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ドラッグ オン ドラグーン3 討鬼伝

シャーリー「もがれる翼の断末魔?」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:12:50.13 ID:kwE4M7oq0


 最近よく夢を見る。
 何度見ても同じ夢。

管制塔《ティンダル航空基地管制塔より、ウォーウルフへ 海軍の哨戒線を抜けて敵機が君たちの作戦空域(マイアミ上空)に侵入した》

 自分が死ぬ夢だ……

グラティエス《……さ、中佐!》

ビショップ「あ、あぁ……こちらウォーウルフ1、了解した。 戦闘を開始する」

グティエレス《寝ぼけてるんですか? 気をつけてください、中佐。 オハイオ級を沈めたのは例のサメつきって話です》

ビショップ「軽くひねってやるさ、振り回すからな? 付いてこれるかガッツ?」

グティエレス《言ってくれますね、中佐! これでもダンスには自信があります》

ビショップ「OK、ダンスタイムだ。 ウォーウルフ1交戦(エンゲージ)!」

グティエレス《ウォーウルフ2交戦!》

 点のように見えた敵機と次の瞬間には超音速ですれ違う。
 
 その間は一秒に満たず、コンマ何秒の交錯だが、アメリカ合衆国空軍のトップエースに見せる隙としては長すぎる。

 それが証拠に編隊の一機がM61A1の30mmをキャノピー周辺に受け、ボディーを穴だらけにしながら爆散した。


3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:14:26.11 ID:kwE4M7oq0

グラティエス《すげぇっ! イラクで聞いた噂通りだ!》

 その後もまるで糸でも付いているかのように簡単に敵の背後を奪い、空対空ミサイルやM61バルカンが敵に死をまき散らす。

マジック《こちら上空管制機マジック。 ウォーウルフへ。 空域へ敵のエースが侵入した。 海軍機がもう二機もやられてる》

グラティエス《ウォーウルフ2、了解! 中佐の腕ならドックファイトに持ち込めるはずです》

 言われなくてもとでも示すようにF-22を熟知した熟練のパイロットにのみ許される設計限界ギリギリの急制動で吸い付くように敵の背後につき30mmの暴風を叩き込む。

グラティエス《中佐! ミサイルアラートです! 例のサメ付きだ!》

 目の前でこの葉のようにきりもみしながら落ちる敵機を横目に見ながら、ミサイルに回避機動を取ろうとデュアルジョイスティックを操作した瞬間、研ぎ澄まされた神経が妙な浮遊感を訴えた。

 とにかく、眼前のミサイルに対応しようと制動をかけた次の瞬間。 高性能機器の塊であるF-22はあっけなくストールした。


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:16:05.01 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「クソっ! モニターが死んでる……どうなってるんだ!」

グラティエス《ミサイルはフレアを追ってますが……中佐、ベイルアウトを!》

ビショップ「ちくしょう、ダメだ! 電子系統が言うことを聞かない、キャノピーが飛ばない!」

グラティエス《中佐!》

マジック《ウォーウルフ1へ、貴機がレーダーから消えた。 何が起こっている?》

ビショップ「ネガティブ! 状況確認不能!」

グラティエス《ウォーウルフ1が発光している! 視認不能!》

マジック《何が起こっているんだ……》

 機体が光に包まれるとほぼ同時にウォーウルフ1ことウィリアム・ビショップ中佐は突然、激しい衝撃を受けて意識を失った。


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:16:49.10 ID:kwE4M7oq0

グラティエス《消えた! 中佐が消えちまった!》

マジック《シグナルをロスト……ウォーウルフ2、とにかくサメつきを攻撃しろ!》

グラティエス《了解……ちくしょう、この野郎何しやがった!》

??「ここは……」

グラティエス《レシプロ!?》


6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:18:38.37 ID:kwE4M7oq0

??《……不明魔女、上空の不明魔女。 聞こえますか?》

 次に目を覚ましたとき、ウィリアム・ビショップ中佐は未だ空中にあった。
 
 だが、頑丈なキャノピーに守られているはずの体は風に吹きさらしで、両手にはとても人間が持てるサイズではないはずの
 M61A2を抱え、背中に感じる重みは空対空ミサイルとM61のアモコンテナ(銃で言うところの弾倉)だろう。
 
