やかなハルヒの回し蹴りで、扉が激しい音を立てて開く。
古泉は、ぽかんと、乱入してきたハルヒを見詰めていたが、すぐにさあっと顔面から血の気を引かせて
ハルヒの脇をすり抜けて、全速力で部室から飛び出していった。

さて、どうするか……。
>>340 キョンの行動


340: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:49:37.20 ID:xM98LcyxO

てか古泉が可哀想だなwwww見たもの信じたくないだろww
安価なら冷静にいいわけ


342: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:54:56.23 ID:a3nkShRb0

とりあえず、フォローのために古泉の後を追うことにした。
近くの男子トイレの中、一つだけ、扉が閉まっているトイレをノックする。
「古泉、居るか?」
小の方ではなく、大の方を使う辺り、コイツも繊細なのかもしれん。
「……こんなところで、声、かけないでください」
律儀に返事をしながら、古泉は鼻を啜った。ヤバイ、泣かせたか?
「あーあー…すまんかった、苛めじゃないからな、コレ」
自分でも自分の発言が嘘くさいと思う。だが、単に弄るだけのつもりではなかった。コレは確かだ。
「なあ古泉、今の気分はどうだ? 最低か?」
もたれ掛かるような音が、ドア越しに聞こえる。はあ、と、大きな溜息の音が響いた。
「正直…混乱しています」
そりゃそうだ、あんな状況を見せられて、混乱しない方がおかしいだろう。だが……
「で、俺たちのこと、殺したいくらい嫌いになったか」

びくんと、何かが跳ねるような音が、ドアの向こうで弾けた。


347: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 04:59:14.14 ID:a3nkShRb0

「そんなこと……無いです」
古泉は、少しだけ間を開けて答えた。
「こんなコトされたの、初めてですけれど、確かに腹は立ちます。立ちました…でも、そこまでは思いません」
「だろ?」

この間の騒動から、古泉は、何処か遠くを見ることが多くなった。
その表情を、俺やハルヒや、長門や朝倉さんは、崩したかった。

「だったら、良いじゃないか。誰だって、相手の全部が好きになれる訳じゃないからな
 お前は、お前の感情で、あそこに居れば良いんだ、だろ」

ずるずると、重い物がずり下がるような音がする。
トイレの中で、古泉がどんな表情を浮かべているのか想像しながら、俺は
>>350


350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 05:01:51.94 ID:zfsdfX8V0

上からのぞく


357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 05:07:50.66 ID:a3nkShRb0

どうしても古泉の泣きべそ顔を拝みたくなり、ぐっと扉に飛びついて、そのまま上から覗き込もうとした。
俺の行動に気が付いたのか、古泉はドアの上に掛けられた俺の手を、必死で剥がそうとしてくる。
「ちょ、止めてください! 男子トイレの覗きとか、何考えてるんですか!!」
「こ、いずみの、アホな顔が…見てみたい…んだ、よっ!!」
「あああああ出ます! 出ますから止めてください!! やーめーてー!」
必死に俺を引き剥がそうとする古泉の、その慌てふためく様が面白くて、何だか笑みが止まらない。
「ちょっとキョン! 大概にしなさいよ!!」
男子トイレに堂々と突入してきたハルヒに、脇腹を蹴られ、その後部室で正座までさせられても、俺の笑みは止まなかった。

トイレから出てきた古泉は、いつもの表情で、でも、ほんの少しだけ目尻が赤く。
俺は、長門のブルマを拝んだだけのことはあると、改めて深く感謝した。


359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 05:10:33.53 ID:VlwbexZcO

キョンがおかしくなっていくwwww


363: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 05:16:00.76 ID:a3nkShRb0

結局、罰として一人で部室の掃除を押し付けられた俺は、適当にその辺りの物を片付けながら、
古泉が浮かべたパニックの表情を思い出し、一人笑いを止めなかった。
掃除も大半が終わった頃、不意に、開け放っていたカーテンの間から、青い髪がちらついた。
『で、貴方は彼を許すのね』
俺は、彼女の方を見ずに、荷物を纏める。夕陽に青の髪はとても映えた。
「許すもなにも、アイツが俺たちに許して貰わなきゃならんことをしたか?」
くすくすと、柔らかな笑みが聞こえる。
『貴方、とてもいい人ね。こういうの、シンユウっていうの?』
「さあな」
部室の鍵を握り、俺は彼女―――朝倉の方を、そこで漸く振り返る。
「少なくとも、俺は、アイツのことを、面白い奴だと思ってる。それで充分だろ」
朝倉は、今までで一番綺麗な笑みを浮かべた。
『いいな、そういうの。私も、あの子と……ううん、なんでもないわ。今度変なコトしたら、怒るからね』
そう言って、朝倉は、強い風の中に消えていった。

