ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

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ブギーポップ「村上春樹……?」

            http://blog-imgs-56.fc2.com/s/s/i/ssipaimatome/Boogiepop.jpg
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 09:36:10 ID:9BJ7Wg6V0

僕は、何でもない場所にいた

いや、"そこ"は、何でもあるし、何でもない場所だった

"そこ"には、意志しかなかったし、言葉しかなかった

だから、敢えて言葉を発する必要はなかった

そこには、時間と言うべき時間も無かったし、空間と言うべき空間も無かった

だけど、やはり、まだ"そこ"は完全ではない

だから、もう少しだけ、時間と、距離を埋めることが必要だった

『後少しだ』と、僕は呟く

後少しで、"それ"に触れる




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 09:41:24 ID:9BJ7Wg6V0

末真和子は一冊の文庫本を手にしていた。

駅前のカフェで、一人の少女と待ち合わせをしているのである。

その本のタイトルには『VSイマジネーター』とある

彼女は一つ、溜息を吐いた。

末真「はぁーっ、やってらんないわね」

そう言いながら、彼女は文庫本の一節をなぞる。

そこには、こう書かれている。

『人生というものにもし意味があるとすれば、"それ"に反抗するということ以外に、意味などない――』

末真「反抗って言ってもねえ……、受験生にできることなんか、たかが知れてるわよねえ」


6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 09:47:29 ID:9BJ7Wg6V0

やりきれない表情で、そう呟いた

そして、その後に、彼女はカフェから通りの方を眺める

と、一人の少女の姿を確認した

末真は少しばかり、怒ったような表情をして、その少女を見つめる

カランカラン――、と、来店を告げる鐘が店内に鳴り響いた。

宮下「ごーめんっ、末真! 色々と面倒ごとがあってさあ」

末真「ごめんで済んだら警察はいらないわよ

ま、いいわ。とりあえず出ましょうか」

宮下「うん……だから、ごめんって」

少女はアーモンドのような瞳を、済まなさそうに伏せて言った


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 09:51:32 ID:9BJ7Wg6V0

少女の名前は宮下藤花。

末真和子と同じ深陽学園に通う、高校生である。

二人は、同じ塾に通う学生でもある為、今日はその塾に模試を受けにいくために、待ち合わせをしていたのだ。

談笑もほどほどに、二人がそのカフェ『トリスタン』を出たところ、ぴたり、と宮下藤花の足が停まる

その突然の行動に、末真も不審を覚え、立ち止まった

末真「どうしたのよ藤花?」

宮下藤花は、さきほどの愛嬌のある表情とはかけ離れた、精悍な瞳で、町行く人々の中の、一点を見つめていた


8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 09:57:59 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「アレは……」

宮下藤花の見つめる一点に、末真の視線もまた、自然と吸い寄せられる

そこには、一人の、強いて挙げられるような特徴の少ない男が、ただ道を歩いていた

髪を短く切っており、何かスポーツをやっているのか、肌は浅黒く日焼けしている

また、ピンと背筋を伸ばした姿勢で、やや颯爽と道を歩いていた

末真は、その男を見るなり、何やら自分があの男のことを知っているのではないかと、自問を始める

どこかで、あるいは何かの雑誌で、あの男の写真を見たことがあるような気がしたのだ――

しかし、結局彼女はその記憶の在り処を確かめることができないで、かぶりを振った

末真「ねえ藤花、あの男の人がどうかしたの?」

末真がそう問いかけると、藤花はにわかに振り返って、微笑んだ

宮下「いや、以前にちょっと話したことがある程度の人

何かの縁だし、ちょっと話してくるから、塾には先に行っといて!」


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:01:52 ID:9BJ7Wg6V0

宮下藤花は、そう言うなり末真の前から走り出してしまう

末真「ちょ、藤花ぁっ!?」

そして、彼女が呼びかける暇がありさえすれ、藤花はあっという間に人ごみの中へと消えてしまった

末真「……ったく、仕方ないわね」

末真の藤花との付き合いは短くないので、彼女はこういう事態を何度となく経験していた

その経験が、藤花は間もなく――とは言え些かの遅刻を伴って――塾で合流することになるだろう、と告げていた

そういうわけなので、末真はやや気後れした様子ではありつつも、その場を後にした


12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:22:45 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「――見失ったか」

ここは、先程のカフェ『トリスタン』からほど近い路地裏である

宮下「先程までは、しっかり捉えられていたはずの反応が、今は存在しない。

コレはどういうことだ? 不完全な個体が現れたということなのか、それとも――」

宮下藤花は、路地に広がるちょっとした空間に立ちつくして、それから空を仰いだ

宮下「『イマジネーター』……しかも水乃星透子とはまた別の、新手だというのか……?」

そう呟いた。

......
......
......