??《上空の正体不明の魔女! 応答しないなら撃墜する。 繰り返す、応答がなければ撃墜する》

ビショップ「こちらはアメリカ合衆国空軍ティンダル空軍基地所属、ウォーウルフ1 燃料が残り少ない、着陸許可を求む どうぞ」

 機体の電子系統と接続して初めて意味をなすはずのHUD(ヘッドアップドディスプレイ)が残燃料が少ないことを示している。
 
 これは夢か? そう考え、視界の端に映る表示を見ると空軍司令部との通信がロストしていることを示していた。

 夢だという予感は核心へと変わった。 アメリカ空軍の指揮監視航空システムは世界中どこでもオンラインのはずである。

??《アメリカ? リベリオンのウィッチか?》


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:21:43.06 ID:kwE4M7oq0

 その後も何度か交信を繰り返すがどうも相手が要領を得ない。
 
ビショップ「どうでもいいんだが燃料が残り少ない。 着陸許可をもとむ」

??《わかったわ……。 最後にあなたのお名前を教えてもらえるかしら?》

??《ミーナ!》

??《トゥルーデ、落ち着いて。》

ビショップ「ウィリアム・ビショップ空軍中佐だ。 メインの滑走路を使うぞ」

??《ビショップ?》

 下では何かもめているようだが、夢の中の登場人物が何を言おうと知ったことではない。

 もっとも、夢だとしても墜落するのは気持ちのいいものではないが……


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:23:44.18 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「ランディングアプローチ……フライトスポイラー、チェック」

 一度大きく旋回し滑走路まで距離を取り、着陸のために滑走路への侵入体制を取る。

 キャノピーが無いと轟音がするはずなのに空はえらく静かだ。 

ビショップ「ギアダウン、チェック」

 ヘルメットバイザーのHUDはなんの操作もしていないのに着陸体制に入った旨の情報を提示してくる。

 夢の中とはいえ便利なものだ。

??《中佐、速度が早いわ。 減速して》

ビショップ「これ以上は無理だ」

 滑走路がかなり短いように見えたのでストールぎりぎりまで速度を絞っているのだが、これでもまだ早いらしい。
 
 まるで練習機だな、と静かにひとりごちる。


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:32:59.96 ID:bQm/5dzq0

エースコンバット?


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:37:02.51 ID:kwE4M7oq0

??《滑走路まで250ヤードで300以上!? 貴様、死にたいのか!》

ビショップ「誘導してくれないなら黙っててくれないか、気が散る」

 状態を起こし全身で風を受けながらエンジン出力を絞り、自然に二本の足が前に出る。

 今更気がついたが、どうやら自分は生身に対Gスーツだけで飛んでいるらしい。 夢の中とはいえふざけた話だ。

ビショップ「ランディング」

 両足が、いや両足に取り付けられた愛機によく似たフォルムの機械から伸びたタイヤが設置し、ゴムの焼けた臭いを発する。
 
 本来なら、全て終わってキャノピーを開けたときに感じる臭いだが、それにしてもリアルな夢だ。


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:38:34.52 ID:kwE4M7oq0

??「フルフェイスのヘルメット……顔を隠すわけでもあるのか?」

 数分後、タキシングで滑走路の邪魔にならない位置まで移動し、エンジン出力を落とす作業を行なっていると、とんでもない格好の女の子がこちらを見上げていた。

 ゲルマン系だろうか? とにかく、美少女といってまちがいない。

 下半身は下着一枚だが……

??「とにかく、ヘルメットを外して顔を見せろ」

 えらく高圧的だがこの基地の偉いさんの関係者だろうか?
 
