fc2ブログ

ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

久「ストーカー?私に?」

2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:21:10.60 ID:AAh76SZ90
洋榎「はあはあ、なるほどなー」

胡桃「どうしたの?」

洋榎「わかったでー」

胡桃「何が?」

洋榎「我々は本編では別々の高校やけれども」

洋榎「このSSでは同じ高校に通ってるっちゅーことになっとって」

洋榎「そしてこの四人はその高校の生徒会役員っちゅーことや!」
元スレ:ttp://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1352/13524/1352431240.html

3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:21:39.48 ID:AAh76SZ90

胡桃「洋榎がそれ説明するの!?」



胡桃「てゆーか、
>>1に書くべきだったんじゃ」



洋榎「もう遅いわ。なあ久」



久「洋榎の言うことは正しいわ。確かに」



春「・・・」ポリポリ



洋榎「で、何?ストーカー?ストーキングされとるん?」


4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:22:07.72 ID:AAh76SZ90

久「うん」



洋榎「被害妄想ちゃう?そういう人多いで、自分の身もわきまえず」



洋榎「ストーカーされとるー!って騒いだりしてさー」



春「でも会長にはストーカーいてもおかしくないかも」



胡桃「人気者だしねー」


5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:22:37.31 ID:AAh76SZ90

洋榎「え、ウチも人気者やけどストーカーされたことないで?」



胡桃「・・・それマジで言ってるの?」



洋榎「マジや」



胡桃&久「・・・」



洋榎「・・・ごめんそれ含めネタや」



春「心当たりは?」



久「たぶん、この学校の生徒」


6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)2012/11/09(金) 12:23:09.34 ID:AAh76SZ90

洋榎「なんやそれ?」



胡桃「根拠は?」



久「主に、って言うかそれだけなんだけど」



久「帰り道をつけられてるときに」



久「後ろを振り返るとね」



久「その子が『キャッ』とか言って物陰に隠れるのが見えるの」



洋榎「そいつがうちの制服着とったってこと?」



久「そう」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)2012/11/09(金) 12:23:38.75 ID:AAh76SZ90

胡桃「えー!」



洋榎「ないわー」



久「ホントだって」



洋榎「いや尾行下手くそすぎるやろ」



春「ストーカーの才能ゼロ」ポリポリ



久「いやまあ、それ以外にも特徴があるんだけど」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:24:46.68 ID:AAh76SZ90

久「髪型は金髪で、肩までの長さのストレートで」



久「右目?左目?・・・右目をつぶってるのねずっと。何でか分かんないんだけど」



洋榎&胡桃&春「・・・」



久「そんな人っていない?うちの生徒に」



洋榎「いるっちゃあいるけど・・・」



春「なんか納得した」



胡桃「あの人にストーカーは無理だわ」


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:25:13.70 ID:AAh76SZ90

久「え、誰?」



洋榎「あー、調理部の部長さんなんやけど」



洋榎「心配せんでええよ。100%無害や」



久「なんで?」



洋榎「まあ、会ったら分かるっちゅーか」



胡桃「絶対会ったことあるはずだよ、会長!」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:25:47.73 ID:AAh76SZ90