もちろん、後日罰ゲームの景品として手渡されたサンドイッチの中に、多量の練り芥子が含まれていたことは言うまでもなく
俺は、谷口に毒味させることで、見事な回避を繰り広げたとだけ言っておこう。

【END?】


527: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 19:52:01.98 ID:JkUeFcum0

「ちょっとキョン!何か面白いことしなさいよ!」

涼宮ハルヒは、どうやらご機嫌斜めのようだ。
かといって俺にハルヒの機嫌を取る義理はないし、いきなり面白いことと言われて思いつくような芸人魂は持ち合わせていない。
「なんかこうバーンとなってグァーンとなるようなことはないのかしら!?」
「とりあえず日本語を喋ったらどうだ?」
なんでこんな擬音で会話するようなやつが成績上位なんだろうか。
忌々しい あぁ忌々しい 忌々しい

「キョン!この前の変顔でも暇つぶしになるわ、やってみせなさいッ!」
「やだね。」
朝比奈さんが居る前でそんなことなどしたくない。
それに、長門の目線を自ら味わうことなど誰がするものか。


528: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 19:58:46.07 ID:JkUeFcum0

「じゃあ、みんなで何かゲームでもしますか?」
余計なことを言うな古泉、それでハルヒが暴走したらお前に責任取らせるぞ?
「ゲームねぇ・・・この際退屈しのぎになるんだったらなんでもいいわ。でも何にする?五人全員が楽しめるものっていったら・・・」
「待て、俺はいい」
「64でもあればいいんだけど・・・」
見事にスルーされるのはもう突っ込まないが、このご時世に64はないだろう。
しかも同時プレイできるのは4人までだった気がするが。
「王様ゲーム」
部室の窓際でいつものように分厚い本を読みふけっていた長門が、呟くように言った。


533: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:09:22.06 ID:JkUeFcum0

王様ゲーム!?
なんでそんなハルヒの暴走が確定されたものをわざわざ選ぶのだろうか。
長門お前、ひょっとして・・・
「もしかして有希、夏の合宿の王様ゲーム楽しかったの?」
ハルヒの言葉に1ミクロンほど体を震わせた(ように見えた)長門は、少し間を置くとコクリと頷いた。
「じゃぁ王様ゲームにしましょう!ちょっと待ってなさい、道具を調達してくるわ!」
そう言うとハルヒはドタバタと音を立ててながらどこかに走っていった。
調達?強奪の間違いじゃないのか?
「やれやれ、これで一安心ですね。」
古泉が笑顔を崩さずにパイプ椅子の上で背伸びをした。
こいつも背伸びとかするんだな。
「一安心って、何がだ?本当の波乱はこれからだぞ?」
「いえ、僕は涼宮さんが退屈だとバイトに行かなければならないので、彼女が「面白いもの」を見つけて安心したのですよ。」
なるほど。
バタンッと蹴る様に扉を開き、満面の笑みを浮かべたハルヒが帰って来た。
その手にはしっかりと五本の割り箸が握られている。
「お前、それどっから持ってきた?」
「職員室からもらってきたのよ。体育教師がいつもカップラーメンを食べるために机の中に割り箸を買いだめしてるのは知ってたもの。ちょうど職員室には居なかったし。」
「居なかったって、勝手に引き出しを開けて持って来たのか?」
「知らないの?学校の敷地内に入ったものは全て生徒のものなのよ!常識よ、常識。」
そんな常識は初めて聞いた。


537: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:20:53.23 ID:JkUeFcum0

ハルヒは机の上に番号と王という文字がしっかりと記入された割り箸を無造作に置くと、
「ほらみくるちゃん!ゲーム始めるわよ!」
とお茶を汲み終わったばかりの朝比奈さんを呼んだ。