 NATO関係の基地だと思うが無理やり緊急着陸をした以上、国際問題になりかねない。

 ま、所詮夢なのだが…… 酸素マスクを外し、ヘルメットを持ち上げると、普段は感じないサラサラという感覚を首筋に感じた。

 どうやら夢の中の私はかなりの長髪のようだ。 


19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:41:05.98 ID:kwE4M7oq0

??「ネウロイではないようだな……貴様、もう一度所属と名前をいってみろ」

ビショップ「アメリカ合衆国空軍タスクフォース108所属、ウィリアム・ビショップ中佐だ」

??「アメリカ? タスクフォース? ……とにかく、ミーナがリベリオンのティンダル航空軍基地へ確認を行なっている。 わかるまで、そのままでいろ」

??「その必要はないわ、トゥルーデ」

??「ミーナ?」

ミーナ「ビショップ中佐、申し訳ありませんが拘束させていただきます」

ビショップ「罪状は?」

ミーナ「あなたはティンダル航空基地にウィリアム・ビショップで登録されている魔女はいませんでした。 そして何より……」

 後から出てきて、ミーナと呼ばれている少女も恐らくゲルマン系だろう。


21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:42:25.52 ID:kwE4M7oq0

ミーナ「魔導ジェットエンジンを搭載した航空脚はリベリオンでは採用されていないはずです」

トゥルーデ「見たところハルトマンの装備しているものより洗練されているな。 むしろ……」

??「ネウロイみたいだね」

 突然、背後から可愛らしい声が聞こえ、体をそらして振り返ると、そこにはブロンドの少女が……かなり刺激的な格好で立っていた。

トゥルーデ「ハルトマン……おまえは何度ズボンをはけと言えば」
 
ハルトマン「昼寝してたら凄い音が聞こえたからね。 あれ、ジェット魔導エンジンでしょ?」

 三人ともドイツ系の名前で、よく見ると刺激的な格好だが上は……えらく古風なナチスドイツ軍の軍服を着ている。

 少なくともここはドイツやイスラエルではないのだろう。


24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:44:42.36 ID:kwE4M7oq0

トゥルーデ「とにかく、ここで見たことは極秘だぞ。 ハルトマン」

ミーナ「ええ、少なくとも状況がはっきりするまではね……」

ハルトマン「えー、でも」

ミーナ「エーリカさん?」

ハルトマン「わかったよ……坂本少佐は?」

ミーナ「ブリーフィングルームよ、エーリカさん。 中佐が降りるのを手伝ってあげて?」

 トゥルーデと呼ばれた少女に睨まれ、航空機に積むような口径の機関銃を突きつけられる。

 否応もなかった。


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:46:26.07 ID:kwE4M7oq0

数時間後……

ビショップ「覚めないな……それに寒い」

 対Gスーツを脱いでみて分かったのだがどうやら髪が長いだけではなく、胸もあるが、かわりに股間の105mm砲がない。

 ありていに言ってしまえば女体だった。(あと、ズボンも履いていなかった)

 夢にしてはやたらリアルな感覚の一人部屋(営倉がないらしい)は、じわじわと現実味を伝えてくる。

??「おーい、飯だぞー」

 突然、思考が引き戻され、食べ物用の小窓もあるのにドアを開けている、胸の大きな少女が視界に入った。


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:47:56.16 ID:kwE4M7oq0

??「おう、アンタ リベリオンの人間なんだろ? 昼間の警報の原因?」

 トレーに乗せたそこそこ豪勢な食事を差し出しながら矢継ぎ早に質問をほうられる。

ビショップ「私は合衆国空軍の所属で、昼間の警報は……多分」

 言い終わってからハッとした。

 気を抜いてしゃべろうとすると自然に女性英語が口から出てくる。

??「そうかそうか、ま、いいや! アタシはシャーロット・E・イェーガー大尉だ。 あんたと同じリベリオン合衆国出身、気軽にシャーリーって呼んでくれよ!」
 
ビショップ「ありがとう、シャーリー。 私はウィリアム・ビショップ。 ちなみに中佐だ」

シャーロット「中佐!? あちゃー……ま、いいや、誰も聞いてないし」


30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:52:30.75 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「ああ、ウィルとでも呼んでくれ……それじゃ、シャーリー、質問なんだが……」

シャーロット「なんでも聞いてくれ」

ビショップ「ここはどこだ?」

シャーロット「あ? ここはロマーニャの空軍基地だけど?」

ビショップ「ロマーニャ? ローマか?」

シャーロット「それは首都だろ?」

 やはり会話がかみ合わない。
 
 破天荒な夢だと思っていたが、仮に現実だった場合。

 この世界にはアメリカもロシアもそれどころかEUやアフリカ連合も存在しないのかもしれない。


31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:54:39.93 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「それじゃ、もう一つだ。 今日あった士官はだいたいみんな女性……いや少女だった。 ここでは普通なのか?」

