FC2ブログ

ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

折木「……ガチャッ」 伊良部「いらっしゃ~い!」


1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 21:53:19.52 ID:PC3cwSsr0

折木「あの、ここって精神科ですよね?」

伊良部「伊良部一郎。よろ乳首♡」

折木(帰ろうかな……)


2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 21:54:31.39 ID:PC3cwSsr0
※・「氷菓」&「空中ブランコ」のSSスレ
 ・内容はどちらかと言うと「空中ブランコ」寄り
 ・一部登場人物(主に折木)のキャラクター性が損なわれる可能性あり
 ・あまり描写説明を書かない
 ・途中に出てくる推理が雑
 ・折木が精神病を患う
 ・千反田出番少な目
 ・折木デレる

 以上の事が許せる方は、どうぞ

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 21:57:18.93 ID:PC3cwSsr0
 一時間ほど前、古典部部室にて

折木「うっ…」

福部「どうしたんだい? ホータロー」

折木「なんでもない。ちょっと眩暈がして…」

福部「…ホータロー、何だか最近調子がおかしいよね」

折木「そうか?」

伊原「ちょっとふくちゃん、折木がおかしいのは今に始まった事じゃないでしょ」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:00:20.50 ID:PC3cwSsr0
折木「伊原、お前は黙ってろ」

千反田「でも確かに、最近の折木さんは少しおかいしいです」

折木「千反田、お前まで言うか」

福部「朝会っても浮かない顔してるし、授業の時も何だかイライラしてるし、
   廊下で何回か立ち眩みしてるし。ひょっとして、ホータローは風邪でも引いてるのかい?」

伊原「あはは、折木も風邪なんか引くんだ」

折木「いや、別に風邪を引いてるわけではないんだけどさ…」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:02:47.52 ID:PC3cwSsr0
伊原「夏バテじゃない?」

折木「いや、夏バテともちょっと違うんだよな」

千反田「じゃあ、何ですか?」

折木「…………何か、夜になっても寝付けなかったり、漠然とした不安が付きまとってたり、
   頭や身体が重かったり、風邪ではないんだけど、変なんだ」

伊原「精神科にでも行ったら?」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:04:47.13 ID:PC3cwSsr0
折木「あのなあ、伊原、こっちは真面目に話してんだぞ」

福部「いや、違うよホータロー、麻耶花はホータローの悩みを真摯に受け止めて、
   精神科に行くよう勧めているんだよ」

千反田「え、そうなんですか?」

伊原「え、そうなの?」

折木「千反田はともかく、どうしてお前まで聞き返すんだ」

福部「ホータロー、もし精神科に行くんだったら、伊良部総合病院なんてどうかな?」

折木「『伊良部総合病院?』」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:05:47.27 ID:PC3cwSsr0
福部「なんでも、凄く腕の良い精神科医がいるらしいよ」

折木「精神科医に腕の良いも悪いもないだろ。それに、俺は精神科になんか行かないよ。面倒くさい」

福部「そんな事言ってていいのかい、ホータロー。もしホータローが何かの精神病を患っていたとして、
   それがずっと続いたら、今後の生活が苦になるんじゃない? それだとホータローのポリシーに反する気がするなあ」

折木(こいつ、絶対に楽しんでる)

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:06:42.15 ID:PC3cwSsr0
折木「いや、あのな、里志…」

伊原「そうよそうよ、一度行ってみたら? そんな暗い顔で部室にいられても迷惑なだけだから。
   あっ、いつもの事か」

千反田「折木さん、風邪を引いたらちゃんと直した方が良いと思います」

折木「………………はあ、分かったよ。一回だけ行ってみるよ」

折木(確かに、最近体調が優れてないからな。精神的な事かもしれないし、一度行ってみるか)

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:07:58.71 ID:PC3cwSsr0
伊良部総合病院


折木(ふうん、精神科って、地下にあるのか)

階段を下りて、薄暗い廊下を進んでいく。

折木「っと、ここか」

ドアノブを握り、ゆっくりと開く。長方形の待合室が視界に入ってくるが、
部屋中が様々な絵具で塗りたくったようになっており、目が痛くなる。

折木「うわ、なんだこの部屋……」

頭を抱えながら中に入り、奥へ進む。水色に塗られた扉にはドアノブが無く、
代わりに中央に、大き目の手形があった。

折木(もしかして、これって……)