久「調理部・・・、部長・・・?」



久「・・・・・・」



春「黒糖いる?」



久「あ、ありがとう」ポリポリ



胡桃「脳活性化?」



春「そう」ニコ

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:26:20.66 ID:AAh76SZ90

久「・・・だめだ、ムリ」



洋榎「はぁ~、ようそれで生徒会長なんてやってられんなあ」



久「ふっふっふー、ほめても何も出ないわよ」



洋榎&胡桃&春「ほめてない」



久「わかってるわよ、ところで」



久「調理部って今日やってる?」


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:26:46.84 ID:AAh76SZ90

胡桃「えーっと、やってたと思う」



久「どこ?」



胡桃「南棟の調理室だけど」



春「でもほとんど302で何かしてる」



胡桃「それは次の何作るかの打ち合わせとかしてるんだよ」



胡桃「でも今日は実習で調理室のはず」


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:27:14.87 ID:AAh76SZ90

洋榎「もしかして・・・」



胡桃「見に行くの?」



久「もちろんそうよ」



久「見ればわかるんでしょ」



洋榎「それはそうやけど・・・」



久「じゃ、いってくる」


14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:27:46.93 ID:AAh76SZ90

胡桃「・・・あ、間違ってたらごめん!」



久「はいはーい」



ガチャ、バタン



春「・・・」ポリポリ



洋榎「なんかいらんことしてしもたかな・・・」


15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:28:15.44 ID:AAh76SZ90

胡桃「やっちゃったかもね」



洋榎「おそらく奴は」



洋榎「ストーカーで遊ぶつもりや!」



春「それはない」



春「・・・スイッチ入ってない限りは」ポリポリ



胡桃「あんまり遊びすぎて」



胡桃「逆にストーカーから訴えられたりね」


16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:29:13.85 ID:AAh76SZ90

洋榎「ありうるwwwwww」



春「クスクス」



洋榎「まさに『ヒサの旋律の鳴り渡る』やで」



胡桃「・・・洋榎」



胡桃「そのネタ読んでる人の誰にもわかんないから!」



胡桃「絶対!」



春「でも『猫に時間の流れる』は好き」


17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:29:47.78 ID:AAh76SZ90

胡桃「あ、食いついた」



洋榎「あー、聞いたことある気がする、ていうか読んだわそれ」



洋榎「久が持ってきてみんなで回した本やんな」



春「そう」



春「クロシロは、かわいそうだったけど」

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:30:24.51 ID:AAh76SZ90

胡桃「クロシロ?」



春「チイチイとパキが屋上で遊んでいるときに」



春「邪魔をしに来た、その地域のボス猫」



洋榎「チイチイもパキも猫やったっけ?」



春「うん」



春「チイチイはすぐ隅っこに隠れちゃったんだけど」

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:30:58.64 ID:AAh76SZ90

春「パキは果敢にクロシロと戦おうとした」



春「結局パキとクロシロは引き分けに終わって」



春「チイチイはしばらく出てこなかった」



春「でもそれぞれの飼い主は、それぞれ猫の態度を受け入れる」



春「チイチイはかわいい戦わなくていいんだよね、とか」



春「よくがんばったぞパキ、お前は俺の誇りだ、とか」


20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:31:40.65 ID:AAh76SZ90

春「細部は正しくないかもしれないけど、そのシーンが好き」



胡桃「・・・」



洋榎「・・・で?」



春「ん?」



洋榎「クロシロはどうなるん?」



春「あ、クロシロはね、しばらくして病気になるの」


21VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:32:36.34 ID:AAh76SZ90

春「しかも、アパートの大家さんから猫エイズだって断定される」



春「おばさんの言うことだから、あてにならないけど」



春「そして毎日アパートの階段の踊り場の真ん中に座っては」



春「うんちを残して去っていく」



胡桃「う・・・」



春「?」



胡桃「いやいいよ、続けて」

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)2012/11/09(金) 12:33:03.72 ID:AAh76SZ90

春「猫の飼い主たち、つまりアパートの住人たちは」



春「交代でそのうんちを片付ける」



春「うんちをビニール袋に入れて、その後に消毒液をまいて、拭きとる」



春「座っているときには、目の前にミルクをおいてあげる」



春「だけどミルクはほとんど減らない」



春「クロシロはプライドが高いから」


23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:33:31.97 ID:AAh76SZ90

胡桃「えーと、どうして獣医に連れていかなかったんだろう」



春「わかんない、そのほうがクロシロも結局楽だったかもしれない、でも」



春「みんながクロシロのプライドを尊重したっていうのもあるし」



春「ただ単に面倒くさかったのかも」


24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:34:04.96 ID:AAh76SZ90

春「それでも、クロシロは病気を克服する」



春「しかし、もう以前のクロシロではなくなってしまった」



春「他の猫に暴力を振るうこともなくなった」



春「でも道で見かけても、フン、て感じでしっぽを立てて去っていく」



春「・・・プライドは前と変わらないの」



洋榎「・・・あー、ステマもここまでやると清々しいな」


25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:34:33.12 ID:AAh76SZ90

胡桃「なんかまた読みたくなったな、いま誰が本持ってるんだっけ」



洋榎「久ちゃうか?」



洋榎「でもな、春」



春「?」



洋榎「女子高生が不用意に『うんち』とか言うべきやないで」



胡桃「ちょっとぎょっとしたよー」


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:35:16.88 ID:AAh76SZ90

春「でも、誰でもするものでしょう」ニコ



洋榎&胡桃「・・・」



春「?」



洋榎「今ちょっとドキッとしてもうた」



胡桃「うん私も・・・」



春「・・・うふふふ、二人ともおかしい」クスクス



洋榎&胡桃(春の体から、ものすごい量の癒しオーラが・・・!)