シャーロット「そうだな、航空基地や機甲師団では多いんじゃないか? だいたいウィルだって女だろ?」

 めまいがする、とんでもない所に来たと思った。

 北アフリカの方が、まだいくらかましだったのではと思う。

シャーロット「それじゃ、次はアタシの番だな! 昼間の飛行脚の轟音……ジェットだろ?」

ビショップ「……ああ」


35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 01:57:28.20 ID:kwE4M7oq0

シャーロット「やっぱり! リベリオン製か?」

ビショップ「アメリカ製だ」

シャーロット「誤魔化すなって! で、で、速度はどのくらい出るんだ?」

ビショップ「1390ノット」

シャーロット「1390!?」

ビショップ「マッハ2.4だ」


37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:00:15.57 ID:kwE4M7oq0

シャーロット「す、スゲー…… なぁなぁ、アタシも乗ってみていいか?」

ビショップ「あなたの上官に聞きな……聞け」

シャーロット「先にあんたに聞いておいたほうがいいと思ってさ! 頼むよ!」

ビショップ「構わないって言ってるだろ?」

 適当にあしらいながらベットに横になる。
 
 正直、めまいが収まらなかった。

シャーロット「約束だからな! 音速の二倍か……どんな世界なんだろうなっ!」

??「うじゅっ!? どったの、シャーリー?」

シャーロット「ははっ、ルッキーニ! ついに音速を超える日が来たかもしれない!」

ルッキーニ「ええー! それ、ホント? シャーリー!?」

 廊下からはやかましい声がいつまでも聞こえたが、自分の心に栓をして眠りにつく。

 正直、自分が死ぬ夢を見た時より遥かに夢見が悪そうな心境だった。


41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:07:58.66 ID:kwE4M7oq0

シャーリー「ヘイ、ウィル! いい朝だな!」

 翌日。
 
 アフリカ連合軍との戦いから開放され久々の惰眠を貪っていた私はやたらテンションの高い声でたたき起こされた。

ルッキーニ「おっはよー! あさだぞー!」

 それも二人。

ビショップ「勘弁してくれ……今何時だ?」

シャーリー「中佐……もう、8時だぞ?」

ビショップ「あぁ、畜生」

ルッキーニ「あー、ちゅーさ、げひーん」

シャーリー「あははっ! それじゃ、今日は絶好のテストフライト日よりだからな! 朝食を食べたら飛んでみよう!」

ビショップ「私は禁固命令を受けているのだけど?」

ルッキーニ「にひっ、ここじゃそういうのあんまり関係ないんだよ?」


43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:12:24.67 ID:kwE4M7oq0

 ふざけた軍事基地もあったものだ。

 ふざけていると言えば、先程から私にまとわりついてくるこの少女……ローティーンにしか見えないし、実際そうなのだろう。

 軍服を(上半身だけ)着用し、元気にはしゃぐ姿からは想像もできないが、彼女も人を撃つのだろうか?