手形にそっと自分の手を置く。手を引くと、扉がすっと横に開く。

伊良部「いらっしゃ~い!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:09:13.90 ID:PC3cwSsr0
折木(ひ、広い)

周りを見渡す。ドーム状の部屋で、待合室と同じように部屋中が原色で塗られている。
前を見ると、くまのぬいぐるみを被った、太っている男が椅子に座っていた。

折木「あの、ここって精神科ですよね?」

伊良部「伊良部一郎、よろ乳首♡」

折木(帰ろうかな……)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:09:51.74 ID:PC3cwSsr0
伊良部「まあまあとりあえず、座って座って」

伊良部に促されて目の前の椅子に腰を下ろす。

伊良部「コーヒー飲む? インスタントだけど」

折木「いや、俺は別に」

伊良部「マユミちゃ~ん、コーヒー二つ! インスタントの方で良いよ~」

折木(人の話を聞けよ)

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:10:37.04 ID:PC3cwSsr0
物陰から荷台が転がってくる。コーヒーカップが二つ乗せられている。

伊良部「でっ、どうして折木君はここに来たわけ?」

折木「……夜、なかなか寝付けなかったり、よく分からないけどイライラしたり」

伊良部「ずずずずずずず………。うんうん」

折木「風邪ではないんですけど、体調が優れなくて。だからここに来ました」

伊良部「まあ、症状の方は予備問診を見たから大体分かるんだけどさっ。あははは」

折木(じゃあ何で説明させたんだ)

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:11:18.21 ID:PC3cwSsr0
伊良部「でも、折木君の気持ちは凄く分かる。ちょーわかる! 僕もせっかく作ったガンプラを、
    お母さんに捨てられちゃうんじゃないかって不安に思う時があって、そうなると夜も寝れなくなっちゃうんだよね~」

折木「……」

伊良部「ずばり、典型的だね」

折木「はあ……」


症状・睡眠障害及び全般性不安障害

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:12:20.41 ID:PC3cwSsr0


ふくいっち「全般性不安障害とは、理由の定まらない不安が長期間続き、日常生活に支障をきたしてしまう
      症状の事を言います。症状の例としては、そわそわと落ち着きが無い、眩暈またはふらつき、
      ぐっすり眠れない、等があります。あっ、申し遅れました。私、『ふくいっち』と申します。
      メンタルヘルスの現場から、ちょくちょく解説させていただきます」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:12:59.14 ID:PC3cwSsr0
伊良部「あなた」

折木「はい」

伊良部「心の、やぁ~まぁ~いぃ~!」

折木(やっぱり、帰ろう)

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:13:29.60 ID:PC3cwSsr0
伊良部「ちょっとちょっと、どこに行くのさ?」

折木「帰るんです。無駄な時間を過ごすのは嫌いなんで」

伊良部「え~、なんで~? もうちょっとここにいなよ、折木く~ん」

折木「うわ、ちょ、肩揉まないで下さい」

伊良部「やだよ~ん。揉まれたくなかったら椅子に座ってよ」

折木(くそっ、帰れそうにない。……早く診察を終わらせるか)

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:14:03.65 ID:PC3cwSsr0
伊良部「おっ、座ってくれた。じゃあとりあえず注射打とうか」

折木「は?」

伊良部「とっておきの注射を打ってあげる。マユミちゃ~ん、ふっといの!」

折木「いや、注射とか、そういうのは別にいいんで」

伊良部「大丈夫、心配しないで。直ぐに終わるからさ~。ぐふふふふふ」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:14:57.07 ID:PC3cwSsr0
物陰からピンク色のナース服を来た女が現れる。胸をはだけさせ、谷間を露出させている。
手には大き目の注射を持っていた。

折木「え、ちょっと、え?」

マユミ「ほら、腕」

無理やり腕を押さえつけられる。谷間が目の前にあり、慌てて顔を逸らした。

折木(な、何がどうなってるんだ?)

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:16:05.21 ID:PC3cwSsr0
注射針が腕に深く刺さる。

折木「いててててて」

伊良部「はあ……はあ……ふっ、深い、深いぃぃ………針がさっさて、さっさて…………! 
    マユミちゃん……お注射……はあ……上手だねえ……はあ」

折木(こ、ここは本当に精神科なのか?)

