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ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

シャーリー「リベリオンのある湾岸に『インスマス』って町があって」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:33:13.13 ID:JFnjvIFEO

あらすじ
http://m.logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1327752844/1-10



シャーリー「陸続きで路面も整備されているのに、その町を他所の人間が訪ねることは無い。そのため町や住人の様子はほとんど外部に知られることがなく、いつしかインスマスは『禁忌の地』と囁かれるようになった」

ルッキーニ「……」

シャーリー「ある時、好奇心からインスマスを訪ねた男がいた。滞在は3日間の予定だったが、男が帰って来たのは出かけた翌日の午前2時」

芳佳「……」

シャーリー「たった12時間程のあまりに短い旅行を終えた男は、一番の親友に手紙をしたため、朝日を待たず親友の家に赴き、直接ポストに手紙を投函した」




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:39:30.02 ID:JFnjvIFEO

ペリーヌ「……」

シャーリー「太陽が山の上に昇り、親友はいつものように新聞受けを確認しに向かった。そこで彼が見たものは、住所も宛名も無く、ただあの男の名だけが記された封筒」

リーネ「……」

シャーリー「ほぼ白紙の封筒を親友はイタズラかと訝しんだが、男の名前を見つけると不思議に思いながらもそれを家に持ち帰り、封を切った」

エイラ「……」

シャーリー「……その手紙を読んだ親友は、男に封筒の装丁や手紙の内容について問い詰めようと受話器を取ったが、電話口からは呼び出し音が流れるばかり」

サーニャ「……」


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:44:02.52 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「親友は足早に男の家を訪ねた。しかし、家の中に男の姿はなく、残されていたのは魚が腐ったような匂いと粉々に砕き散らされた鏡だけだった……」

シャーリー「っていう、リベリオンに伝わるおとぎ話だ」

ルッキーニ「……ウジュ」

芳佳「……」

リーネ「……」

ペリーヌ「……ち、ちなみにですけど、手紙の文面は伝えられていますの?」


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:47:41.70 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「ああ。聞きたいか? 聞いていいのか? ほんとーにいいのか?」

ペリーヌ「い、いえ! 丁重にお断りさせて」

シャーリー「手紙には以下のように記されていた」

エイラ「おいペリーヌ! 余計なこと言うなヨ!」

サーニャ「エイラ、私……」

エイラ「大丈夫だゾ、サーニャ。私が付いてるからナ」キリッ

シャーリー「『親愛なる友へ。インスマスから逃げ延びた今、この手紙が君の手に渡ることを切に願う。インスマスが長らく禁忌の地とされてきた、その秘密のほんの一端を私は知ってしまった』」

ルッキーニ「アーウー」


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:50:23.26 ID:JFnjvIFEO

芳佳「リーネちゃん、もうちょっと近くに……」ハアハア

リーネ「う、うん」

エイラ「シャーリー、本当に止め」

「いい加減にしろリベリアン! 何時だと思っているんだ!」

シャーリー「げっ」

芳佳「バルクホルンさん……」

バルクホルン「宮藤もいたのか。おい、リベリアン。消灯の時間はとっくに過ぎているのにいつまでも騒いで、どういうつもりだ?」


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 20:56:21.43 ID:JFnjvIFEO

>>8
しばらく前に立てたけどまとまらなくて落としてもらった



シャーリー「別にどういうつもりもねーよ。ただたまたまこいつらが部屋に集まってきたから、ちょっと話をしてやってただけだ」

バルクホルン「ふん、おおかた自分のくだらない武勇伝かそこらだろう。可哀想だな、過去の栄光にしか自分を見い出せない人間は」

ルッキーニ「そんなに言わなくてもいーじゃん!」

サーニャ「大尉、それは言い過ぎじゃ」

バルクホルン「お前たちも今すぐ自分の部屋に戻れ。今なら見逃してやる」

エイラ「ウ……」

ペリーヌ「……」


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:02:02.25 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「……つまんねー話に付き合わせて悪かったな、お前ら。もう部屋に戻ってくれ」