「みんな割り箸は取ったわね?それじゃ、王様だぁれっ!」
俺は始める前に一応意義を唱えてはみたが、華麗にスルーされて終わった。
こうなったらいっそ王様になってハルヒの困った顔でも拝みたいとでも思った。
が、俺の割り箸に書かれた文字は1。
「あ、私王様ですぅ。」
朝比奈さんがおずおずと手を挙げる。
「じゃみくるちゃん、なんでもいいから命令言ってみなさいッ!あ、先に言っとくけど王様の命令は絶対よ、絶対!」
まさかトップバッターになるとは思っていなかったのだろう、朝比奈さんは動揺しまくっている。
そんな表情も可愛いですと俺は密かに思いながら、自分に当たることがないようと祈っていた。
「えぇと・・・それじゃ、3番さんが眼鏡をかける・・・っていうのはどうですか?」
「いいわね!有希、眼鏡貸して?」
無言のまま長門はポケットから眼鏡を出し、ハルヒに手渡す。
ということは、3番は長門ではないようだ。


539: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:27:26.17 ID:JkUeFcum0

「ありがと。で、三番は誰ッ!?」
ハルヒの語尾はあがり続けている。
この状況が楽しくてしょうがないのだろう。仕切っているということは、ハルヒは該当していないんだな。
朝比奈さんは王様だし、俺の番号は1だ。
ということは・・

「僕・・・ですか」
苦笑いに近い表情を浮かべた古泉は、意気揚々としたハルヒの手から眼鏡を受け取ると、まるで危ないものでも触るような手つきで装着した。
「あら、以外とサマになってるわね。やっぱり地顔がいいものねぇ、キョンと違って。」
最後に一言多いが、眼鏡をかけた古泉にそこまで違和感がないのは確かだ。
それどころか、これはこれでその手の女子にウケそうだな。
「光栄です、閣下。・・・あれ?この眼鏡、度が・・・いえ、なんでもありません」
長門の異様な視線に気づいた古泉は、口をつぐむといそいそと眼鏡を外し、長門に返した。


540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:35:38.23 ID:JkUeFcum0

「次いくわよ!ほら、みくるちゃんもボーッとしてないで早く棒引きなさい!」
「はっ、はいぃっ」
次は王様になりたい。
自分の直感を信じ、引き抜いた棒のに書かれていたものは・・・1。
結局俺には平凡な人生しか用意されていないのだろうか等と他愛無いゲームで悟りそうになる。
「今度はあたしが王様ね!さて、どんな命令にしようかしら?」
よりによって王様がハルヒとは・・・また夏の合宿のような目にあうのはごめんだ。
「ん~・・・じゃぁ、1番に3番と4番がほっぺちゅー!」
「はぁ!?」
俺は思わず叫んでしまった。


543: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:44:30.27 ID:JkUeFcum0

何も今該当しなくていいのにと、俺は自分の微妙な運を呪った。
「あら、1番がキョン?」
「待て待て待て待て、いくらなんでもそれはないだろう!?」
「いいじゃない、ほっぺなんだし。それに忘れたの?王様の命令は絶対!あんたもゲームに参加してるんだから最低限のルールぐらいは守りなさいよねッ!」
強制参加だろうが!
「で、3番と4番はだれ?」
「・・・私。」
長門が3と書かれた棒切れを見せる。
俺が心の中でガッツポーズをしたのは言うまでも無い。
そりゃ俺だって男だし、キスされるのが嬉しくないわけではない。
もうこうなったからには体裁なんて気にしないことにした。
これで4番が朝比奈さんだったら万々歳なのだが・・・

「・・・どうやら、今日は厄日なようですね。」


547: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 20:52:24.92 ID:JkUeFcum0

「あら、また古泉くん?まぁいいわ、早くやっちゃって!ほら、みくるちゃんこっち来てなさい♪」
♪じゃないだろ♪じゃ!
「では長門さん、お先にどうぞ」
なんでお前は承諾してるんだよと突っ込みたくなるが、古泉の言うとおり俺がゲームを中断し、ハルヒの機嫌を損ねたら大変なことになる。
ここは辛抱しろ、俺・・・
と拳を固めて我慢していると、
「・・・・しゃがんでくれないと、届かない」
と長門が僅かだが感情のこもった声で言った。
「あ、あぁ、すまん」
動揺しつつも長門と同じ目線になるように少し膝を曲げた。
――――チュッ
少しの間をおいて、一瞬だけ長門の小さな唇が俺の頬に触れた。
・・・小学生じゃあるまいし、ハルヒのゆうにほっぺちゅーだけでこんなに動揺する俺が変なのだろうか。
また元の姿勢に戻った長門の表情に変化はない。
生まれて三年の長門でさえそうなのだから、きっと俺がウブすぎるんだろう。