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:16:48.49 ID:PC3cwSsr0
マユミ「ふんっ」

注射が終わると、マユミはつまらなそうに物陰へと消えていく。

伊良部(小)「こんちわー。いらぶいちろーです」

折木(あれ、こんなに小さかったっけ? と言うより、普通の子供じゃないか。
   しかも凄い無愛想だ)

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:17:47.54 ID:PC3cwSsr0
伊良部(小)「折木君って、神山高校に通ってるんだよね」

折木「は、はい、そうです」

伊良部(小)「文化祭が三日間もあるとか。うらやましーなー。
       折木君は何か部活に入ってるの?」

折木「古典部に、入ってます」

伊良部(小)「ふうん、初めて聞いたなあ。部員とは仲良くやれてるの?」

千反田の顔が思い浮かぶ。

折木「まあ、そこそこですかね」

伊良部(小)「ふうん」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:18:42.89 ID:PC3cwSsr0
伊良部(中)「はぁい、伊良部一郎です。ふふっ」

折木(あ、れ? こんな眼鏡かけた青年だったっけ?)

伊良部(中)「とりあえず、今日はもう帰っていいよ。もし夜中寝つけなかったら、
       僕が往診して注射を打ちに行ってあげるから。ぐふふふ」

折木「結構です」

伊良部(中)「ちえっ、つまんないのー。まあいいや、また明日ここに来てね。
       注射代は特別サービスでただにしてあげるから」

折木「はい」

折木(あれ、何で返事しちゃったんだろう)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:19:42.42 ID:PC3cwSsr0
翌朝、校門にて


千反田「折木さーん」

折木「ああ、千反田か」

千反田「昨日はどうでした?」

折木「どうもこうもない。いきなり注射打たれるわ、無駄な時間を取られるわ、散々だった」

折木(でも、昨日は久々にぐっすり眠れたんだよな。やっぱり注射のお蔭かな)

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:20:31.87 ID:PC3cwSsr0
折木「なんか、精神科医も変な奴だったし……」

千反田「変? どんな風に変だったんですか?」

折木「最初は太った中年の男だったんだけど、気付いたら小学生くらいの子供になってて、
   そしてまた気づいたら、今度は眼鏡をかけた青年の姿になってて…………はっ」

千反田が目をキラキラと輝かせている。

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:21:32.44 ID:PC3cwSsr0
折木「あ、で、でも、多分それは俺の精神がおかしかったからかもしれないから、あんまり真に受けるなよ」

千反田「七変化する精神科医……ころころと姿を変えるお医者さん……」

折木(まずい、これはまずい。どうにかしないと)

福部「おーい、ホータロー。何やってるの?」

折木「里志、よかった! 早く千反田を連れてってくれ!」

福部「え、え、急にどうしたのさ」

折木「良いから早く! 頭が痛いんだ」

福部「わ、分かったよ」

ぼうっとしている千反田を里志が引きずるように連れて行く。

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:23:00.21 ID:PC3cwSsr0
折木「はあ、助かった…………うっ」

立ち眩みがして、その場にへたり込む。

伊良部(小)「ねえ、大丈夫?」

後ろから声が聞こえて飛び上がる。伊良部がいた。

折木「うわっ、ど、どうしてここにいるんですか」

伊良部(小)「そんなことよりさ、さっきの女の子、誰?」

折木「千反田えるって言って、俺と同じ古典部員ですよ」

伊良部(小)「千反田? ああ、あの桁上がりの四名家の」

折木(里志が作った名称が広がってるのかよ…)

折木「知ってるんですか?」

伊良部(小)「まあね。僕の所は結構色んな所と接点があるから。それより、早くしないと朝礼に遅れるよ」

折木「あっ、やべ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:24:05.24 ID:PC3cwSsr0
放課後、古典部部室


伊良部(中)「古典部って、古典を読んだり調べたりする部活だと思ってたんだけど、
       皆で集まってお喋りしたりするだけなんだね」

折木「まあ、文化祭の時以外は大体そうですね」

折木(この人、なんで部室にまで入ってきてるんだよ)

伊原「あれ? ねえねえ、誰かわたしの携帯、知らない?」

千反田「麻耶花さんの携帯電話ですか? 見てないですね」

福部「僕も知らないなあ。ホータローは?」

折木「いや、知らない。家に置いてきたんじゃないのか?」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:24:54.58 ID:PC3cwSsr0
伊原「そんなことないわよ。確かに今日持ってきたんだから」