芳佳「でも」

シャーリー「いいから早く行けよ!」

ルッキーニ「シャーリー……」

リーネ「……行こう、芳佳ちゃん」

芳佳「……分かった。おやすみなさい」

サーニャ「エイラ、私たちも」

エイラ「あ、ああ。ありがとナ、シャーリー。面白かったゾ」

シャーリー「……」

バルクホルン「……二度とするなよ。いいな」バタン

シャーリー「ルッキーニ、お前ももう寝ろ」

ルッキーニ「……うん…おやすみ」


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:05:04.13 ID:JFnjvIFEO

―翌朝―

バルクホルン「おはよう、宮藤」

芳佳「……はよ…ざいます」

リーネ「芳佳ちゃん! すみません、大尉」

バルクホルン「あ、ああ」

バルクホルン(憎まれ役も楽じゃないな)

バルクホルン「む」

シャーリー「あっ」


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:08:37.16 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「……ふん」

シャーリー「……」

ルッキーニ「バルクホルンなんて、べーだ!」

シャーリー「よせ、ルッキーニ」

バルクホルン「……全く」

バルクホルン(リベリアンの奴、昨晩宮藤たちの前で恥をかかされた腹いせに、何か企んでいるかもしれんな。気をつけなければ……)

ミーナ「どうしたの、トゥルーデ? 怖い顔して」

バルクホルン「ん? ああ、いや、何でもない。おはよう」


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:11:17.63 ID:JFnjvIFEO

―深夜 バルクホルンとハルトマンの部屋―

  …… ……

バルクホルン「……」

  い…  あ…

バルクホルン「……」

  いあ…   とぅるう…

バルクホルン「……うん…誰だ……? 何を言っているんだ?」

バルクホルン「まさか奴らが……にしては、随分野太い声も混じっているな」

バルクホルン「ともかく、こんな夜中に集会を開いているような奴には、一言言ってやらないとな」


17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:16:12.08 ID:JFnjvIFEO

―ミーティングルーム前―

  いあ いあ くとぅるう ふたぐん
  いあ いあ くとぅるう ふたぐん

バルクホルン「ここだな」

バルクホルン「……薄気味悪い…歌か? 先ほどからずっと同じ言葉を繰り返しているようだが……」

バルクホルン「……入ってみるか」


19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:22:19.28 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「おい! こんなところで、明かりも点けずに何をやっているんだ!」








バルクホルン「返事くらいしろ! 誰かいるんだろう、隠れてないで出てこい!」










20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:26:21.18 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「……これが最後通告だ。素直に姿を現せば、今回だけは見逃してやる!」








バルクホルン「……そうか、よく分かった。いいな、捜すぞ! もう遅いからな! このことは後でしっかり隊長に報告させてもらう!」

バルクホルン「ピアノの下か!」

バルクホルン「カーテンの裏か!?」

バルクホルン「まさか窓から……」


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:31:49.81 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「……おかしい。声から察するに10人はいたはずだが、こんな短時間で逃げ切れるはずがない」

バルクホルン「考えたくないが、私の聞き間違いかもな。リベリアンを気にしすぎて、思わぬところで弊害が出てしまった」

バルクホルン「ふああ、そうと決まれば部屋に帰るが得策だ」

バタン

バルクホルン「さて」

  いあ いあ くとぅるう ふたぐん
  いあ いあ くとぅるう ふたぐん

バルクホルン「!!」


25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:38:01.70 ID:JFnjvIFEO

バタン

バルクホルン「どこに隠れていた……あれ?」









バルクホルン「だ……誰もいない…だと?」

バルクホルン「なんだ……この基地に何が起きているんだ……!?」

「トゥルーデ」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:43:02.06 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「み、ミーナ! ちょうどいいところに」