久「見てきたわよー!」バーン


27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:35:42.59 ID:AAh76SZ90

春「おかえり」



洋榎「久・・・」



久「まさにあの子だったわよー、福路さんていうのね」



久「みんなで焼きおにぎり作ってたわ」



胡桃「台無しだわ・・・」



久「何の話?ほら、焼きおにぎり余ってるっていうからみんなの分もらって来ちゃった」



久「はい、どうぞー」



洋榎「あ、おおきに」


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:36:28.81 ID:AAh76SZ90

胡桃「いただきまーす」



春「いただきます」



洋榎「で、どうするつもりなんや」モグモグ



久「どうするって、無害なのはよく分かったから放置だけど」モグモグ



久「むしろみんなに慕われてたわよ」モグ



胡桃「久がストーカーをいじめて逆に訴えられるんじゃないかって」モグモグ



胡桃「みんなで話してたんだよ」モグモグ



久「私が?」


29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:36:56.96 ID:AAh76SZ90



久「訴訟なら負けないわよ」モグモグ



胡桃「そうじゃなくてー」モグモグ



洋榎「間違っても変にいじったらあかんよ、一応ストーカーやし」モグモグ



春「・・・」モグモグ



久「大丈夫」ゴクン



久「そのうち向こうが飽きるでしょ」


30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:37:35.85 ID:AAh76SZ90

胡桃(あ、私ストーカー、ていうか福路さんに同情してる)モグモグ



洋榎(こいつが何もしいひんとは思えへんけど)モグモグ



春「おいしい」モグモグ



久「なんかね、タレから作ってたわよ」



久「うーん、よくやるわねー」



胡桃「よくやるわねー、じゃないでしょ」



久「違うわよ、ストーキング行為のほう」


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:38:34.48 ID:AAh76SZ90

久「何で人の後をつけるのか、何が楽しいのか。意味不明」



洋榎「久に好意を抱いてるからに決まっとるやないか」



久「だとしたら他にやることあるでしょ」



久「別に後つけなくたっていいじゃない」



洋榎「確かにせやけども」



久「じゃ、今日は解散で」



洋榎&胡桃&春「ええー」


32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:39:07.27 ID:AAh76SZ90

久「明日頑張りましょ、明日」



久「今日はお仕事って気分じゃないわー、どうせ今日締め切りの何かもないでしょ?」



春「うん」



久「じゃ、解散で。お疲れ様ー」バタン



その日、福路さんはつけてこなかった。

調理部の片付けとかがあったんだろう。

調理室からは校門が見える。きっと私が帰るのに気づいてたはずだ。



私は彼女の好意が、彼女の部活よりも優先順位が低いことにちょっとほっとして、

ほんのちょっと傷ついた。


33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:40:32.90 ID:AAh76SZ90

次の日から彼女の『ストーキング』は再開された。



私は毎日、違う帰り道を通って駅まで歩いた。

洋榎や胡桃の警告はわかっていたけど、

どのくらいの距離で諦めるんだろう、という好奇心に抗えなかった。



そもそも、彼女はつけてくるのは駅までだったし、

それくらい別にいいでしょって。



私は大通りを外れ、住宅街にわけいり、小さな公園をいくつも横断した。

歩いている私と彼女を見た人は、私が彼女の何かに怒っていて、彼女が許しを乞おうと、

すごすご付いてきてるように見えたかもしれない。


34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:41:03.80 ID:AAh76SZ90

どれだけ歩いても彼女は諦めなかった。



そして、私と福路さんはついに、

車の行き交う、傾斜のきつく、距離の長いことで有名な、

学校の近くの峠を踏破した。



そこからまた何キロか歩いて、

3駅(家から遠い方に)離れた駅から電車に乗って帰った。

(もちろん福路さんはそこまでも付いてきた)



バカじゃないかと言われたら、はいそうですとしか言いようがない。

しかし私よりもバカがいる。福路さんだ。

そこまで私が好きなのか。これほどにもあなたを試す、私が。


35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:41:46.06 ID:AAh76SZ90

次の日、私のふくらはぎはパンパンに硬直し、歩くことができなくなった。

朝、学校に休むことを連絡して、体の疲れを癒すためにまたすぐ寝た。



起きたら窓の外は暗かった。脚の疲労はだいぶ取れていて、

注意深く歩けば一階の食卓まで降りることができた。



そこで夕食を食べた後入浴して、階上の自分の部屋に戻り、ふと窓の外を見た瞬間、

私は反射的にカーテンを閉じてしまった。



福路さんが、私の家の前に立っていた。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:42:25.39 ID:AAh76SZ90

パニックだった。

何故家バレした?付いてくるのは駅までではなかったのか?

これまでも家まで付いてきていた?ならばどうして気づかなかった?