 酷いところだ……素直にそう思う。

ビショップ「巡航速度でも対Gスーツがないと危険よ。 上官にいって……」

 なんてことだ、起きてからずっと女性英語でしゃべっていたのに違和感すらなかった。

 そして、起き抜けの気だるさが、これは夢ではないと教えてくれる。

シャーリー「ま、そのへんはハルトマン中尉がなんとかしてくれるさ」

 やっぱり、ふざけた軍事施設だ。


45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:17:54.70 ID:kwE4M7oq0

??「あれ、シャーリーさん ルッキーニちゃん。 その人は誰ですか?」

シャーリー「アタシの同僚さ! 昨日この基地に付いたんだ」

??「へー、でもそれだったら昨日紹介してくれてもいいのに……」

 昨日に引き続き、悪酔いのようなめまいがする。

 アジアンのジュニアスクールの生徒といっても通用しそうな少女。

 水兵服を着て、下はブルーの……ボディースーツかもしくはスイムスーツだろう。

ルッキーニ「ネウロイのスパイだからね!」

??「えっ!?」

シャーリー「滅多なことを言うんじゃないぞー、ルッキーニ。 ま、いろいろ事情があんのさ」

??「はー、そうなんですか。 初めまして、えーと……」

ビショップ「ウィリアム・ビショップ中佐」

??「中佐さんなんですかっ!? え、えっと宮藤芳佳であります!」

ビショップ「気にしないで……気にするな」


47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:23:59.27 ID:kwE4M7oq0

シャーリー「音の向こう側さ!」

芳佳「音の……向こう側?」

ビショップ「私の愛機に乗りたいってせがまれてね。 許可はとっているようだし……」

 そういうと周りの二人が凄まじい勢いで目をそらしたような気がした……

 いくらなんでも冗談だと信じるほかない。

芳佳「じゃ、私はお洗濯がありますから……」

シャーリー「おう! 暇だったら空を見てみるといいぞ!」

ルッキーニ「芳佳はねー! 掃除とか洗濯とか、あとゴハンも作ってくれるんだよ!」


48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:32:34.24 ID:kwE4M7oq0

 ……前半二つは自分でやれと突っ込みたいがダメなのだろうか……


シャーリー「んで、ここがハンガーで……げっ!」

ルッキーニ「あちゃぁ……」

トゥルーデ「人の顔を見るなりいい反応だなリベリアン、それにルッキーニ少尉」

ハルトマン「なはは……ごめんねー」

シャーリー「やばいな、逃げるか!」ごんっ!

ルッキーニ「うじゅっ! シャーリー!」

坂本「どこに行くんだ?」

シャーリー「しょ、少佐……」


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:39:49.57 ID:2S8S30NaO

シャーリーは目立った活躍しないけど縁の下の力持ち的な感じが好き
遊び心持った夢を忘れない大人って素敵

17歳だけどな


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:42:38.38 ID:kwE4M7oq0

坂本「挨拶が遅れてすまなかったな、ビショップ中佐殿」

ビショップ「いや……」

 目の前の少女はやはり軍服のようだが、海軍の士官用制服だろうか?