554: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 21:05:44.14 ID:JkUeFcum0

「・・・有希、家に帰ったら唇消毒しときなさいね。はい次は古泉くん!時間ないんだからさっさとやるわよ!」
相変わらず失礼なやつだ。
しかし、少しハルヒのテンションが下がった気がする。
そんな考えは一瞬で、俺は男のキスにどうやって対処するかを考えることにした。
「では・・・いいですか、キョン君?」
先に言っておくが俺にそんな趣味はひとっかけらもない。
古泉はというと、笑顔でも真顔でもない微妙な表情だった。
まぁそれが一般なんだろう。
「・・・さっさとやれ。」
「では、失礼します。」
覚悟を決め、グッと目を硬く閉じる。

「・・・終わりましたよ、涼宮さん」
「はい、お疲れ様!それじゃ次・・・「最終下校時刻になりました。校舎内に残っている生徒は、すみやかに下校してください」
ハルヒの声と放送委員のアナウンスが重なる。
「あら、もうそんな時間だったのね。全く、キョンがぐずぐずしてるから・・・」
ブツブツとハルヒは荷物をまとめはじめる。
「でも楽しかったわ。またやりましょー!じゃ、みんな帰るわよ!ほらほらみくるちゃんが着替えるから男二人は出てった出てった!」


557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 21:14:13.13 ID:JkUeFcum0

「ふぅ・・・」
俺達はいつものように部室の扉に背を預け、朝比奈さんの着替えを待った。
「みくるちゃん、さっさとしないと置いてっちゃうわよ!」
「あわわ、待ってくださいぃ~」
「あたしが手伝ってあげるかさっさと脱ぐ!」
「ひゃぁっ、て、手伝ったら余計時間かかっちゃいますよぉ~」
ドアの向こうから俺に余計な想像をさせる会話がされている。
「今日はお互い災難でしたね。」
いつもの笑顔に戻った古泉が、ドアの向こうに聞こえないように小声で同意を求めた。
「全くだ。」
「でも僕は楽しかったですよ、最後のキスは別として。」
「・・・なんだお前、そんな趣味あったのか?」
「だっ、だから別としてって言ってるじゃないですか!」
「冗談だ、慌てるってことは図星じゃないのか?」
「・・・キョン君も涼宮さんに劣らないぐらい失礼ですよ。」
何とでも言え、こうやって古泉をウサ晴らしにでも使わないとハルヒたちの会話が俺の思考回路を変な風に持っていくのだ。

古泉にそんな趣味がないのは確かだろう。
長門にキスされた右頬と、古泉にキスされた左頬を同時に撫でる。

音もない、静かなキスだった。
だけど確かに、その感触は俺の頬に残っている。
なんだか変な気分だ。


561: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 21:20:44.63 ID:JkUeFcum0

「こんな風に、なんの意味もなくみんなで騒ぐのも楽しいですね、という意味ですよ」
古泉は若干遠い目で話していた。
「・・・まぁな」

「帰るわよ!」
ハルヒの無駄にでかい声とともにドアが唐突に開いたので、俺達は前に倒れこみそうになった。
「それじゃ、帰りましょう」
最近は五人全員で下校することが日課になってきている。

「長門、今日は本を持ち帰らないのか?」
「・・・取ってくる。」
「有希が忘れ物なんて珍しいわね。」
俺もなんだか長門の人間らしい一面を見たが気がした。
たまには、三年に一回ぐらいならこんな日があっても悪くないと思った。

~fin~


565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/02(土) 21:27:04.33 ID:JkUeFcum0

支援してくださった方ありがとうございました
本当はもう一遍ぐらい思いついたんですがどうもお時間なようです
また来たときに残ってたら書きたいと思います

作業用BGM:ひねもす



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