自分にとっての前提が完璧に裏切られたときの感覚。

お盆の上に乗っていたビー玉が、ぼろぼろこぼれていくような感じ。



カーテンを閉めても入り込んでくる強い混乱の中、体が勝手にどこかに電話をかけていた。

誰でもいい助けて。



洋榎『もしもし愛宕ですー』


37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:42:56.88 ID:AAh76SZ90

久「洋榎!」



洋榎『おー、久、ディスイズ洋榎ちゃんやで』



洋榎『脚大丈夫なんか?』



久「ああ、うんおかげさまで、明日は学校に行けるわ」



洋榎『それは何よりやな、で、どないしたん』



久「洋榎、今ね、私の家の」



洋榎『あ、ちょっと待って』


38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:43:23.04 ID:AAh76SZ90

洋榎『そうや、生徒会長の竹井久さんやで』



久「・・・」



洋榎『えー、お前それ今やないとあかんの?』



久「・・・」



洋榎『しゃーないなあ』



久「・・・」



洋榎『ごめん久』


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:44:16.31 ID:AAh76SZ90

久「え、何?」



洋榎『うちの妹がな、久のファンなんやて』



久「はあ」



洋榎『ちょっとでいいから話したってくれへん?』



久「い、いいけど」



洋榎『はい、じゃあ替わりますー』



絹恵『もしもし!』


40VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:44:59.70 ID:AAh76SZ90

久「もしもし」



絹恵『きゃー!本物やー!』



久「ええ、まあ」



絹恵『あ、ごめんなさい騒いじゃって』



絹恵『私、愛宕洋榎の妹の、愛宕絹恵いいます』



久「はじめまして、絹恵さん。竹井久です」



絹恵『私、サッカー部でゴールキーパーやらせてもらってます』



久「そうなの」



絹恵『はい、今度試合観に来てくださいー!』


41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:45:37.35 ID:AAh76SZ90

久「わかったわ、都合が合えばだけど」



絹恵『うわーまじっすか!?やったー!』



洋榎『はいはいしゅーりょー』



絹恵『えー、まだ話したいー』



洋榎『絹恵にはおねーちゃんがおるやろ?』



絹恵『むー・・・』


42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:46:19.04 ID:AAh76SZ90

絹恵『竹井さん、今日ホントお話できて嬉しかったです』



久「私もよ」



絹恵『おねーちゃんはあんな感じですけど、根はいい人なんで仲ようしたって』



洋榎『はいはい完全終了ー電話没収ー、ほらあっちいき』



絹恵『えー、ほなおやすみなさーい』



久「おやすみ」



洋榎『おやすみ、言うてはるで』



絹恵『ホーゥ!』


43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:46:55.55 ID:AAh76SZ90

洋榎『ホーゥ!てなんや・・・ちょい移動するわ』



久「うん」



洋榎『・・・で、どうかしたん?』



久「ううん、別に何も」



洋榎『何も無いんかい』



久「洋榎の方こそ何もないの?」


44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:47:34.12 ID:AAh76SZ90

洋榎『ん、うーんとな、一言で言うとな』



洋榎『みんな心配しとるからはよ帰ってきー、ってとこか』



久「あー、はい、ごめんね」



洋榎『あとストーカーいじめんのもほどほどにしーやー、ってのも』



久「二言じゃない」



洋榎『反撃で自滅するなんてアホやなー、で三言や』



久「あはは」


45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:48:10.67 ID:AAh76SZ90

洋榎『こんなとこかなー』



久「ありがと」



洋榎『・・・何やかしこまって』



久「ううん何でもない、じゃあおやすみ」



洋榎『ほい、おやすみさんさんさんころ』



久「」プツッ



久(何かほっとした・・・)



久(・・・何かほっとしたら)



久(眠くなってきた・・・)スヤァ


46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:48:40.36 ID:AAh76SZ90

チュンチュン



久(・・・さむっ)



久(・・・7時21分・・・よく寝たなー)



空気と陽の光を入れようと、カーテンと窓を開けたら、



久「うわー」



外には雪が積もってた。


47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:49:19.59 ID:AAh76SZ90

久(雪とか何年ぶりだろ・・・)



久「あっ」



久(さすがにもう帰ってるでしょ・・・)キョロキョロ



久(・・・凍死体も見当たらないわね)



久「うん、OKOK」


48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:49:53.75 ID:AAh76SZ90

洋榎「で、凍死しとったらどないするつもりやったん」



久「通報」



胡桃「埋めて隠すとかじゃなくて?」



久「もー、からかわないでよー」



久「本当に背筋が凍ったんだから」



春「でも、今日も来るかも」



久「大丈夫、同じ手は食わないわ」


49VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:50:26.39 ID:AAh76SZ90

久「・・・小腹空いたわね」



春「・・・」スッ



久「あ、ありがとう」ポリポリ



久「でもそういえば今日は調理部の実習だったかしら」



洋榎「いや、でも今日行くのはやめといたほうがええんちゃう?」



胡桃「お菓子なら買い置きがあるよ!」



久「っていうかー」



久「福路さんにちょっと会いたいかな」

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:51:05.43 ID:AAh76SZ90

洋榎「・・・え、なんでなんで?」



久「なんか今日会わないとダメな気がする」



胡桃「ふーん・・・」



久「じゃ、行ってくるわ」



洋榎「ほないってらっしゃい」



胡桃「気をつけてー」



バタン



春「・・・」ポリポリ


51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:51:42.58 ID:AAh76SZ90

洋榎&胡桃&春「・・・」



洋榎「バレるよな」



胡桃「ていうか、完璧気づいてたよね・・・」



春「会長が戻る前に逃げよう」



洋榎「それ採用」



胡桃「後の事はおいおい」



ガチャ



久「ただいまー」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:52:10.21 ID:AAh76SZ90