そして、ここはその路地裏から僅かな距離を隔てた、市街道路

そこを、一人の男が歩いている

特徴の無い、肌が浅黒く、そして、髪を短く切った男だ

その男が、ふと足を停める

動き続ける雑踏の中で、足を停めた


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:25:51 ID:9BJ7Wg6V0

その男の不自然な挙動に、幾らかの人が怪訝そうな視線を送るも、しかしその男は全くそれを意に介していないようであった

そして、彼は空を仰ぐ

季節は夏の盛りで、水蒸気によって霞んだ空には、一筋の飛行機雲と、そして巨大な入道雲の姿が覗えた

彼はその様々な夏のモチーフを、眺めるでもなく眺め、言った

???「――システム、か」

ぽつりと放たれた呟きは、喧騒の中に消えていった


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:28:01 ID:9BJ7Wg6V0

続きを考えていないので、とりあえず中断

浮かび次第書く


17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:50:52 ID:9BJ7Wg6V0

――結局のところ、それは曖昧な話だった

掴みどころのないどころか、存在しているのかどうかさえ分からないところの、曖昧な話だったのだ


18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:53:05 ID:9BJ7Wg6V0

僕は作家だった、しかし、それは特別な意味を持たなかった

というのも、僕にはその事実が、個人の意志によって行われたのか、それとも、何らかの大きな流れによって行われたのかを、区別することができなかったからだ

だから、僕には、この話が"成功しているのか、失敗しているのか"という区別をつけることも、できない

結局のところ、これは、そういう話だ


19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:55:34 ID:9BJ7Wg6V0

自由という言葉の意味について考えたことがあるだろうか?

自由とは、一般的に言うと、制御下から抜け出すことだ

しかし、僕が思うに、それは必ずしも正しくない

自由とは、思うに、制御する者との対立によって、初めて生みだされるものだからだ

たとえば、ある個人が、その制御者に打克つことができたとして、その個人の意志が、今度は制御者になってしまうように

僕たちの自由は、制御者と、個人意志との間で揺れ動く、運動体なのだ


20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:57:32 ID:9BJ7Wg6V0

そして、物事はいつだって、運動体だ。二つの対立要素の間を揺れ動いていて、曖昧な姿しか把握され得ない

勿論、この話に関してもそれは例外ではなかった

重ねて言うが、この話は曖昧なのだ――


21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 10:59:33 ID:9BJ7Wg6V0

これは一つのシステムの話






そして、一つの個人意志の話だ


22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:01:41 ID:9BJ7Wg6V0

幕間はすぐに終わる

そして、再び幕は上がる


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:05:22 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「末真ぁ~っ……」

末真「ええい絡みつくな鬱陶しい」

そして、再び二人の少女たちの姿は、もとのカフェ『トリスタン』の中にあった

一人の少女の表情は、果てしなく憐憫を要求するものであり、そしてもう一人の表情は、果てしなくそれを拒絶するものだった

末真「結局あの人には追いつけなかった挙句、最初の科目のテストの時間を超過しちゃうなんて

私は未だに信じられないわよ」

宮下「そんなこと言ったって~……」

宮下藤花はがっくりと二人掛けのテーブルに突っ伏した。


25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:09:18 ID:9BJ7Wg6V0

塾で行われた模試が完全に終了し、末真和子が塾から電車で戻ってきたところ、駅のホームには宮下藤花の姿があったのだ

末真「あんたもう統一試験近いって言うのに、何をまたそんな余裕しゃくしゃくの行動しちゃってるワケ?」

宮下「別にやりたくてやったワケじゃないんだってば」

末真「何にしても信じらんないっての」

はあ、と二人は溜息を吐いた。

ぼんやりとした視線を上げて、お互いの表情を観察し合う

宮下「……まあ、終わってしまったことは仕方がない」

末真「自分で言うな自分で」

末真和子の突っ込みに、藤花は愛嬌たっぷりに笑ってみせた。

末真は、やれやれと、もう一度溜息を吐く。


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:13:06 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「末真はこれからどうすんの?」

そんな時、話題を転換させるべく藤花はぽつりと言う。

末真は依然渋い表情をしていたものの、いつまでもこんな状況を引きずっていても仕方がないと判断してか、藤花の問いに答えた。

末真「とりあえず帰る、で、明日は休日だから、ゆっくりする」

宮下「まあそうよね、普通そうよね……どうしよう、親になんて言い訳をすればいいのか分かんない」

末真「どうしようも無いわね、率直に言って」

宮下「末真ぁ~」

残酷な事実から抜け出せられないでいるのは、むしろ藤花の方であった


28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:16:31 ID:9BJ7Wg6V0

やれやれ……と、何度目かになる溜息を末真が吐いたところで、ある一人の人物に関する知識が浮かび上がってきた

末真「そういえばさ、藤花って、最近小説とか読む?」

宮下「へ? 小説?