 少なくとも現代のメジャーな国の制服ではない気がする。

 どこかで見た記憶はあるのだが……

坂本「ああ、心配するな。 あの二人には罰掃除を命じておいた」

 そして、やはり無許可だったのか。

トゥルーデ「中佐も部屋に戻ってくれ……」

 トゥルーデと呼ばれる少女は、キョロキョロと周囲を見渡す。 

 よくは知らないが交戦中の軍事基地で国籍不明の不審者を一人で歩かせるわけにもいかないのだろう。

トゥルーデ「しかたない、私が……」

 その時、ハンガーにサイレンが鳴り響いた。

 聞きなれた電子的なサイレンではなく、一昔前の映画に出てくるようなサイレン音。

トゥルーデ「ネウロイか!? こんな時に!」

坂本「とにかく、ブリーフィングルームに……いや、シャーリーとルッキーニを出すか」


52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:53:17.43 ID:kwE4M7oq0

トゥルーデ「だ、そうだ。 二人とも行けるか?」

ルッキーニ「もっちろーん!」

シャーリー「ああ!」

 柱の影からモップをもった二人が飛び出してきた。

 ちなみに掃除道具を持った=掃除をしたでは無い。

坂本「やはり聞いていたか……」

トゥルーデ「帰ってきたらストライカーユニット全機の清掃だな」

ルッキーニ「うへぇ……」

シャーリー「なぁ、少佐」

坂本「なんだ?」

シャーリー「中佐も一緒に出撃できないか?」

トゥルーデ「まだ言うのかリベリアン!」

シャーリー「ハルトマンのストライカーより高性能だとしたらとんでもない戦力になるはずなんだ! 少佐!」

トゥルーデ「身元もはっきりしないんだぞ!」


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 02:57:54.46 ID:kwE4M7oq0

坂本「まぁ、待てバルクホルン」

トゥルーデ「し、しかし少佐……」

坂本「中佐殿、お願いできるだろうか?」

ビショップ「……燃料の補給と整備が受けられればすぐにでも」

シャーリー「ふふーん! 任せといてくれ! 昨日の夜には整備は完璧にしてある!」

ビショップ「予備部品もなしで?」

シャーリー「ああ、交換が必要な部品は見当たらなかったし……とはいってもちょっと触った程度だけどな!」

 豪快に笑う少女が、最新鋭のF-22(のような機械)を図面も無しに整備したと言われても、信用性に欠けるが……
 
 とりあえず、飛んでみて違和感があれば帰投すればいい。


55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:10:56.31 ID:kwE4M7oq0

トゥルーデ《離陸完了、編隊に加わる》

ルッキーニ《ウィルも早くおいでよー》

 迎撃に上がっているというのに明るいルッキーニの声に苦笑を漏らしながら各部の動作チェックを続行する。

 酸素マスクを長いホースで機体コネクタ(だいぶ探したが右足側の内側にあった)に接続し、酸素供給が始まったのを確認する。

 電子系は異常なし。 制動系もとりあえず異常なし。 出力正常……

 普段は輸送機用だという滑走路の上で黙々とHUDに表示される情報に目を通す。

ビショップ「中距離ミサイルの残弾数が少ない……仕方がないか……」

 どうやら装備は、あの戦闘中のままのようだ。

坂本《どうだ、中佐?》

ビショップ「とりあえずは問題ない。 離陸する」


57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:25:08.44 ID:kwE4M7oq0

 F119-PW-100エンジンが唸りを上げ、冗談のような推進力を生む。

 アフターバーナーに点火し、スロットルをマックスまで押上てやると想像したよりはるかに短い距離で機体は宙に浮いた。

シャーリー《うぉー、すごいな……》

 上空で旋回待機していた三人と合流するべく空中で旋回するが……合流は難しかった。

トゥルーデ《速度を落とせ! それでは付いてけない!》

ビショップ「これ以上は無理だ、失速する!」

シャーリー《ど、どんだけだよ……》

ルッキーニ《どんだけー》

トゥルーデ《やむおえないな……中佐、先行してくれ》

ビショップ「いや、その必要はなさそうだわ」


58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:28:18.67 ID:q7IKiIOi0

だんだん女になってくとか怖すぎ


59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:28:36.74 ID:kwE4M7oq0

シャーリー《いや、アタシ達のストライカーじゃついて行けねーって!》

ビショップ「坂本少佐、目標は正面から接近する三機ね?」

坂本《あぁ……中佐の固有魔法は……》

 本来なら計器版に表示されるはずのレーダーの情報が直接頭の中に入ってくる。 

 レーダーに表示されるブリッツはIFF表示なしが6機。

 近い三機が友軍機、遠い三機は敵軍機だろう。

ビショップ「距離は75弱……レーダーロック、フォックス2」

 M61A2に表示されているタッチパネルで使用兵装を選択し、引き金をスイッチを押し込む。

 これでミサイルと連動してくれるのは感覚でわかった。


60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:32:17.77 ID:kwE4M7oq0

シャーリー《わわっ!?》

ルッキーニ《なんか飛んでった!》

トゥルーデ《中佐! 何をやったんだ!?》

 背中に背負った装置の外壁が開く音とほぼ同時に三発の空対空ミサイルが目標めがけて飛んでいく。

 ミサイルが目と鼻の先を飛んでいくのは非常に新鮮だった。

 正直にいって一瞬、漏らすかと思った。

坂本《ネウロイ、中型一機と小型2機……全機撃墜を確認。 帰投しろ》

シャーリー《ま、マジかよ……》

ルッキーニ《すごーい! まだ、見えてもないのに十発十中だ!》

トゥルーデ《……》

ビショップ「了解、着陸する」

 機体を反転させ三人の間を抜けて着陸体制に入る。

 すれ違いざま、はしゃぐ二人とは別に、トゥルーデと呼ばれていた少女に睨まれていたような気がした……


64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:43:42.48 ID:kwE4M7oq0

芳佳「あ、おかえりなさい。 もう終わったんですか?」

 滑走路の横で、のんきに洗濯物を干していた芳佳が着陸後、F-22を外すのに手間取っている私に声をかけてきた。

ビショップ「ええ、牽制で撃ち込んだミサイルが直撃したみたいで……」

芳佳「みさいる? あ、洗濯物がっ」

 エンジンから生まれる風に巻き込まれて宙を舞う洗濯物をゲンナリとした目で見つめる芳佳。

ビショップ「手伝おうか? 芳佳ちゃん」

芳佳「いいの、リーネちゃん……あれ?」


66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:50:44.84 ID:kwE4M7oq0

 驚いたように顔を上げる少女に、私も思わず口を抑えた。

芳佳「リーネ……ちゃん?」

ビショップ「い、いや……今のはつい……」

 驚いたように見開かれていた芳佳の目にゆっくりと涙が浮かぶ。

芳佳「リーネちゃん?」

ビショップ「いや、私はウィリアムよ?」

芳佳「……そうですよね……」

 どんどん自分の英語のイントネーションが丸く、女性的になっていくのを自分でも感じていたが……

 まさか、あんな言葉が自分の口から出てくるとは思わなかった。

芳佳「リーネちゃん……」

ビショップ「よ、芳佳ちゃん! ぶぎゃっ!」

 芳佳はついに嗚咽を上げ始めてしまう。

 私は……なんとか、彼女の涙を止めようと無理やりF-22から両足を引き抜き……顔面から地面に落下した。

芳佳「ビショップさん!」


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 03:58:08.09 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「だ、大丈夫、大丈夫よ」