洋榎&胡桃「ひっ」



春「・・・」ポリポリ



洋榎「おかえりー、早かったな・・・」



胡桃「福路さんいた?」



久「風邪で休みだって」



胡桃「あ、そう・・・」



久「あ、洋榎」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:52:52.47 ID:AAh76SZ90

洋榎「なんでございましょう・・・」ビクビク



胡桃「・・・」



春「・・・」ポリポリ



久「・・・あのねぇ、みんな」



久「もう少しごまかすってことを覚えたら?」



はい、私の住所を福路さんに教えたのは、こいつらでした。

(洋榎と電話したときに、洋榎がなんで私が福路さんで遊んでることを知っていたのか、

そこに疑問を持たなかったのは、まさに混乱のもたらした注意力の失調と言えるでしょう)



胡桃「だって痛々しかったんだもん、なんか足引きずって歩いてるから!」

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:53:34.00 ID:AAh76SZ90

胡桃と福路さんは同じクラス。別に友達ではなかったけれど、

私が休んだ日に福路さんが足を引きずって歩いてるのを見て、

もしかしたら、と思って声をかけたそうです。



そして彼女を生徒会室に呼び出し、



洋榎「久の悪行、全て聞いたでー」



洋榎「涙なしには聞かれへんかったわ」



胡桃「久がこんな事しなければよかったんだよ」



春「会長が悪い」ポリポリ



久「OK、三万歩譲ってそれは認めましょう」


55VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:54:17.84 ID:AAh76SZ90

久「でも何で住所教えたの」



胡桃「お見舞いに行きたかったんだって」



洋榎「その時、うちら完全に福路さんサイドやったからさー」



洋榎「フツーにお見舞いに行くもんやと思ててん」



そして彼女は私の家の前まで来た。

しかし家の中に入ろうとはしなかった。もしくはできなかった。



私はその様子を窓から見た。


56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:55:19.66 ID:AAh76SZ90

久「はぁ・・・」



久(体の力が抜けていく)



春「でも」



春「今一番辛いのは福路さんだと思う」



胡桃「たしかに」



洋榎「そうやそうや!」



春「やったことはよろしくないにしても」



久「はいはい、わかってますよ」



久「福路さんに謝って、それからあなた達に制裁ね」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:55:59.92 ID:AAh76SZ90

洋榎&胡桃「制裁!?」



久「私がどんだけ怖い思いしたと思ってんの!?」



洋榎「やつあたりや・・・」



春「・・・」ポリポリ



久「3人には割り勘で、なにか私に高いものを買ってもらいます」



洋榎&胡桃「えーっ!」



春「予算は一人2500円くらいで、どうかひとつ」



何を買ってもらおうか考えながら、

私は調理部の子に聞いた住所を元に、福路さんの家に向かった。

脚を痛め、さらに風邪までひいてしまった彼女のもとへ。


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:56:51.94 ID:AAh76SZ90

脚を痛め、さらに風邪までひいてしまって、ベッドに寝ている彼女は、

誤解を恐れず言えば、これまで出会ってきたどの女の子よりも可愛かった。

こんなに可愛い人を私は恐れていたなんて、と思うと、少し恥ずかしい気持ちにすらなった。



美穂子「ごめんなさい・・・」



久「私こそ、試すようなことしてごめんね」



互いに謝って、



久「風邪はどう?脚も痛いんじゃないの?」



美穂子「熱は下がったし、もう普通に歩けます」



話をして、



美穂子「・・・」



久「・・・」



話が途切れて、

無言で見つめ合っても、全然苦じゃなかった。

そこで私の口から出てきたのは、こんな言葉だった。



久「あなたの目・・・」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:57:52.91 ID:AAh76SZ90