福部「校内じゃ携帯電話の使用は禁止されてるから、普通は鞄の中に入れっぱなしのはずなんだけどね」

伊原「そうなのよ。別に鞄から取り出して使ってたわけじゃないのに、どうして無いんだろう……」

折木(はあ、この手の問題にあいつが食いつかないはずが無いか……)

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:26:06.32 ID:PC3cwSsr0
千反田「忽然と消えてしまった麻耶花さんの携帯電話…………。
    わたし、気になります!」

折木「分かったから、俺の目を見ないでくれ」

わしゃわしゃと髪を掻く。

折木「伊原、今日の時間割、言ってみろ」

伊原「ええと、一時間目が古典で、二時間目が英語、三と四時間目が数学で、
   五時間目が家庭科、六時間目が化学ね」

折木「ふむ……」

福部「五時間目の家庭科は、確か移動教室だったよね。その間に誰かが盗んだってことはないかな。
   ほら、最近校内で盗難事件が多発してるじゃないか。今日も終礼の時に長時間話をされたし、麻耶花も分かるだろ?」

伊原「ちゃんと鞄の中を見たわけじゃないけど、多分それは無いと思う」

千反田「移動教室の際は扉の鍵を閉めてしまいますから、外部からの侵入は不可能ですね」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:27:11.62 ID:PC3cwSsr0
伊良部(中)「僕は誰かがどこでもドアを使って中に入って、携帯を盗んだと思うなー」

折木「先生は黙ってて下さい」

福部「休み時間中に盗まれた、ってことは無いのかな?」

伊原「多分無いと思う。図書室に行く時は鞄も持ち歩いてるし」

千反田「じゃあ、どうしてなんでしょうか……」

伊良部(中)「もしくは。通り抜けーフープを使って」

折木「先生」

伊良部(中)「ごめんなちゃーい」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:28:09.35 ID:PC3cwSsr0
折木「なあ、伊原は教科書とかを家に持って帰ってる派か?」

伊原「え、どういうこと?」

折木「机の中とかに入れっぱなしにしてないで、ちゃんと持って帰っているかってこと」

伊原「うん。毎日鞄に詰めて持ち運んでるけど」

折木(だとしたら、あそこにあるかもしれないな……)

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:28:52.39 ID:PC3cwSsr0
折木「伊原、ちょっと自分の教室に戻って、お前の机の中を見てこい」

伊原「え? 何でよ」

折木「良いから行って来いって」


数分後


千反田「あっ、帰ってきました」

福部「どうだった、麻耶花?」

伊原「折木……」

折木「なんだ」

伊原「どうしてわたし机の中に携帯が置いてあったって、分かったの?」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:30:25.10 ID:PC3cwSsr0
折木「伊原は授業が終わった後の教科書類は、どうしてある?」

伊原「そのまま机の中に入れといて、六時間目が終わったら全部鞄の中に詰め込む」

折木「まあ、ほとんどの奴がそうだろうな。その時、携帯は鞄の中に入れっぱなしだろ? 
   教科書を入れる時に邪魔になる」

福部「そうか、麻耶花はそれを取りだして、机の中に入れてから教科書を鞄に入れたんだ。
   そして、そのまま携帯を忘れてしまった」

伊原「ちょっと待ってよ、さすがのわたしでも忘れることは無いと思うんだけど」

折木「確かに、普段なら難なく携帯も鞄にしまってただろ。だけど、今日は違った」

千反田「あっ。…………盗難事件の話ですね」

折木「そう。今日は終礼に教師から長々と盗難についての話をさせられた。
   きっと伊原は携帯を鞄に戻そうとした時に、教師が話し始めてしまったんだろう。
   それで結局、話が終わったころには携帯の存在を忘れてしまっていた、ってことさ」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:31:47.58 ID:PC3cwSsr0
伊良部総合病院


折木「いってててて」

伊良部「はあ…………あん……、ふ、太い針が刺さっていくうぅ………
    はあっはあっ……」

注射を終え、マユミが無愛想な顔で去っていく。

伊良部「いや~、それにしても今日は面白かったね! 見事の推理だったよ。よっ、折木屋!」

折木「別に、大したことじゃないですよ。ただ、放っておくと面倒だから…」

伊良部「またまた~、良く言うよ。推理してる時の折木君、すっごい楽しそうな顔してたじゃない。
    もう魚を得た水みたいに生き生きしちゃってさ! …あれ? 水を得た水、あれれ? 魚を得た魚……」

折木(俺が、生き生きしてた?)