 滑走路の花壇のような部分に落ちたおかげであまり衝撃は感じなかった。

 もっとも、かなりキツイ匂いがしたので植えられていたのはハーブか何かだろう。

芳佳「ほ、本当ですか? 今治療を……」

ビショップ「大丈夫だってば、芳佳ちゃん」

 私の一言に芳佳が再び固まる。

ビショップ「あ、ごめんなさい。 心配してくれてたのよね?」

芳佳「似てる……」

 そういうと、何を思ったか対Gスーツの上から私の胸をわしずかみしてきた。

ビショップ「あ、あの?」

芳佳「やっぱり、違う……でも……」

 じー、と私の顔を見つめる芳佳に、一抹の気恥しさを感じながら視線をそらすと、こちらに向かって走ってくるブロンドの少女が見えた。


69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:07:30.12 ID:kwE4M7oq0

??「な、何んてことをしてくださってますの!?」

ビショップ「は?」

??「宮藤さん! またあなたですのね! やっぱりあなた、わたくしに何か恨みでもあるのではなくて!」

芳佳「あ、そ、そうだ! ここペリーヌさんのハーブ園!」

 ペリーヌと呼ばれた少女は今にも牙をむきそうな表情でこちらに殺気を放っている。

ビショップ「そうなの? ごめんなさい、ペリーヌさん」

ペリーヌ「ごめんで済んだら軍警察はいりませんわ! リーネさ……ごほんっ、宮藤さん、こちらの方は?」

芳佳「リベリオン航空部隊のウィリアム・ビショップさんです」

ペリーヌ「リベリオンの…… もしかして、ユニットから落ちたんですの?」


71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:12:26.80 ID:kwE4M7oq0

芳佳「リベリオン航空部隊のウィリアム・ビショップさんです」

ペリーヌ「リベリオンの…… もしかして、ユニットから落ちたんですの?」

芳佳「あ、はい……」

ペリーヌ「お怪我はございませんこと?」

ビショップ「え、ええ……お陰様で」

ペリーヌ「レディに傷を作らないお役に立てたのならハーブもきっと本望ですわ」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「か、勘違いしないでくださるかしら? ま、今回は新入りさんのようですし? 大目に見ておくだけですわよ」

 ペリーヌと呼ばれた少女は癖の強いのか、巻いているのかわからないウェーブのかかった髪をいじりながらそっぽをむいた。

 仲間思いのいい子のようだ……あまり目立つタイプではないと見たが。


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:21:56.63 ID:kwE4M7oq0

??「オイ、昨日からうるさいんダヨ! サーニャが起きちゃうダロ!」

??「眠い……」

シャーリー「おーい! スゴかったな!」

 息を切らせて走ってくるシャーリーとその後ろからぷりぷり怒りながら出てくる二人の少女。

??「なんなんだよ、そのストライカー! とんでもない爆音出してわざわざ、営舎の近くの輸送機用滑走路で離陸ってサーニャに対する嫌がらせダロ!」

??「エイラ……」

 シャーリーは軽く会話するなりF-22に飛びついて眺めたり、恐らく整備用のハッチだろうと思われる場所を開けて触りたくったりしていた。

 よほど、気に入ったのだろう。
 
??「オイ、聞いてんのカヨ?」

ビショップ「あ、あぁ……ごめんなさい」

 軍用ジェットの歴史は平時は近隣住民からの苦情との戦いだった。

 まさか軍事基地でまで騒音で文句を言われるとは思っていなかったが……

??「あの……もうちょっと静かになりませんか?」

 おとなしそうなロシア系の顔立ちの少女が、北欧系の怒れる少女に続いて発言した。


75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:34:33.23 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「ここでも滑走距離が結構ギリギリで……アフターバーナー吹かさ無いで離陸は難しいの」