美穂子「!」



その時、福路さんの右目、普段は閉じているその目は、開いていた。

福路さんは慌てて、右目を手で覆って隠してあっちを向いた。



久「きれいね」



美穂子「・・・」



そう言うと、福路さんは戸惑ったような、驚いたような、

そんな事はじめて言われたというような顔をして、

私の方を向いた。



美穂子「私の、目が・・・?」



久「うん」


60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:58:30.02 ID:AAh76SZ90

久「知ってる?青いサファイアは赤いルビーと、同じ素材の宝石なのよ」



美穂子「・・・それって、どういう意味ですか?」



久「右目を開けてたほうが、あなたはずっと素敵ってことよ」



久「もう隠さなくていいの。すべて私に見せて」



美穂子「・・・わたし・・・わたし、竹井さんを傷つけてしまった」



久「うん」


61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:59:10.48 ID:AAh76SZ90

美穂子「自分の気持ちを隠して、自分の右目を隠して」



美穂子「・・・それでも竹井さんに近づきたかったの」



久「うん」



福路さんは泣きながら話した。

福路さんの目は、サファイアでも、ましてルビーでもなかった。

この目でいつも、私の背中を見ていたんだ。



美穂子「私、竹井さんのことが好き」


62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 12:59:51.59 ID:AAh76SZ90

久「私のことを好きになってくれてありがとう」



久「わたしも好きよ」



美穂子のきれいな目からあふれた、きれいな涙でまみれた、きれいな顔を、

私はそっと自分の胸にだきよせた。


63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:00:35.61 ID:AAh76SZ90

洋榎「なんか納得でけへんなー」



久「どこがいけないのよ」ペラリ



洋榎「お見舞いで病人口説くんてどないやねん、っていうんと、んーと」



胡桃「元『ストーカー』と付き合える神経?」



洋榎「それや」



久「かわいけりゃいいのよ、結局」ペラリ



春「今の言葉福路さんに聞かせてあげたい」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:01:03.10 ID:AAh76SZ90

久「あ、料理も上手なのよ」ペラリ



洋榎「別にフォローせんでええよ・・・何読んでんの?」



久「カタログ」



洋榎「何の?」



久「靴」



胡桃「もしかして・・・」


65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:01:35.54 ID:AAh76SZ90

久「あ、これがいい。みんな、これ買って」



洋榎「どれ?・・・さんまんよんせん・・・お前何考えとんねん」



胡桃「ていうか、そもそも私たち悪くないし」



春「・・・」ポリポリ



洋榎「お父さんのサンダルでも履いとけや」



久「えー」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:02:23.77 ID:AAh76SZ90

久「美穂子と出かけるのに新しい靴がほしいんだけど」



胡桃「美穂子?ああ、福路さんね」



洋榎「ますます買われへんわ」



春「どこ行くの?」



久「公園」



久「公園でお弁当」

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:03:00.21 ID:AAh76SZ90

日曜日、私と美穂子は、私たちの歩いたすべての小さな公園を合わせても、

まだ足りないくらい大きな公園で少し散歩した後、

噴水のそばのベンチに座ってお弁当を開いた。



久「すごい!」



美穂子「そんな、何を入れようか迷ったんですが」



美穂子「結局普通の献立になっちゃいました」



久「いやいや、すっごいおいしそう!」


68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:03:41.25 ID:AAh76SZ90

久「早速だけど、このピーマンの肉詰め?食べていい?」



美穂子「あっ、いいですけど・・・」



久「?」



美穂子「あーん、させて下さい・・・」////



久(・・・そう来たかー)////



久「うん、いいよ」

69VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:04:26.21 ID:AAh76SZ90

美穂子「はいっ、じゃあ、あーんしてください」



久「あーん」



美穂子「はい、どうぞ」



久「」パクリ



久「んー」



美穂子「どうですか・・・」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:05:06.84 ID:AAh76SZ90

久「おいしい!」



美穂子「本当ですか?」



久(けど・・・)



久(髪の毛入ってる・・・?)ゴクン



久「さすが調理部の部長さんね」



美穂子「恐縮です・・・」

71VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/09(金) 13:05:35.36 ID:AAh76SZ90

久(髪の毛がまだ口の中に残ってる・・・)モゴモゴ



久(・・・)ゴクン



久「今度はその玉子焼きちょうだい」



美穂子「はい!」



久(ああ私のこの予感が)アーン



久(ただの予感で終わりますように)パクリ



カン

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]:2012/11/09(金) 13:19:27.75 ID:AAh76SZ90

以上ですー。甘甘部キャプ期待した人には本当にごめんね

書いてる時には甘甘なつもりだったんだけど、

全然甘甘じゃないことに気づいたのは最後の1レスを投下する前でした。マジすいませんでした。

楽しんでもらえたら幸いです。

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/11/09(金) 13:50:29.22 ID:52VwNtcJo

(´・ω・`)・ω・`) キャー

/  つ⊂  \  コワーイ

74VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]:2012/11/09(金) 15:44:07.81 ID:AAh76SZ90