ないない、そんな余裕ないし、それに、興味ある作家も今のところいないしねー」

ふむ、と末真は藤花の返答に頷く。

末真「いやさ、村上春樹っていう小説家知ってる?」

そして、その問いを繰り出した。

宮下「うーん、書店で名前を聞いたことはあるけど、別に読んだことないわ」

末真「やっぱそうか……ちぇっ、じゃあこの話無しね」

末真はそう言って、席を立ちあがろうとした。


29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:18:59 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「え、待って待ってよ!

その人のこと気になるし、何より今この私を一人にしないで~」

末真「やれやれ……」

末真はそう言いながら、その作家に登場する主人公が、同じ言葉をくちずさむのを思い出していた。

些か気取ってはいるが、どこかデリカシーを欠いているところの、一言でいえば不思議な主人公が、彼の小説にはよく登場する。


30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:22:12 ID:9BJ7Wg6V0

末真は再び席に腰を下ろす。

末真「村上春樹は、たしか八十年代くらいにデビューした作家なの……まあコレはどうでもいいわね。

で、彼の書く小説は、現代では割と世界的な支持を得ていて、ひょっとしたらノーベル文学賞を取れるんじゃないか、って言われたりしてる」

宮下「へぇ、何だか凄い作家さんなのね」

藤花の関心の様子には、全く嫌味らしいところがない。

末真「まあね、ただ、毎年の文学賞を取り逃しているのも事実だけど。

で、問題はその彼がよく使うところのワード『システム』なのよ」

宮下「システム」

藤花はぽつりと反芻する。


31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:27:03 ID:9BJ7Wg6V0

何やらその瞬間に、藤花の目の色がぎらりと光ったような気がして、末真は一瞬怯んでしまう。

末真「そ、そうそう。システム。藤花はシステムっていう言葉について、どう思う?」

それでも何とか気を確かにしながら、末真は話を続けた。

それに対して、藤花は微かに俯いて、考え込むような仕草を取る。

藤花「……つまり、それは制御者のことだね」

何やら、男の子のような、女の子のような、中世的な口調で、藤花は答えた。

末真「そう! ……えらく当を得た答えね。

で、そのシステムっていうものは、要するに私たちの個人的な意志と対立するものなの。

私たちは、常にそのシステムっていうものと、対立しているワケね」

宮下「そうだね、多分その通りだよ」

藤花は、もはや冷めてしまったアメリカンコーヒーのカップに一瞥を送ると、その取っ手を取り、そして僅かなコーヒーを飲み干した。


32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:32:15 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「で、その作家さんは、システムというものをどう捉えてるのかな?」

何やら挑戦的とも言える態度で、藤花はそう言った。

しかし、藤花のそのような態度に些か順応してきたところの末真は、さしてそのことに問題を感じることもなく、答えた。

末真「それがちょっと難しいのよね。

システムっていうものに対して、迎合的な姿勢をとっているかと思えば、あるところでは、システムというものを自分の手で作ってしまおう、だなんてことを言ってたりもする。

しかも、そんな行為を自分の小説の中で、批判的に書いているにも関わらずよ? コレって何だか分裂してない?」

若干興奮気味に、末真はそう言い切った。

宮下「確かに、一般的な人間の態度としては、奇妙と言わざるを得ないね」

藤花は、議論をしていると言うよりは、どこかしら議論を放棄してしまっていて、別のことを考えているかのような口調で言った。


33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:37:56 ID:9BJ7Wg6V0

末真「そうなの、やっぱり奇妙よね。

だけど、そういう姿勢だからこそ、何となく気になっちゃうみたいな節もあるんだけどさ」

宮下「なるほど、君らしいフォローの仕方だ」

怒っているのか悲しんでいるのか、どっちともつかない、左右非対称の奇妙な表情を、藤花は浮かべた。

末真「何それ……引っかかるなあ」

宮下「いや、でもさあ、なんていうかこう、末真らしいよ。

私には上手く説明できないけどさ」

一転して、柔和な口調で言った。


34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:42:03 ID:9BJ7Wg6V0

末真「そうかしらね?

