ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

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ハンジ「あなたの言葉を胸に、私は生きていく」

http://blog-imgs-56.fc2.com/s/s/i/ssipaimatome/DSCF001511.jpg

1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:05:51.26 ID:foaYr8tyo
走馬灯。

ご存知だろうか。

遥か東洋で作られたもので、二重の枠があり、影絵が回転しながら写るように細工された灯篭のことだ。

死に直面した際に体験する記憶の反復現象を走馬灯現象と呼ぶのは、この走馬灯からきている。

どうしてそんな話をしだしたかと言うと、私は今からその走馬灯現象を体験するからだ。

SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1369317951

2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:06:18.14 ID:foaYr8tyo
目の前に迫り来るトラック。

スピードを緩める気配はない。

私が屈み込むように倒れているせいで、運転手からは見えていないのだろう。

この速度で轢かれたなら、助かることはない。

それに思い至った瞬間に、過去が色鮮やかに蘇り始める。

母との思い出。

父との思い出。

友人との思い出。

仲間との思い出。

そして。

彼との思い出。

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:06:46.10 ID:foaYr8tyo
彼と私が出会ったのは、一年前の春。

満開の桜がさらさらと散り始めた頃であった。

桜並木を通り、舞い散る花びらを目で追うと、僅かならず気分が高揚してくる。

誰かが言った。

桜は散るからこそ美しいのだ、散る桜こそが美しいのだ、と。

彼はその舞い散る花吹雪の中にいた。

調査兵団の兵舎。

そこにある桜の大樹。

その根元に彼は頑健なロープで固定されていて、その全身に美しい散桜を浴びていた。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:07:13.80 ID:foaYr8tyo
4mを越える巨体を、窮屈なほどに丸められてロープで固定されている。

細い目の中で、せわしなく眼球が動いているのが見えた。

口からは声ともつかぬ音が垂れ流されている。

おぞましき人を食す巨人。

人類の天敵。

けれど――。

ああ、これはきっと私の罪なのだろう。

私は――。

彼を美しいと思ってしまった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:07:40.92 ID:foaYr8tyo
彼から目を離せなかった。

見つめるほどに鼓動が激しくなっていく。

呼気が乱れていく。

視界から世界が消えていき、ただ彼だけが見えていた。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:08:10.46 ID:foaYr8tyo
無意識のうちに一歩近づく。

それでこちらに気付いたのか、彼のせわしなく動いていた眼球は私に固定された。

――私を見つめている。

その事実に、また一つ鼓動が高鳴った。

一歩近づく。

今度は、明確な意思を持って。

彼に一歩ずつ近づいていく。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:08:39.74 ID:foaYr8tyo
彼の眼前まで進んで、少し膝を屈める。

本来であれば見上げるような巨体の彼も、ロープで固定されているために、少し屈んでもまだ私の目線のほうが高いくらいとなっている。

彼は音を出すのをやめて、じっとこちらを見ている。

私は、ゆっくりと手を彼に向けて伸ばしていく。

人差し指だけをぴんと伸ばし、ゆっくりと。

いくら固定されているとはいえ、彼が少し顔を動かせば、途端に私の指は食い千切られるだろう。

それで構わなかった。

私は罪を犯したのだ。

であれば、罰を受けるのが必然。

高鳴る鼓動を必死に押さえつけていると、彼がゆっくりと口を開くのが見えた。

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:09:07.65 ID:foaYr8tyo
彼は開いた口から何か音を出したかと思うと、またゆっくりと口を閉じていく。

代わりに、だらしなく垂れていた手を軽く握って持ち上げ、人差し指だけをぴんと伸ばしてきた。

私が伸ばした指と、彼が伸ばした指。

優しく、触れ合った。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:09:35.22 ID:foaYr8tyo
それからのことは薄っすらとしか覚えていない。

私は泣いていたと思う。

私の罪は赦されなかった。

それどころか、更なる禁忌を犯したのだ。

被食者である私と、捕食者である彼。

互いが互いの立場を忘れ、罪を犯しあった。

私は泣いていたと思う。

でもそれは、きっと悲しみの涙ではなかった。

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:10:03.19 ID:foaYr8tyo
私と彼の交流は、続いていった。

とは言っても何かができたわけではない。

彼は変わらず調査対象のまま、ロープで固定されていたのだから。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:10:32.76 ID:foaYr8tyo
彼との交流は、昨今の少年少女ですら一笑に付すほどのものだった。

周囲に誰もいないことを確認して彼に近づくと、指を伸ばす。

彼もそれに答えるかのように指を伸ばしてきて、それらが触れ合う。

ただ、それだけ。

他には何もなく、ただそれだけだった。

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:10:58.27 ID:foaYr8tyo
いや、正確に言えばもう一つあった。