>>73

こわかったねーごめんねー




87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:47:03.52 ID:zNWX8pk80

洋榎「いやー、髪の毛入ってたんがピーマンの肉詰めだけでよかったなー」



久「はい・・・」



胡桃「でも不気味だし、びっくりするよねー」



久「うん・・・」



春「・・・」ポリポリ


88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:47:34.22 ID:zNWX8pk80

洋榎「や、でもわからへんでー、液体が入っとったかもしれん」



胡桃「ふふー、それが『何』液かが問題だよね」



胡桃「一番簡単なのは唾液かな?」



春「ちょっとがんばれば血液」



洋榎「ちょっとって何やねんw」


89VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:48:08.00 ID:zNWX8pk80

胡桃「血液は色や味でバレるでしょー」



春「こう量を調節して」



洋榎「その二の腕をもんでるのは血出してんの?」



春「こう」



洋榎「何で二の腕やねん」


90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:48:43.81 ID:zNWX8pk80

春「痛くなさそう」



胡桃「まあ、そこまではいいよ、耐えられる。問題は・・・」



胡桃&洋榎「・・・」



春「・・・」ポリポリ



胡桃&洋榎「ぶっははははwwwww」



春「」クスクス


91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:49:17.24 ID:zNWX8pk80

洋榎「場合によっては血も混じるしなwww」



胡桃「洋榎下品ーwwww」



洋榎「胡桃がふったんやんけーww」



春「毛も落ちてくる」クスクス



胡桃「春も何言ってんのwwww」



久「私そんな事してません!」


92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:49:46.85 ID:zNWX8pk80

春「!・・・」



胡桃「・・・何?」



久「だから、そんな事してません」ポロポロ



洋榎「・・・あー、悪かった久、ちょっと想像が行き過ぎたわ」



久「本人が言ってるんです!あっ・・・」



胡桃「・・・本人?」



洋榎「・・・いや、久やないの?お前」


93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:50:25.04 ID:zNWX8pk80

久「・・・わたし、福路です。久と中身が入れ替わってるんです!」



胡桃「いや落ち着いて、中身が入れ替わるわけ無いじゃん人間の」



洋榎「黄色い救急車って何番やったっけ」



春「それ都市伝説」



久「久を連れてきてください!二人で事情を説明します・・・」



胡桃「仮にそうだとして聞くけど、久は今どこにいるの?」


94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:51:04.31 ID:zNWX8pk80

久「今日は調理部の実習で、調理室にいるはずです」



洋榎「・・・まあ確認してくるわ」



その後、私の体に入った久は、

調理室でマグロをさばこうとしていたところを愛宕さんに保護されました。

(ちなみに、その日作る予定だったのはヌードルをそえたウィンナシュニッツェルでした)



美穂子@久「ここからは、久の体に入った私のことをこんなふうに」



久@美穂子「美穂子に入った私はこんなふうに書くわよー」



洋榎「どうでもええそんなこと!」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:51:44.69 ID:zNWX8pk80

胡桃「福路さんも含めてなんだけど・・・」



胡桃「何してんの?」



久@美穂子「マグロさばいてた」



美穂子@久「さばけるの?」



久@美穂子「インターネットで動画見たら簡単そうだったから」



美穂子@久「甘いわ。でも、マグロはどこで買い付けたの?」


96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:52:29.89 ID:zNWX8pk80

久@美穂子「フィッシャー部の冷凍庫に余ってたのをもらってきたわ」



美穂子@久「まあ!フィッシャー部がそんなにすごいなんて知らなかったわ」



久@美穂子「遠洋漁業合宿で釣り上げたんですって、部活の域を超えてるわよね」



美穂子@久「今度調理部にも貸してもらえないか聞いてみよう」



久@美穂子「マグロならまだゴロゴロしてるわよー」



胡桃「はい一旦ストップ」



春「・・・」ポリポリ



胡桃「これすぐに戻るの?だったらさっさと戻って欲しいんですけど」


97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:53:05.01 ID:zNWX8pk80

元に戻すのは簡単だ。

同じおまじないを、もう一度二人にかければいい。



私の体を借りた久は、久の体を借りた私のポケットから、

おまじないに使う薬を取り出した。



洋榎「何やその粉!?」



久@美穂子「おまじないに使うのよ」


98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:53:50.54 ID:zNWX8pk80

そして久は、私を抱き寄せて、昨日の夕方に使ったのと、同じおまじないをかけた。

心を入れ替えるとき、心はすれ違う。

その時の久の心には、さみしさがあった気がした。

私もそうだった。それは昨日の夕方に入れ替わったときと、全く逆の気持ち。



愛する人そのものになれた時の気持ちと、全く逆の気持ち。



久「はい、いっちょあがり。戻ったから『@』が無くなったわよ」



美穂子(戻っちゃった・・・)



胡桃「・・・私たち、別室に移動しといたほうが良かった気がする」


99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:54:32.71 ID:zNWX8pk80

洋榎「・・・」



春「・・・」ポリポリ



久「んー、なんか懐かしい感じー」



美穂子「はい、そうですね」



洋榎「これおまじないの域に入るんか?」



久「厳密には脳化学と精神医学の応用ね、たぶん」



久「まあ、おまじないの本に書いてあったんだから、おまじないってことにしときましょ」


100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:55:02.95 ID:zNWX8pk80

私の部屋にあったその本(『おまじない全集』荒川書房版)を見つけた久は、

それをパラパラめくった後、

材料は簡単に調達できるから、私たち入れ替わってみない、と誘った。



私は断れなかった。精神は私のまま、久の体になれるという誘惑に絶えられなかった。

でもそれよりも、久が私の体になりたいと思ってくれてることが嬉しかった。



美穂子「あっ」



久「何?」



美穂子「実習!」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:55:43.14 ID:zNWX8pk80