まあ、とりあえずはそんなところ。で、親御さんに関する言い訳は整ったかしら?」

宮下「あー、もうそのことについて考えても無駄だということに気付いたから」

遠い目をして、藤花は窓の外を見遣った。

末真「それでいいのよ、最初に藤花も『やっちゃったことは仕方ない』って言ってたじゃない」

宮下「いやいや……それを何とか納得することが真に難しいんですよ」

末真「やっぱり?」

意地悪げな口調で言う末真に対して、藤花は再び机に突っ伏してみせる。

宮下「……ま、何にしても今日のところは帰りますか」

末真「そうね」


35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:44:14 ID:9BJ7Wg6V0

二人は、その後の僅かな談笑の後、お互いに手を振って、『トリスタン』の前から離れた。

笑顔を浮かべていた宮下藤花の表情が、『トリスタン』から離れて行くにつれ、どこかしら緊張したものへと移っていく。

宮下「村上春樹……か」

そして、ぼそりと呟いた。


36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 11:49:20 ID:9BJ7Wg6V0

再び中断
洗濯物を干して飯を食べてくる……それまでスレが残っていると良いが


39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:06:45 ID:9BJ7Wg6V0

保守感謝
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それから数日後のある日のことであった

末真和子は、受験勉強の傍ら、その息抜きをする為に、とある書店を訪れていた

市街地に所在するところの、全国展開しているかなり規模の大きな書店である

その書店の一角には、当然のことながら、文庫コーナーが存在している

末真はその文庫コーナーを目指して、書店の中を歩いていた

末真(別に見るべきものが無いと分かっていても、やっぱり書店に来てしまうものね)

そんなことを思う。

そして、彼女はそのコーナーに辿り着いた。

と、そこには、一人の男が立っており、そして、手には薄い文庫を一つ持っていた。

末真(VSイマジネーター……)

それは、彼女の尊敬する作家、霧間誠一の主著である『VSイマジネーター』であった


40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:13:21 ID:9BJ7Wg6V0

『VSイマジネーター』……とは要するに、常識に従う事なかれ、を主張の根本とするところのエッセイである

霧間誠一の言うところの『イマジネーター』とは、つまり『勝手に物事を考えてくれるところのもの』だ

そのようなものによって、自らの思考を奪われることがあってはならない、と彼はこの本の中で述べている

末真(珍しいわね……いや、その手の人間にとっては有名な本だから、案外珍しくないのかも)

要領を得ない思考を続けつつ、彼女はその男へと接近していく

そして、末真はその時、驚きを隠しきれず、息をのんだ

その男は、数日前に路上で出会った、あの肌の浅黒い男だったのである


41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:17:30 ID:9BJ7Wg6V0

末真の些か挙動不審とも言える行動に、男は顔を上げて、末真の方を見遣った

特徴の無い顔立ちをした男は、目立った表情を顔に浮かべていなかった

???「どこかで僕に会いましたっけ」

そして、率直にそう尋ねてきた

一瞬、どう答えていいものやら、末真は戸惑ってしまう

末真「あ、会いました」

相手の率直さに、彼女は同じく率直に、そう答えていた

???「いずれの場所で? というのも、僕は貴方に会った記憶を持ち合わせていませんので」

末真「え、えーと」

末真は必死に文章を練る


42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:22:11 ID:9BJ7Wg6V0

末真「路上で、です」

???「路上で?

貴方のお名前を伺ってもよろしいてしょうか。

僕の名前は、村上――」

末真「あ、はい! 末真です! 末真和子!」

男が言い終わるのに被せてしまったので、最後の方を聞き取ることはできなかった。

村上「末真さんか。

その名前は僕の記憶に無いから、多分、貴方は一方的に僕の顔を目にしたんでしょうね」

男は、やけに筋の通った喋り方をしていた。

末真「そうなります……」

末真はおずおずと、そう答えた

村上「しかし、それだけではあんなに驚いたりしないでしょう。

何か、他の原因があるのではないですか? ひょっとして、この本がその原因かもしれませんが」

正に男の言う通りでもあったので、こくり、と末真和子は頷いた。


43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:26:01 ID:9BJ7Wg6V0

末真「そうです、その本が、私に注意を呼び起こしました」

男につられて、彼女もまた明晰な喋り方を始める。

村上「そうですか、霧間誠一さんに関して知識がおありで」

末真「え、ええ」

謙遜程度に断りを入れるべきかもとも思われたが、しかし、ここは正直に答えておくべきだろう、と彼女は判断する。

末真「……特に、その本については愛着があります」

村上「なるほど。

僕も、この本に関してはユニークさを感じます」

末真は、一つ唾を飲み込んだ。

何となくではあるが、男の放つ雰囲気から、些かの真剣さのようなものを感じ取ったからである。


44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:28:02 ID:9BJ7Wg6V0

末真「ど、どういったところが?」

そして、思わずそう訊いてしまっていた。

男は、ぴくりと反応する。

知らず知らずの内に、二人の間に何らかの雰囲気が形成されはじめる。


45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:35:26 ID:9BJ7Wg6V0

村上「彼の、自由というものに関する弁証法的な考えに、私は着目しています。

貴方は、どのように思われますか」

末真「べ、弁証法。

その、つまり『人生に目的があるとすれば、ただ一つ――』のくだりですか?」

村上「そうです」

はっきりと、村上は頷く。

迷いのない態度であった。

その態度は、同時に彼の心情の把握を困難にさせた。

末真(……っていうか、私は何故この男の人とこんなに長い間話をしてるんだろう)