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:32:41.68 ID:PC3cwSsr0
折木「本当ですか、それ」

伊良部「うん! 水を得た魚みたいだったよ。あ、やっと言えた」

折木「そんな、ありえませんよ、そんなこと」

伊良部「どうして?」

折木「そんな、薔薇色みたいな生活を送るなんて…」

伊良部「薔薇色?」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:33:39.24 ID:PC3cwSsr0
伊良部「面白いね、折木君は学校生活を灰色と薔薇色に区分してるんだ」

折木「ええ、まあ」

伊良部(小)「それで? 折木君は薔薇色が嫌なわけ?」

折木「当然、灰色のほうが良いですよ…………うっ」

頭が痛くなり、手で押さえる。

伊良部(中)「ふふっ、やっと分かったよ、折木君の真の症状が」

折木「え?」

伊良部(中)「ずばり、『適応障害』だね」

折木「適応……障害……?」


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:34:37.29 ID:PC3cwSsr0


ふくいっち「適応障害とは、個人的な生活上の変化等がストレスとなって、
      情緒面や行動面などに症状が現れる障害のことです。社会生活に適応出来なくなり、
      強い苦痛を感じたりするため、仕事や学業に支障をきたしたりする場合もあります。
      比較的若い人が多いのですが、どの年齢でも起こる可能性があるので注意が必要です」



伊良部「まっ、今日はとりあえず帰りなよ! また明日症状のことを詳しく説明してあげるから。
    もちろん注射もね? ぐっふふふふふ」

折木(適応障害、か……)

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:35:57.50 ID:PC3cwSsr0
翌日、神山学校


折木(昨日伊良部が言っていた『適応障害』ってのは、きっと千反田たちに対してだろう。
   俺は灰色の学校生活を送りたいのに、千反田たちが薔薇色を押し付けてくるから、
   精神的に参るんだ。だったら暫くあいつらと顔を合わせなければ良いだけの話じゃないか)

福部「ホータロー、何ぼうっとしてるのさ。次は移動教室だから早く行かないと」

折木「なあ、里志」

福部「何?」

折木「俺、暫く古典部に顔を出さない事にする」

福部「え、どうして」

折木「一昨日から精神科に通ってんだけど、どうやら本当に参ってるらしい。少しの間身体を安静にしておきたいんだ」

福部「…………分かった。千反田さんたちに伝えておくよ」

折木「すまない。……うっ」

福部「奉太郎、本当に大丈夫かい?」

折木「ああ、大丈夫だ」

折木(これで、大丈夫なはずなんだ)

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:36:59.71 ID:PC3cwSsr0
伊良部総合病院


伊良部(小)「浮かない顔をしているねー」

折木「……はい」

伊良部(小)「夜、眠れないの?」

折木「いや、眠ることは出来るんですけど、学校にいると落ち着かなかったり、
   頭が痛くなったり、とにかく不安なんです」

折木(おかしい、千反田たちとは距離を置いているはずなのに、どうして体調が優れないんだ?)

伊良部(小)「ふうん。まあとりあえず、注射打とうか。ぐふふふ」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:37:43.92 ID:PC3cwSsr0
いつものようにマユミが注射を持って出てくる。

マユミ「今日は、痛がらないんだ」

折木「慣れですよ慣れ。毎日注射打たれてたら、誰だって慣れますよ」

マユミ「案外、あんた自身の場合もそうなのかもね」

折木「?」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:38:32.02 ID:PC3cwSsr0
翌日、神山学校


福部「ホータロー、どう調子は?」

折木「ん、まあまあかな」

折木(断じてそんなことは無い。今も軽く頭痛がする)

福部「千反田さんも麻耶花も心配してたよ。早く元気になってよ」

折木「ああ、そうだな」

福部「……ねえ、ホータロー。夏休みに入ったら、皆で海に行かない?」

折木「海?」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:39:35.26 ID:PC3cwSsr0
福部「古典部の皆で馬鹿みたいにはしゃいでさっ、たまには良いだろ? 
   千反田さんも麻耶花も賛成してるんだ」