ミーナ「あなた、時計は持ってるかしら」

バルクホルン「時計? いや、枕元に起きっぱなしだが」

ミーナ「それじゃあ、今が何時か分からないのも仕方ないわね」

バルクホルン「あ……いや、しかし」

ミーナ「教えてあげるわ。午前3時21分よ」

バルクホルン「違うんだ、この部屋が」


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:43:34.43 ID:JFnjvIFEO

ミーナ「速やかに部屋に戻りなさい、バルクホルン大尉。これは命令です」

バルクホルン「ミーナ!」

ミーナ「話は後で伺うわ。これ以上時間をとらせないで」

バルクホルン「……すまない…」



―朝―

バルクホルン「……」ゲッソリ

シャーリー「やあやあバルクホルン君。朝っぱらから隊長に絞られるなんて、優等生の君らしくないじゃあないか」

バルクホルン「……貴様か?」

シャーリー「へ」

バルクホルン「ミーティングルームで何やら不気味な歌を……貴様以外にあんな真似をするやつはいない」

シャーリー「何のことだ?」

バルクホルン「とぼけるなッ!」


28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:44:01.23 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「とぼけてなんか……」

バルクホルン「あくまでしらを切りとおすつもりか! よかろう、貴様がそのつもりなら、こっちにも考えがあるッ!」

シャーリー「ちょっと落ち着けよ」

バルクホルン「……私が何をしたんだ……お前の機嫌を損ねたのが、そんなに悪いことなのか………」

シャーリー「……バルクホルン。一昨日の夜、お前に叱られてちょっとイラッとしたのは認めるよ。でもそれを引きずったままで、ましてやこんな形で恨みを晴らそうとするほど、私は器の小さい人間じゃないつもりだ」


29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:47:45.74 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「私になんかされるかもしれない、ってことで神経質になってて、それで騒いで怒られたっていうなら、責任の一端は私にある」

シャーリー「償わせてくれないか」

バルクホルン「……信じて、いいんだな?」

シャーリー「そう疑心暗鬼になるなよ。そうだな、まずは少し部屋で休んだらどうだ? 目の下が真っ黒だぜ」

バルクホルン「もとより……そのつもりだ」

シャーリー「ちょ、おい! ここで寝るなって! バルクホルン――」


31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:48:37.34 ID:JFnjvIFEO

  ふんぐるい むぐるうなふ るるいえ くとぅるう うがふなぐる ふたぐん!


バルクホルン「っ!」

バルクホルン「ここは……私の部屋か……」

バルクホルン(また例の歌……いや、微妙に違っていたな)

バルクホルン「くとぅるう……この言葉が鍵のようだが……」

バルクホルン「…うぐぅっ!? な、なんだ、頭が……」

バルクホルン「……ネウロイ…が……向かって来ているのか……? しかし、これは……」


33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:54:25.41 ID:JFnjvIFEO

―執務室―

バルクホルン「み、ミーナ…!」

ミーナ「トゥルーデ? 顔が真っ青よ、どうしたの?」

バルクホルン「ネウロイが……くる! うみ…だ! ネウろいが……」

ミーナ「何を言って……」

兵士「失礼致します! 只今、作戦室において当基地に進行中のネウロイを確認しました! 」

バルクホルン「……はやく…しろ! す…すいちゅうだ……かき…は……つかえない…! はル…と…マン……ぺりーヌ……を……よべ!」


34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 21:58:42.23 ID:JFnjvIFEO

―作戦会議室―

ミーナ「――ハルトマン大尉以下、クロステルマン中尉、ユーティライネン中尉、リトヴャク中尉、ルッキーニ少尉、宮藤曹長。以上6名は、直ちに敵性ネウロイの殲滅に向かって下さい」

バルクホルン「……みーナ…」

ミーナ「……全く異例のことですが、今回出現したネウロイは『海中』を進行している可能性があります。各自十分に留意して、作戦を進行して下さい」

シャーリー「ちょっと待て。海中って、つまり海の中だろ? ネウロイは水に弱いってのが通説じゃないのか?」


35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:01:52.49 ID:JFnjvIFEO


坂本「だから異例だと言っただろう。海中のネウロイに正しく攻撃できる手段は限られている。ハルトマンやペリーヌ、ルッキーニらは魔力を温存して戦え」

ハルトマン「温存して戦えって……」

ルッキーニ「海の中になんてホントにいるのカナー?」

ペリーヌ「とにかく、現場に行ってみないことには始まりませんわ。時間もあまり残されていませんし」

ミーナ「そうね。指揮はお願いするわ、フラウ」

ハルトマン「まっかせなさーい」


38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:06:25.53 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「……」