洋榎「あー、そういえばフォロー行かなと思てたところやけど」



美穂子「はやく戻らないと」



久「そうね。洋榎、美穂子を送ってあげて」



久「美穂子、実習終わったら電話してね」



美穂子「はい、じゃあまた後で」


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:56:19.74 ID:zNWX8pk80

洋榎「ほないってきますー」



バタン



久「ふぅ・・・」



胡桃「・・・ところで、さっきの粉ってどこで買ってきたの?」



久「あー、大した薬じゃないわよ、処方箋さえあれば誰でも買えるわ」



胡桃「その処方箋はどうやって」



久「トップシークレット」



春「・・・」ポリポリ

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:56:48.07 ID:zNWX8pk80

洋榎「・・・さっきはごめんなあ」



美穂子「・・・えっ、ああ、大丈夫です気にしてません・・・」



美穂子「変な噂されるの、慣れてるので・・・」



洋榎「いやいやいや、こう言うのは言う方が悪いねん」



洋榎「それに話題出したん、私やし」



美穂子「はい・・・」

104VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:57:21.31 ID:zNWX8pk80

洋榎「胡桃も春も調子乗っただけで、みんなあんな事本当には思ってないし」



美穂子「はい・・・」



洋榎「それだけはわかっといてな、あと」



美穂子「?」

105VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:58:09.22 ID:zNWX8pk80

美穂子「久!!!」



私は実習が終わった後、電話もせずに

(だって、あんなに怒ってたら電話のかけ方も忘れちゃってそうだし、

もちろん久に教えてもらったんですけど)

生徒会室から久を校舎の裏まで引っ張ってきた。



久「み、美穂子~」



久は私の体に入ってる間、ずっと両目を開いていたらしい。

(あんな事言われてたからその時は怒りで気付かなかったとでもいうの私)



洋榎「なんやオッドアイやってんな、ずっと右目閉じてるから何やろって思っててんけど」



洋榎「その中空洞にでもなっとるんかと思っとったわ、開いてるほうがずっとええで」


106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:59:06.81 ID:zNWX8pk80

その場はどうにかお礼を言ったが、

調理室に戻った後に何人かの部員たちが、

なんでまた右目を閉じてしまったんですかとか、

オッドアイだったんですねかっこいい私もカラコン入れちゃおっかなとか、

せっかくきれいなんだからずっと開けといてくださいよ

閉じてるほうがおかしいっすよぶっちゃけとか言ってきたので、

ウィンナシュニッツェルは真っ黒になり、

マグロをさばく包丁にも力が入ってしまった。



美穂子「なんてことを・・・絶対許しません!」


107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 15:59:46.49 ID:zNWX8pk80

久「まままま、落ち着いて、あ、帰りにはあそこのたいやき屋さん寄らない?」



美穂子「ごまかさないでください!もう・・・ずっと隠してきたのに・・・」



久「でももう、隠さなくていいって分かったでしょ?」



美穂子「だけど・・・」



美穂子(右目のことを明かしたからって、許されるわけじゃない)



久「ん、これのこと?」


108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 16:00:35.51 ID:zNWX8pk80

美穂子「それは・・・!?」



その封筒は、私があの雪の夜に入れた、

あの『おまじない全集』を見ながら作った、



久「『100%相手を落とすラブレター』?」



久「残念だったわね、あの封筒は誰にも開けられなかった」



久「ダイレクトメールにまぎれてゴミ箱に捨てられてたわ」



久「仮にうちの家族が開けたらどうするつもりだったの?」



美穂子「だから、私、久!」

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 16:02:17.89 ID:zNWX8pk80

久「はい」



美穂子「・・・えっ」



久はその封筒を私に手渡した。

そしてもう一個、



久「じゃーん」



くしゃくしゃになった封筒を取り出して



久「こっちが、ゴミ箱に捨てられてた、美穂子から私へのラブレター」



久「そして、そっちは」



美穂子「久から、私へ?」



久「正解!」

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 16:02:56.98 ID:zNWX8pk80

久「なんだかよくわかんないけど、美穂子は私が好きなのよね?」



美穂子「はい・・・」



久「私もなんだかよくわかんないけど、美穂子が好きみたい、やっぱり」



美穂子「・・・もしかして」


111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2012/11/11(日) 16:03:34.04 ID:zNWX8pk80

久「二人でこの手紙を開けましょう」



美穂子「・・・はい!」



久「せーのでいくわよ、せーの!」



私たちは同時に封筒を開いた。

心はすぐに甘く溶けていった。

わたしの目の前の久にも、同じ現象が起こっていたはずだ。

おまじないが理性をすべて溶かしきってしまう直前、

この校舎の裏に永遠に誰も来なければいいなと思った。



もいっこカン


112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga sage]:2012/11/11(日) 16:05:45.86 ID:zNWX8pk80

そんなおまじないの本ねーよ、というツッコミがありそうですが

大丈夫、荒川書房の本ですよーぅ

イチャイチャしてる部キャプが書けて満足です////

関連記事
スポンサーサイト