折木「……………………………」

福部「ホータロー?」

折木「俺は……遠慮しておくよ」

おもむろに席から立ち上がる。眩暈がする。

折木「ちょっと手洗いに行ってく……あれ………?」ドサッ

福部「え、ちょ、ホータロー。ホータロー!」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:40:53.15 ID:PC3cwSsr0
目を開けると、白い天井が見えた。

折木「ここは…」

伊良部(中)「目が覚めた?」

声がする方へ顔を向けると、伊良部がいた。

折木「俺、どうなって」

伊良部(中)「心配しないで、軽い貧血を起こしただけだから。ここは学校の保健室だよ。
       福部君が連れてきてくれたんだ」

折木「そうだ、俺、倒れて…」

折木(里志が俺の事を運んでくれたのか。後で礼を言わなくちゃな)

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/04(土) 22:42:00.35 ID:PC3cwSsr0
伊良部(中)「目は覚めたようだけど、まだ安静にしていなきゃ駄目だよ? 
       六時間目が終わるころまでここで横になっていなきゃ」

折木「……どうして治らないんですか。適応障害なんですよね、俺」

伊良部(中)「うん、そうだよ」

折木「千反田たちとは、薔薇色の生活とは関わらないようにしてるのに、どうして…」

伊良部(小)「やっぱり、まだ分かってないんだ」

折木「え?」

71 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [47/54回(PC)]
伊良部(小)「折木君は、灰色の、つまり元の自分に対して適応障害を起こしているんだよ」

折木「どういうことですか」

伊良部(小)「朱に交われば赤くなる、っていう事ではないんだけど、折木君は自分でも知らない内に、
       薔薇色に染められていってたんだよ」

折木「俺が、薔薇色に?」

伊良部(中)「でも、君自身は灰色が良いと思っている。だから、その間で宙ぶらりんになってしまって
       ストレスが溜まり、睡眠障害やら全般性不安障害やらを引き起こしてしまったんだ。
       何も薔薇色に触れることが嫌で適応障害になってしまったわけではないんだよ」




74 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [48/54回(PC)]


ふくいっち「精神患者がきちんと自分の精神病を理解していることは、とても稀です。
      大半が医者と触れ合っていく内に、初めて己の症状を理解できるのです」



折木「そうだったのか。俺、これからどうしたら……」


75 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [49/54回(PC)]
伊良部「色なんか忘れちゃいなよ!」

折木「え?」

伊良部「そもそも学校生活とかに色なんて存在しないんだから、好きなように過ごせばいいんだよ。
    やりたいことがあればやればいいし、やりたくないことがあればやらなければいい。自分に素直になる事が、
    一番良いんじゃないかな」

折木「…………そうですね」

ふっと笑って枕に頭を乗せる。

折木「なんだか疲れました。眠たいから寝ることにしますよ」


76 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [50/54回(PC)]
伊良部「そう言えば、不眠症の方はどうなったの? 夜、よく眠れた?」

折木「はい。先生が出してくれる注射のお蔭で、よく眠れましたよ」

伊良部「おかしいな~? あれはただのビタミン注射だから、眠れるはずが無いんだけどなあ」

折木「えっ」


77 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [51/54回(PC)]


ふくいっち「メンタルヘルスの病気で、注射を打たれることは滅多にありません。
      内服薬で治療を進めることがほとんどです。どうも、ふくいっちでした」




伊良部「まあ、良いよね? 結果オーライってことで。あははははははは!」


78 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:PC3cwSsr0 [52/54回(PC)]
福部「あれっ、ホータロー?」

千反田「え、本当ですか?」

折木「よう」

伊原「ちょっとあんた、本当にもう大丈夫なわけ? 
   ふくちゃんとちーちゃんがどんだけ心配してたと思ってるの」

折木「ごめん。皆には迷惑をかけたと思ってる。でも、俺はもう大丈夫だ」

伊原「…………まあ、今回はこれで許してあげるわよ」

千反田「これで古典部が全員揃いましたね!」

福部「揃ったところで普段となんら変わらないけどね」

折木「あ、あのさっ」

福部「ん?」

折木「その、ゴーグルとか浮き輪とか、どこで売ってるんだ?」




79 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] : 投稿日:ID:tO5TpaWf0 [2/2回(PC)] 乙
関連記事
スポンサーサイト