そんなことを考え始めてしまう。

ふと、男が笑みを見せた。

ぎこちないところのない、非常に洗練されたところの笑みであった。

村上「自由というものは、弁証法的です。

時に、個人意志とシステムは、混然とし、弁証法的になります」

男は雄弁さを以て語った。


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:37:17 ID:9BJ7Wg6V0

末真は、それを黙って聞いている。

村上「時に、『個人意志は世界を律しすらします』」

形式によっては、傍点が振られているであろう強調を、彼は行った。

末真「そんなものですかね」

村上「ええ、確かにその通りです」

男は重々しく頷いた。


47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:39:22 ID:9BJ7Wg6V0

そして、それきり、男は口を開かなかった。

末真は、戸惑いの中で立ちつくしてしまう。

自分は、何かをこの時点で言わなければならないのではないか、という考えに、駆られてきてしまう。

私は、そもそも何かを自分で考えて喋っているのか? という疑問すら、今は浮かぶに至っていた。

村上「逆に言えば――」

その中で、再び男が口を開いた。


48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:44:11 ID:9BJ7Wg6V0

村上「個人意志がシステムによって完全に支配されてしまった時、我々の個人意志は、非常にリーズナブルに――つまり、原理的なはたらきかたをします。

我々は、その時、システムというものの支配されていない状況を想起するでしょう」

末真には、ほとんど彼が何を言っているのか、分からなかった。

いや違う、理解できないのではない。とすれば、『理解しようとしていない』のだ。

末真「……あの」

その中で、末真は声を上げた。

男が、どことなく、あどけない少年のような態度で、その声に反応する。

微かに、笑みを浮かべるかのように、眉を動かす。

末真「貴方は……一体何を言おうとしてるんです?」

村上「どうやら、今それを言うべきでは無いようです」

そして、かぶりを振った。

村上「言葉には、然るべき時点というものがあります」

いつのまにか、男の表情は、最初に末真が見た、あの無表情になっていた。


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:48:55 ID:9BJ7Wg6V0

村上「では、これで」

ぺこりと、男は頭を下げた。

末真もまた、その男に同じような会釈をする。

男は、擦れ違っていく。

末真(なんだろう)

そして、ふとした疑問のようなものが、彼女の胸にもたげた。

あの、村上という人間に似た人物と、以前に会っていたような気がしたのだ。

しかし、その時の記憶は、彼女にとって、少々蘇りにくい形で封印されている。

飛鳥井仁と、塾の進路指導室で面談した時の、あの雰囲気は、彼女にとって、遠い過去のものとなっていた。

末真は、ふと、男が去っていった方角に向かって踵を返した。

しかし、男の姿はもう、その残滓すら見当たらない。


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:51:50 ID:9BJ7Wg6V0

末真(なんだか、まるで――)