シャーリー「どうした、バルクホルン」

バルクホルン「……ん…」

シャーリー「え?」

バルクホルン「だ……ご…ん…」

シャーリー「寝てるのか? 起きろよ、作戦中だぞ」

バルクホルン「でぃ……ぷ…わん、ず……が…くる……」

シャーリー「くそ、ダメだ。あとで怒られても知らないからな」


40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:08:45.86 ID:JFnjvIFEO

坂本「…こちら作戦室………そうか。そのまま作戦を続行してくれ」

ミーナ「やっぱり……」

坂本「ああ。サーニャによると、空中に一体、海中に一体いるそうだ。いずれも中型だが、はたして対応しきれるか」

坂本「そもそも、私が出撃できれば空中だろうと水中だろうと関係ないのだがな。この航行距離だ、魔力が持つかどうか……」

ミーナ「彼女たちなら大丈夫よ。それよりも、この後の報告の事を考えると頭が――」

「ああぁぁぁぁぁっ!!」

坂本「!?」


43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:15:43.56 ID:JFnjvIFEO

リーネ「きゃああ!」

シャーリー「バルクホルン! 何やってんだ!」

バルクホルン「や、奴らが来る! 黒の鱗、退化した耳、その赤く飛び出した眼で私を監視しているんだ! 奴らの飛翔機関から響き渡る臓物を引きずるような音が私たちを狂わせるんだ!」

ミーナ「何を言っているの、トゥルーデ」

バルクホルン「触るなぁっ! お、お前たちには分からないのか。腐乱した魚のような臭気が、今にも私たちの理性を掻き消さんとする禍々しい瘴気が!」

シャーリー「こ、こいつ……」


44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:20:10.28 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「まさかお前たちも奴らの手先なのか? そんなはずは無い! そうだ、こいつらはミーナやシャーリーに擬態したディープ・ワンズだ!
くそっ、穢らわしい魚の分際で人間を欺こうとでも考えたのか! だが残念だったな、先ほど私の仲間がお前たちの巣を滅ぼしに向かったぞ! あとはお前たちさえ殺せば」

坂本「でえぇい!」バッサァァ

バルクホルン「ぐふっ……」

坂本「峰打ちだ。シャーリー、バルクホルンが暴れないよう椅子にでも縛り付けておけ」

シャーリー「……」

坂本「どうした? 早くしろ」

シャーリー「あ……ああ。そうだな…」


45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:20:51.61 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「……」

『サーニャ・V・リトヴャクです! 作戦室、応答して下さい!』

ミーナ「あ……っと、こちら作戦室。どうぞ」

サーニャ『敵性ネウロイの殲滅を確認しました。そちらのレーダーに異変はありますか?』

ミーナ「……いえ、何も捉えていないわ。なんとか収拾がついたようね、お疲れ様」

サーニャ『はい。只今より帰投します』

ミーナ「……」


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:22:43.50 ID:JFnjvIFEO

坂本「さて……あとはこいつか」

バルクホルン「……」

シャーリー「ホントに……どうしちまったんだよ、バルクホルン…」

坂本「ずっとこのまま置いておくわけにもいくまい。落ち着いている間に、医務室に運ぶぞ」


49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:32:40.79 ID:JFnjvIFEO

―医務室―

バルクホルン「はっ」

シャーリー「!」

バルクホルン「む……ここは…医務室か?」

シャーリー「バルクホルン! お前……大丈夫なのかよ!?」

バルクホルン「何がだ?」

シャーリー「何が……って、ネウロイが来てるっていうのに、いきなり暴れだしたりしてただろ」

バルクホルン「ネウロイだと? 何故私に知らせなかった!?」

シャーリー「はぁ?」


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:33:14.24 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「もう撃退したのか? くそっ、こんな所で寝ている場合ではない!」