私は指を触れ合わせる時に、ほのかに笑みを浮かべている。

対して彼は初めのうちはまったくの無表情であった。

だが、いつの頃からか彼が口角を不自然に上げていることに気付いた。

それが彼なりの笑顔なのだと気付いた時、私はまた一つ涙を零した。


14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:11:25.72 ID:foaYr8tyo
夏。

蝉時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。

大きな入道雲を見ながら、今日も暑いね、と微笑みあった。

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:11:53.20 ID:foaYr8tyo
秋。

木葉時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。

澄み渡った爽やかな晴天を見ながら、一緒にお散歩したいね、と微笑みあった。

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:12:20.17 ID:foaYr8tyo
冬。

雪時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。

白く染まった世界を見ながら、春が待ち遠しいね、と微笑みあった。

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:12:48.13 ID:foaYr8tyo
春。

舞い散る桜。

彼と出会った思い出の季節。


私が一番好きなこの季節に――。





――彼は処分されることとなった。

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:13:17.15 ID:foaYr8tyo
壁外調査にて、巨人の生態研究の調査対象として小型の巨人が捕獲された。

協議の結果、一匹を処分することになった。

一匹でも危険な巨人なのに、二匹はとてもじゃないが扱いきれない。

そういう判断だ。

処分対象として選ばれたのは、何かがあったときにより危険な事態となることが予測される大型の個体。

すなわち、彼の方だった。

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:13:46.00 ID:foaYr8tyo
――貴重な調査対象です。

私の拠り所はそれだけ。

何度も主張した。

けれど、それが認められることはなく、彼の処分は明日に決定した。

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:14:15.77 ID:foaYr8tyo
私は彼の元へ赴いた。

彼はいつものように微笑みを浮かべ、指を伸ばしてくる。

私も指を伸ばす。

だがそれらが触れ合うことはなかった。

手が震える。

これが彼との最後になる。

そう考えると震えて、震えて、どうしようもなく震えて、彼の指に触れることはできなかった。

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:14:48.52 ID:foaYr8tyo
涙が頬を伝う。

初めて彼に見せる悲しみの涙。

私はどうしても微笑むことができず、その場から逃げ出した。

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:15:43.66 ID:foaYr8tyo
走って、走って、転んで、立ち上がって走って。

それを何度も繰り返し、ついには立ち上がれなくなった私の眼前に迫るトラック。

何とか生き延びようとする心と身体。

悲しみの中、全てを諦めようとする心と身体。

相反する二つがぶつかり合って、私は身動きが取れなくなった。

運転手はようやく私に気付いたのか、真っ青な顔になってブレーキを踏む。





その甲高い音と前後して、一陣の風が吹いた。

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:16:13.14 ID:foaYr8tyo
風を感じた私の目の前にあるのは、剥き出しの大きなお尻。

全裸の巨体。

そんな知り合いは私には一人しかいない。



――彼だ。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:16:45.94 ID:foaYr8tyo
私とトラックの間に立ちふさがった彼の身体からはあちこちから蒸気が立ち昇っている。

それは巨人の傷が癒える際に発生する現象。

彼を拘束していたロープは彼の力では切ることはできない。

彼は、ここに来るために身体のほうを引き千切ってきたのだ。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:17:13.93 ID:foaYr8tyo
彼は肩越しに私を見ている。

その口角を上げて。

微笑みながら、私を見ている。

直後、衝撃音と共に彼の身体がひしゃげた。

さしもの巨人もスピードに乗ったトラックの直撃では無傷とはいかないようだ。

だが、トラックの勢いは彼を緩衝材として完全に殺され、私にまで到達することはなかった。

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:17:49.04 ID:foaYr8tyo
全身から先ほど以上に蒸気を立ち昇らせながら彼はゆっくりと私に向き直った。

彼を見上げるままの私に、ゆっくりと握った手を伸ばしてくる。

彼の意図を悟った私も手を伸ばす。

触れ合う指先。

彼は微笑んでいる。

今の私は微笑んでいるだろうか。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:18:19.90 ID:foaYr8tyo
いつもより長く指を触れ合わせている中で、彼が口を開いていくのが見えた。



しばらく口を動かしていたかと思うと、彼から意思を持った音が、声が発せられた。

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:18:50.91 ID:foaYr8tyo


――アイア……オ……



――イギ……エ

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:19:20.02 ID:foaYr8tyo
その意味を理解し、彼に答えようとしたその刹那、立体起動で現れた兵士長が彼のうなじを切り飛ばした。





それが彼との永遠の別れとなった。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:20:29.34 ID:foaYr8tyo
降り散る桜を見ながら彼の最後の声を反芻する。

その言葉が胸へと染み込んでいく。


――ああ、わかっているよ。


頬を伝い、涙が零れる。

風が吹き、散る桜に混じって、私の涙も空へと散っていった。

これはあなたに贈る涙。

私は――。






――あなたの言葉を胸に、生きていく。







終わり
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2013/05/23(木) 23:20:59.16 ID:foaYr8tyo
純愛物のSSを書こうとしたらこうなった。

皆もトラックには気をつけてください。



なお、本編のハンジさんは巨人を倒すために調査対象としているだけで、巨人が好きなわけではないようです。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/05/23(木) 23:23:33.68 ID:ESQXmxa4o

どうしてこうなった
でも面白かった


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