末真には、その言葉の続きが、どうしても出てこない。

末真和子は、その場から動くことができず、立ちつくしている。

まるで――世界を変えようとしているのではないか、などという雰囲気の残滓を、彼女は言語化することができないでいた。


52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 13:53:04 ID:9BJ7Wg6V0

再び中断


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:07:36 ID:9BJ7Wg6V0

個人意志が、世界を律するものになるとしたら、それは一体何を示しているだろう

個人意志とは、システムと対立する要素だ

しかし、それが仮に、世界を律し始めたとすれば――その時、個人意志はシステムそのものとして機能し始める

我々が、個人意志を持っていることに、人生の目的を立脚するとすれば、我々の目的は、個人意志をシステムそのものとして機能させることにあるのだ

そういうものなのだ


54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:08:44 ID:9BJ7Wg6V0

幕間は短い――人生における幕間もまた、短い


56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:16:03 ID:9BJ7Wg6V0

次の日、末真和子はいつも通り学校に登校していた。

しかし、頭がぼんやりとし、授業が手に付かない。

そういう状況にあった。

女生徒A「……と、ちょっと、末真? 末真ー?」

昼食中に、机を突き合わせていた連中から、呼び声がかかるに至った。

末真「え、あ、なに?」

女生徒A「『なに?』じゃないわよ、らしくもなく……と言えばうそになるけど、ぼんやりしちゃってさあ」

末真「あ、あー……なんていうか、寝不足?」

女生徒A「ちょっと、しっかりしてよー? 受験期のストレスを被ってるのは、アンタだけじゃないんだからね?」

末真「分かってる、分かってるんだけどさあ……」

他人に心配を掛ける域にまで自分の心の乱れが浸透しているとは……と、末真は内心頭を抱えた。

それというのも、先日出会った男のほのめかした文句の幾つかが、問題になっているのだ。


57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:22:30 ID:9BJ7Wg6V0

末真にとって、先日の男との邂逅は、一種のデジャヴュを引き起こしていた。

あの時の――彼女が以前遭遇した、連続猟奇殺人事件の時のことを、思い起こさせられたのである

というのも、あの男の出会いは、彼女に『自分の預かり知らぬところで進行する事態』の存在を想起させざるを得なかったからだ

末真(なんなのよ……、全く)

そういうわけで、末真は著しく調子を崩していたのである。

そうこうしていると、時間が過ぎるのも早くなり、あっという間に放課後となっていた。

彼女は、次々と吐き出される学生たちの中に紛れ込んでしまい、そして、その一人として学校の前のゲートを抜けようとしていた。

???「あ、末真さん」

そんな時、彼女に向かって声をかける奇特な人間が現れた。

訝しげに視線を遣ると、そこには一人の少女の姿があった。

末真「敬か」

新刻「ちょ、『敬か』はヒドイんじゃないですか!」

まるで小学生のようなナリをした少女は、彼女にそう喰ってかかった。

末真「いや、なんていうかちょっと体調悪くてさ、ゴメンゴメン」

彼女はそう弁解する。


58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:26:55 ID:9BJ7Wg6V0

新刻「体調がよくないんですか?

お互い受験生ですしね、気を付けないと」

末真「いやまあ、そうなんだけどね」

実際の理由を言うには、少々憚られてしまっていた。

末真「と、ところでさ」

そこで、末真は話題を転換させるべく、そんな言葉を口にする。

末真「宮下藤花見なかった? 私、あいつと帰る予定だったんだけど、どうしても見当たらなくて」

適当に理由も付け加えておいた。

新刻「宮下さん……? どうだったかしら、別に、私もずっとゲートのこと見張ってるワケじゃないし」

末真「そ、そっかー。

んじゃ、私、彼女を探してから帰るわ。敬もお疲れ」

新刻「あ、お疲れ様ー……」


59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:31:54 ID:9BJ7Wg6V0

新刻敬の声を背中に受けながら、末真は再び校舎の中へと戻っていた。

しかし、自分で言っておいて何なのだが、今の彼女は、確かに宮下藤花のことを必要としているようでもあった

鋭い洞察力を持った人間とでは共有できないものを、彼女にであれば話せるような気がしたのだ。

末真(……って、なんだか私すっごく失礼なことを考えているような)

末真は校舎の中で、ひとまず下駄箱の確認をすることにする。

結果として、宮下藤花はまだ校舎の中にいるということが判明した。

末真(そっか、まだいるのか……って、何で? もしかして彼氏と?)

宮下に親しい男性がいることは、彼女にとって公然の事実である。

末真(となると、私がここで延々と彼女を待っているっていうのは、ひどく場違いと言わざるを得ないわね……)

そんなことを考える。


60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:35:35 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「あれ、末真、どうしたの?」

と、そこに身一つで現れたのは、紛れもなく藤花自身であった。

末真「あ、いやちょっとね、なんつーか」

宮下「ははぁ……私のことが恋しくなったか」

末真「ま、まあね」

彼女はそこで正直なところを答えてしまう。

宮下「……あれ、ひょっとして末真って、今日本気で調子悪い?」

末真「うーん……実はね、なんとなーく」

曖昧な答えを返しておく。

宮下「なるほど、ならば、この私がたーんと、末真を介抱しなくちゃならない、ってワケか」

末真「いやまあ流石にそこまで頼ろうとは思ってないけどさ」

彼女のノリの良さに、若干遠慮を覚えながらも、末真は言う。


61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:41:42 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「まあ、何でも話すと良いよ、報酬は『トリスタン』のアメリカンね」

末真「私はそこまで落ちぶれてはいないわよ」

宮下「ふーん?」

彼女は応答しながら、そのアーモンドのように大きな瞳を、上目遣いにしてみせた。

末真(そういえばこの娘もこの娘で、案外洞察力あるんだった……)