シャーリー「ちょ、ちょっと待てよ。お前、何も覚えてないのか?」

バルクホルン「どういうことだ」

シャーリー「だから、かくかくしかじかで」

バルクホルン「……私がそんな奇行を…? 確かに、数時間前の記憶はさっぱりだが…」

シャーリー「さっき坂本少佐とリーネが街まで医者を呼びに行った。でも、こんなことなら精神科医もついでに……」

バルクホルン「なっ、貴様ぁ! 私を精神病患者扱いするつもりか!」

シャーリー「口が滑った」


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:34:12.72 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「この私を奴ら蒙昧にして愚劣な輩と同列にするなど! 冗談でも生かしておけるものではない……ッ」

シャーリー「悪かったよ。そんなに怒らなくたっていいだろ。ていうかお前も結構ひどいこと言ってるぞ」

バルクホルン「……」

シャーリー「…なんだよ、目眩でもしたのか? あんま興奮するから」

スッ

バルクホルン「Y'yhaaaa……」

シャーリー「ぅぐっ!?」ミシミシ


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:37:38.86 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「Zi-weee……aaaaa…!」グッ

シャーリー「ばるくっ……あ゛っ、るぁぁ!」ジタバタ

シャーリー(サイコキネシスかよ!? 触られてないのに首を……)

バルクホルン「aaa……yhaaaaaa!」グッ

シャーリー(…まずい……意識、が)

コンコン

「シャーリーさん、お医者様が到着しましたよ!」

シャーリー(…みやふじ……)

「シャーリーさん?」


55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:46:56.34 ID:JFnjvIFEO

バルクホルン「」ビク

バルクホルン「う゛あっ」ドサッ

シャーリー「……! っ……らぁ!」

「失礼しまーす……」

シャーリー「えふっ、う゛ぇっ………はぁ……かふっ」

芳佳「シャーリーさん!? 一体何が」

シャーリー「ばる、バルクホルンは、どうした?」ゼエゼエ

芳佳「バルクホルンさんですか? まだお休みになってるようですけど……」

シャーリー「……そうか」


56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:47:27.74 ID:JFnjvIFEO

芳佳「何かあったんですか?」

シャーリー「いや……なんでもない。それより、医者は?」

芳佳「あっ、もうそろそろこの部屋にいらっしゃると思います。坂本さんと一緒に」

シャーリー「そうか。坂本少佐がいるなら大丈夫だろう」

芳佳「……やっぱり何か変ですよ、シャーリーさん」

シャーリー「変なのは私じゃ……」


58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:51:29.72 ID:JFnjvIFEO

坂本「こちらです。どうぞ」

シャーリー「……チッ」

バタン!

医者「おおっと」

坂本「シャーリー、どこを見ているんだ! 申し訳ありません」

芳佳「シャーリーさん!」

坂本「宮藤、お前はこっちを手伝え。あいつには後で私から言っておく」

芳佳「……」


59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:52:03.48 ID:JFnjvIFEO

―夕食後/シャーリーとルッキーニの部屋―

ガチャッ

坂本「シャーリー」

シャーリー「……何だよ」

坂本「…ふっ、そう邪険にするな。私は別に、お前を叱りにきた訳ではない」

シャーリー「だったら私に用なんてないはずだろ」

坂本「いや、そうもいかん。今夜はお前の知っていることを洗いざらい話してもらう」

シャーリー「なに?」


61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:57:26.52 ID:JFnjvIFEO

坂本「バルクホルンのことについてだ。これはミーナに聞いたのだが、昨晩、バルクホルンは深夜に部屋を抜け出し基地内を徘徊していたらしい」

坂本「なにやら幻聴が聞こえていたそうだが……例の異常な行動といい、あいつが精神的に参っているなら、私たちもしかるべき手段でそれを取り除く必要がある」

シャーリー「どういうことだ?」

坂本「つまり、原因が人間関係にあるなら当事者同士で話し合う場を設ける必要があるし、あるいはネウロイの影響なら……」

シャーリー「しらみ潰しか。前みたいに」


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 22:57:51.70 ID:JFnjvIFEO

坂本「うむ。お前の知り得たことが何かしら手がかりになるのではと思って、足を運んだわけだが……」

シャーリー「ちょっと待てよ。バルクホルンを治すのには協力してもいい。でも、どうして私のとこに来たのか聞いておきたい。あいつの様子がおかしいっていうなら、ハルトマンやミーナ隊長に話させた方がいいんじゃないのか」