今更ながら、そんなことを考える。

宮下「だっめだ、分からん」

末真「分かるワケないでしょーが」

そんなことを言い合いながら、お互いに少しだけ笑う


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:46:19 ID:9BJ7Wg6V0

そんなこんなで、二人で帰路を歩きながらに語る。

末真「いやまあ、藤花には分かると思うんだけどさ、なんていうか、自分の意志が無視されちゃう状況って、あるじゃない」

宮下「色々とあるね」

二人でとぼとぼと歩きながらに話をする。

末真「今まさに、そういう状況なワケ」

宮下「ヘビーなの?」

末真「いや」

言いながら、末真は眉をしかめる。

ヘビーと言えばヘビーだが、この状況一つを切り取ってみれば、ライトといって差し支えない――彼女は自分でそう結論する。

宮下「でも、そういうのって結局よく分からないものよ。

自分の思い通りに物事が進んでる、って思った時にこそ、案外大切なことを見落としてたりさあ」

末真「……そうかもしれないけどね」

とはいえ、末真にとっては、自分の意志が介在しない物事が、自分と関わりがあるにもかかわらず進んでいるという状況が、どうしても許せないのである。


63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:51:01 ID:9BJ7Wg6V0

宮下「……ま、時間が経てば、分かってくることもあるでしょ」

藤花は、敢えて陽気な態度を持つことで、末真に接した。

末真「分かりたくないことも分かってきたりするしね」

宮下「ぐ……、アンタってつくづくリアリストね」

末真「まあね」

そんな風に、飄々と答えてみせる。

末真「しかしまあ、結局のところ、自分の意志だけで把握できてるかどうかっていうのは、自覚しにくいものよね」

宮下「そうだね、結局のところ、皆が皆洗脳されているようなものだ」

不意に、声の調子が変わったのを聴き付けて、末真は宮下藤花の表情に、視線を注いだ。

顔を些か伏せている彼女は、普段感じさせないところの愁いのようなものを浮かべているようであった。

末真「や、ちょ、別にそんな深刻な表情をしなくってもさあ!」

宮下「しかし、人間というものはやはり、どこかしら自動的なものだよ、僕がそうであるようにね」

少女は、肩から掛けていたスポルティングのバッグを、微かに揺らしながら言う。


64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 14:58:25 ID:9BJ7Wg6V0

末真は、彼女の一人称が変わったことに気付いていたが、しかしそれに対して敢えて指摘をしようとはしなかった。

末真「ま、まあそこまで深刻に取らなくても……」

何故か状況が一転して、末真が藤花を慰めるかのような形になっている。

宮下「しかし……、そのような自由の無い状態から、人間は確かに、夢やロマンというものを持つべきなんだよ」

末真「……そうね、そうかもしれない」

末真は知らず知らずのうちに納得している。

全てが、自分の意識に沿わないまま流れていく現状を、どこかしら、見つめ直すことができていくような気がしている。

宮下「さて、僕には少し用があるので、ちょっとこの辺で失礼するよ」

末真「ん? え、ああ了解」

藤花はピンと背筋を伸ばして立ち竦む。

そして、末真の方を暫く見つめた後で、その場を立ち去った。

道路沿いにある路地の方へと、足を進める。

末真(……どうしたんだろ?)

そう思いながらも、末真はまた同じ道を歩いて行く。

何だか少しだけ、重圧のようなものから解放された感覚を、覚えながら。


65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:01:03 ID:9BJ7Wg6V0

些か中断


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:33:13 ID:9BJ7Wg6V0

"それ"に必要なものは、多くない

意志さえあればいい

そこに意志さえなければ、たとえその人格が脆く崩れていたとしても――そこに固執する意味はない

しかし、その意志がなければ、全ては灰燼に帰すであろう

もう少し

もう少しだ


68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:35:47 ID:9BJ7Wg6V0

一人の男が、路地を歩いて行く。

以前、末真和子に接触したところの男だった。

そして、その男の足が停まる。

彼の行く先に立っている、筒のようなシルエットを目にしたからだ。

男は傘を持っていた

夕闇の街には、雲が立ち込めている

雨が降り出しそうだった

???「蛇、か」

そのシルエットは、呟いた


69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:37:47 ID:9BJ7Wg6V0

???「永遠の生命の象徴たる蛇。

君が目指してるのは"それ"だろう? イマジネーター君」

男は、立ちつくしている。

不意に、男が傘を上空に向かって差した

雨は、降り出さない


71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:41:41 ID:9BJ7Wg6V0

「ようやく来たのですか」

男は言った

???「僕のことを知っているのかい?」

「いや、いつかは来ると思っていたというだけのことです」

男はそう答える

ブギーポップ「敵は、僕のことをブギーポップという」

そして、そのシルエットは名乗った。

「しかし、どうして私がイマジネーターだと?」

ブギーポップ「君が目指していることの意味を考えれば、君自身がイマジネーターであるという結論は避けられないよ」

そう答えるブギーポップの指先で、何かが煌めいた

男は、表情を変えない

無表情で立っている


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:47:45 ID:9BJ7Wg6V0

ブギーポップ「君は、システムに介入しようとした。

また、そのことによって『永遠』を目指した、違うかな?」

「……些か、違います」

男はそう言った。

「私はただ、自分自身が自分自身であるということに、虚無感を破壊するだけの力を見出しているだけですよ」

ブギーポップ「あるいは、そうかもしれない。

しかし、末真和子らの立場はどうなる? あのような人間が、夢を抱くこともできない状況を、君は歓迎するかね?」

「いや」

男は短く答えた。

「その時こそ、私に反抗すればいい。

私に対する、VSイマジネーターとなればいい。違いますか?」

ブギーポップ「違わないな」

「私が思うに――」

男は言葉を継いだ


73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:52:00 ID:9BJ7Wg6V0

「誰かの心臓の脈拍(ハートビート)が、世界を支配することだって、あるんです」

男は言った。

「そして、貴方はそれを今、止めようとしているのでしょうか

そうであるなら、むしろ、私にとっては、貴方こそが、イマジネーターだ」

ブギーポップ「これは手厳しいな」

ブギーポップは、例の左右非対称な表情を浮かべて、応えた。

ブギーポップ「誰かの意志が――心臓の鼓動が、全てを支配することだってある、か。

その時に、誰かの心臓は、再びその支配に向かって、対決を計るんだろうね」

「きっと」

男は頷く。


74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:55:28 ID:9BJ7Wg6V0

ブギーポップ「ならば、僕には君と対決する義務はないな。

思うに、君の反応が不完全だったのは、そのあたりに原因があったからなんだろう」

「そう言って頂けて、光栄です」

男はぺこりと礼をする。

そして、顔を上げる。


75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 15:58:16 ID:9BJ7Wg6V0

その時には、既にシルエットは消えている。

そして、それとほとんど同時に、雨がぽつぽつと降り初め、そして、やがては全ての音を飲み込む音へと変わっていく。

男は、その中で傘を差して、立ち竦んでいた。

そして、どこからか、口笛が聞こえてくるのを、耳にする。

――ああ、音楽はまだ鳴り止んでいない。

彼は一つ、笑みを浮かべる


76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 16:01:59 ID:9BJ7Wg6V0

心臓の音が、ゆっくりと刻まれているのが分かる。

男にとって、雑音は、もう聞こえなかった。

今まで、目指していたものが、ふいに消えてしまったかのような状態だった。

もう少しで触れようとしていたものが、触れた瞬間に無くなってしまったかのような、そのような状態だ。

しかし、それでもいいのだ、と彼は思う。

この数日間の出来事に、何かしらの題名を付けようではないか、などと、少しばかり考えた。

雨の中を歩く。


77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 16:09:14 ID:9BJ7Wg6V0

空は晴れていた。

末真和子は、その中を歩いている。

何かしら曇っていた心も、同時に晴れ渡っているかのような気分で、学園の前の坂を上っていた。

そして、その背後から、もう一人の少女が駆けてくる。

その気配に気付いて、末真和子は振り返った。

宮下「おっはよ、末真」

末真「おはよ、藤花。今日は調子良いよ」

宮下「アメリカンよろしく!」

末真和子は、困ったように笑ってみせるが、しかしそれは、些かの親愛も含んでいる。

末真「しゃーないなー、じゃ、帰りに例のところ、寄りますか」

宮下「おー、ノリが良い末真は好きだよ、私!」

そして、談笑が続いていた。


78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 16:10:19 ID:9BJ7Wg6V0

晴れた空に、少しばかりの雲が、朝日を受けて光っていた。


79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 16:15:04 ID:9BJ7Wg6V0

[VSImaginater SIDE:B/The whistler in the rain / END]


80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 16:51:37 ID:p/QPEl+CO

おつかれ!
ブギーssとは珍しい…


84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 17:07:09 ID:chyHpBDDO

いち乙
村上春樹もブギーポップも好きだから楽しかったよ


85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 17:07:18 ID:p/QPEl+CO

ピラミッドは正直微妙だからなぁw
先月発売したムーンライトは初期みたいな雰囲気出てておすすめ
あとビートとヴァルプ


97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 17:44:55 ID:9BJ7Wg6V0

“それが、"黄金"ということ――?”

“それは、貴方が輝きと感じるもの全て”

結論:ブギーポップは文学


104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 17:56:54 ID:9BJ7Wg6V0

>>103
プームブームは、ハーメルンの笛吹きみたいなやつだよ
夢を捨て切れない人間たちを集めて、一つのコミュニティを作ろうとした


111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/19 18:23:56 ID:9BJ7Wg6V0

やっぱイマジネーターが真骨頂だと思うの



スレッドURL: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1298075770/

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