坂本「無論その二人、いや、501のウィッチ全員には話を聞いておく。宮藤がお前を気にかけていたものだからな、一番にお前を訪ねたわけだ」

シャーリー「宮藤が?」


65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:04:38.70 ID:JFnjvIFEO




坂本「……なるほど」

シャーリー「私が知ってるのはそれくらいだ。バルクホルンが聞いたっていう呪文、あれの出所が分かれば一気に解決するんじゃないかな」

坂本「お前が宮藤達に話して聞かせた『インスマスの夜』だったか。あれには何か手がかりは無いのか?」

シャーリー「いや、私も細かいとこまで知ってるわけじゃない。そもそもこれは子供に聞かせるようなおとぎ話で、深い意味があるとは思えないけど」

坂本「だが、バルクホルンに異変が起こるきっかけになったのはその話を聞いたからだろう」


66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:06:33.57 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「それならバルクホルンより先に、ルッキーニ達になにかあるはずだ。今のとこ幻聴、幻覚の症状が出てるのはバルクホルンしかいないんだろ」

坂本「ううむ………バルクホルンにあって、宮藤たちに無いものか……」

シャーリー「ネウロイの恨みとか」

坂本「まさか……とは言えないな。海中を進行してくるネウロイが見つかるくらいだから――」

コンコン


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:07:28.86 ID:JFnjvIFEO

「シャーリーさん? 坂本少佐はこの部屋にいるかしら」

シャーリー「隊長か?」

坂本「私だ。どうした、ミーナ?」

ガチャ

ミーナ「たった今、哨戒に出ていたサーニャさんとエイラさんから連絡が入ったのだけど」

坂本「何があった」

ミーナ「少しまずいことになったわ」


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:21:35.33 ID:JFnjvIFEO

―作戦会議室―

ミーナ「ごめんなさい、シャーリーさん。あなたまで付き合わせてしまって」

シャーリー「いいよ別に。それよりも、サーニャが言ってた写真ってのはどれだ?」

ミーナ「これよ」

坂本「うん? 特に何の変哲もない海ではないのか?」

サーニャ「違うんです。私も最初はそう思いましたが、海に近づいてみると……」


73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:23:46.96 ID:JFnjvIFEO

シャーリー「……はっ! まさか!」

坂本「この輝き……『死んだ魚の腹』じゃないのか!? 海を覆いつくして、海面が見えない程の魚が死んでいる……!」

ミーナ「そう。私たちが昼頃倒したネウロイの破片が消えずに海中を漂っていたところ、周辺の海域がネウロイの障気に汚染されてしまったものと考えられるわ」

エイラ「だとしたら……」

ミーナ「明日からしばらくの間、安全が確認されるまでブリタニア周辺での漁は規制。個人的に魚を釣って食べた疑いのある市民は、任意に病院で検査を受けられるように」


77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:35:24.05 ID:JFnjvIFEO

坂本「前例が無いからな、手を打つのも難しいが……本部に通達は?」

ミーナ「あちらでも状況を確認しているみたい。一応の処置として、先に上げた方法を……」

BEEP! BEEP!

サーニャ「緊急警報!?」

エイラ「今度はなんだヨ!?」

兵士「失礼致します! ブリタニア国立病院より、汚染魚を食べたと疑われる者の治療をしていたところ、火災が発生したとの報告です」

ミーナ「規模は?」

兵士「地元の消防団が全力で消火にあたっておりますが、依然として火の勢力は強力なようです」


78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:36:14.73 ID:JFnjvIFEO

坂本「くそっ、どうしてこうも不運が重なる!」

ミーナ「消火活動は続けさせて。まだ検査を受けてない人や陽性反応が出た人は、この基地に収容します」

サーニャ「え?」

ミーナ「病院で検査や治療にあたっていた医師は優先して連れてきて」

兵士「しかし……」

ミーナ「早く!」

兵士「は、はっ!」

エイラ「隊長! ネウロイになるかもしれないって奴らをこんなとこにいれたラ……」

ミーナ「『最後の手段』がとれるのは、私たちだけなのよ」

エイラ「!!」

サーニャ「そ……それって……」


81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:43:20.34 ID:JFnjvIFEO

ミーナ「……覚悟はしておきなさい」

坂本「……」

ペリーヌ「何事ですの!?」

ルッキーニ「ねむーい…」

芳佳「坂本さん!」

ミーナ「やっと起きてきたわね。これで全員……」

ハルトマン「あれ、トゥルーデは?」

『!!』


83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:49:51.88 ID:JFnjvIFEO

坂本「バルクホルンから目を離すなと……! 奴は今どこにいる!」

宮藤「今夜はまだ医務室で休ませるとお医者様が……」

ミーナ「すぐに彼女を拘束して!」

ブウウウウ…ン

シャーリー「ストライカーの音? まさか!」ガラッ

バルクホルン「あーっはっはっはっは! ふんぐるいぃ、むぐるうなふ! るぅるいえ、くとぅるるるぅぅ!」

ハルトマン「トゥルーデ!?」


85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/14(土) 23:57:45.48 ID:JFnjvIFEO

ミーナ「戻ってきなさい、トゥルーデ! 行かないで!」

バルクホルン「うがふなぁぐる、ふたぐんんん! yh'aaaaaaaaa!」

ブウウウウン

芳佳「バルクホルンさぁん!」

シャーリー「……くそっ! 私が追う!」

坂本「なに? 待てシャーリー!」

シャーリー「悪い、少佐! 説教は帰ってから、あいつと一緒にな!」


87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:02:56.46 ID:JFnjvIFEO

―海上―

シャーリー「バルクホルーン!」

シャーリー(くそ、何で追い付けない!? 私のトップスピードのはずだ!)

シャーリー(こうなったら、ストライカーを狙ってコイツを……)ジャキッ

バルクホルン「シャ、リー」

シャーリー「!」

バルクホルン「……ふふっ、くくく…あははははは!」

シャーリー「あいつ……まだ意識があるのか!?」


89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:11:59.69 ID:/Z0NZ1IvO

バルクホルン「……」

ウウウ…ン

シャーリー(止まった?)

シャーリー「バルクホルン! お前……」

バルクホルン「私を殺せ」

シャーリー「え?」

バルクホルン「時間が無い、はや…く!」

シャーリー「なに言って」

バルクホルン「私が死ネば、くトゥるフも浮上しナいはずだ……! 今シカないんだ……やれ! シャーリー!」

シャーリー「で…出来るわけないだろ! いきなりワケわかんないこと言いやがって……なんだよクトゥルフって? そいつが浮上すると」

バルクホルン「う゛ぁあ゛ぁぁぁぁ!」


91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:20:20.29 ID:t+AkxVKy0

クトゥルフの呼び声だったか……


92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:22:27.76 ID:/Z0NZ1IvO

バルクホルン「タの、む……わたシヲ…スくッてくレ……」

シャーリー「そんなこと…言われたって……」

バルクホルン「わ、カッた。サよナラだ、しゃーりー……!」ニヤッ

バッ

シャーリー「ぐっ!?」

シャーリー(また変な念動力を……!)

バルクホルン「……ワタしをこロせナケれば、おまエがシぬだけだ! なにモマもれズに!」


95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:30:07.10 ID:/Z0NZ1IvO

シャーリー(く、くそぉ……)

バルクホルン「しぬカ、シゃーリぃ!」

シャーリー(……う)

ジャッ

バルクホルン「…そレ…で……イイ。ひきがネをヒいテ、わタしを…うテぇ!」

シャーリー「バルク、ホルン」

グッ





┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛


97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:34:57.76 ID:/Z0NZ1IvO

シャーリー「!? な、なんだ?」

バルクホルン「お…ソかっ、タ」

┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛

シャーリー(う、海が黒く染まって……)

シャーリー(いや、違う! あれは……)

シャーリー(――影?)

バルクホルン「……いあ、いあ! くとぅるう、ふたぐん! いあ、いあ! くとぅるう、ふたぐん!」

『――――!』


103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:43:16.82 ID:/Z0NZ1IvO

シャーリー「な……なんだ、これ」

シャーリー「このバカでかいネウロイは……ネウロイなのか?」

シャーリー「……こいつが、バルクホルンをあんなにしたのか?」

バルクホルン「ふんぐるい むぐるうなふ るるいえ くとぅるう うがふなぐる ふたぐん!」

シャーリー「……ごめんな、ごめんな。私、最後までお前を助けてやれなかった」

シャーリー「だけど」

シャーリー「せめて、あんなやつの好きになんてさせはしない。お前も、みんなも、この世界だって」


107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 00:51:01.96 ID:/Z0NZ1IvO

バルクホルン「いあ! いあ!」

シャーリー「バルクホルン。もう私の声なんか聞こえてないだろうけど」

バルクホルン「?」

チュッ

シャーリー「こうすれば伝わるか? へっ」

シャーリー「……返事は向こうで聞かせてくれ。私もすぐに追いつくよ」

バババババ


111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:01:20.95 ID:/Z0NZ1IvO

シャーリー「……じゃあ、いくぜ」

シャーリー「この『グラマラス・シャーリー』の最高速度をぶつける『体当たり』だ」

シャーリー「一撃で墜としてやる」

ドギュウウウン

シャーリー(700……800……すごいな、量産ストライカーなのにここまで上がるのか)

シャーリー(890…900……!)

シャーリー(こんなもんか? ネウロイをぶち抜くくらいならいけるだろう)

シャーリー(……)

シャーリー(バルクホルン)

シャーリー(ありがとうな)



シャーリー「……これで終わりだ! くたばれ、ネウロイ!」

ギュウウウ……

シャーリー「うおおああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『――――!』


116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:15:09.66 ID:/Z0NZ1IvO

―???―

「……起きろ、リベリアン」

「…ん?」

「いつまで私を待たせるつもりだ。さっさと起きろ」

「……バルク――」

「……っ」

「んん!?」

「……ぷは、こ、これで返事はしたからな! もう二度と、私に許可なくあんなことはするな!」

「…へへ」


119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:21:15.44 ID:/Z0NZ1IvO

「なにをヘラヘラ笑っている? 大体、お前があの時私を撃っていれば」

「そんなこと出来るかよ。だって」

「どんな邪悪のひしめく空も、お前がいる場所が、私の一番素敵な世界ってやつなんだからな」

「なっ」

「……って、ちょっとかっこいいだろ?」

「き、貴様! 私をからかっているのか!」


121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:22:12.24 ID:/Z0NZ1IvO

「本気だよ。お前と一緒だったから、あのネウロイを倒せたんだ」

「大好きなお前と、一緒にいたから」

「……ふ、ふん。まあいい。どうせこの世界ではお前と離れることも出来なさそうだ、話し相手くらいにはなってやってもいいぞ?」

「そうこなくっちゃな」

「うむ。さて……そろそろ行くか」

「私についてこれるか? 遅れるなよ、バルクホルン!」

「それはこちらの台詞だ、シャーリー!」



おわり


125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:24:14.76 ID:t+AkxVKy0

乙イアー!
素晴らしかった
ストパンでもクトゥルフでもどっちでもいいからまた書いてくれ


127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/15(日) 01:31:23.87 ID:kgr++al00

実はこれはドリームランドでの会話で
現実の二人は遺体が海岸に打ち上げられてるなんてことは……



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