??「1kmも滑走距離があって離陸できない戦闘脚があるわけないダロ!」

??「もういいわ、エイラ」

エイラ「でもサーニャ……」

芳佳「アフターバーナーってなんですか?」

シャーリー「アタシも気になるな!」

 いつの間にかこちらに向き直っていたシャーリーと芳佳に説明を求められ、ため息をひとつつくと私はF-22に近づいた。

ビショップ「簡単に言うとジェットエンジンの排気に対してもう一度燃料を吹きつけて燃焼させて、高推力を得るのよ」

シャーリー「つまり排気系の残留酸素に無理やり着火するのってことか?」

ビショップ「極端にいってしまえばそういう事ね」

芳佳「はぁ……?」

 よくわかっていないような芳佳と、合点したような顔になるシャーリー。
 
 まだよく知らないが、この二人の対比は面白い。


76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:42:25.50 ID:kwE4M7oq0

ルッキーニ「シャーリー!」

シャーリー「おお、ルッキーニ!」

ルッキーニ「どう、どう、面白そう!?」

シャーリー「ああ、こいつは最高だね!」

 そう言うとシャーリーは再びF-22に向き直り、ルッキーニと二人で簡単な整備のような事をやり始めた。

芳佳「……あの」

ビショップ「ん?」

 芳佳に袖を引かれて振り返ると、怒れるエイラと呼ばれた少女と、目をこすりながら恨めしげにこちらを見つめている少女と目が合う。

エイラ「だいたい、なんなんダヨ、オマエ」

ビショップ「ウィリアム・ビショップ空軍中佐」

エイラ「リベリオンに空軍はないんじゃなかったノカ?」

ビショップ「そうらしいわね」


78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 04:57:56.40 ID:kwE4M7oq0

芳佳「あのー」

サーニャ「えっと……?」

ミーナ「ほら、皆さん。 中佐が困ってるでしょう?」

 疑いの目でこちらを見つめるエイラさんに難儀していると、救いの声が思わぬ方向からかけられた。

エイラ「……フンッ」

ミーナ「エイラさん?」

エイラ「悪かっタナ。 中佐」

 そう言い残すと、もう一人のサーニャ?の手を引いて歩き去ってしまう。

 あの二人には親友とかそういう次元ではないものを感じた。

 うち(アメリカ軍)にも居ないわけではなかったが、同性あ……

ミーナ「ビショップさん?」

ビショップ「は?」

芳佳「えっと……途中から、全部声に出てましたよ?」


80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:05:37.11 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「あ、ごめん。 芳佳ちゃん」

芳佳「ううん、いいよ リーネちゃん。 あ……」

ミーナ「……リーネさん?」

ビショップ「中佐、私は……」

ミーナ「ビショップ中佐。 少しお話を聞かせてもらってもいいかしら?」

ビショップ「あ、はい」

ミーナ「場所をうつしましょう、案内するわ」

ビショップ「はい」


81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:20:27.79 ID:kwE4M7oq0

ミーナ「先程の戦闘で、ビショップ中佐が放ったのはロケット弾の一種かしら?」

 連れてこられたのはミーナと呼ばれている少女の私室。

 中には他にも既に二人の少女の姿があった。

ビショップ「いえ、中距離対空ミサイルです」

坂本「それは、ロケットとどう違うんだ?」

ビショップ「うちっぱなし能力の有無が挙げられます。 先程使ったものなら一度ロックオンした目標の熱源を探知して目標を追尾します」

トゥルーデ「……」

ミーナ「シャーリーさんが簡単に機体を調べて報告してくれたの。 大型で高出力の魔導ジェットと高性能な電子システム。 少なくとも今のリベリオンで開発できる代物ではないというのが彼女の見解だったわ」

トゥルーデ「私も同意見だ」

坂本「同じ空を飛んだバルクホルンの言葉は正しいと信じる、そこでだ……」

ミーナ「ウィルアム・ビショップ中佐。 あなたは一体なにものなの?」

ビショップ「アメリカ空軍108タスクフォース所属のウィリアム・ビショップ中佐です」

ミーナ「アメリカ……私たちには耳覚えのない地名なの」

ビショップ「ええ、私もこちらの国名はまったく聞き覚えのないものでした」


83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:24:34.13 ID:kwE4M7oq0

坂本「つまり……どういうことだ、ミーナ?」

ミーナ「まだ、言い切れないけど……中佐は私たちとは違う世界の人間なのかも」

トゥルーデ「そんな馬鹿な話があるか! 小説やバンドデシネじゃないんだぞ」

 トゥルーデと呼ばれる少女が机を叩いた。

ミーナ「なら、トゥルーデはどう思うの?」

トゥルーデ「こいつはネウロイに洗脳されたリーネだ」


85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:31:44.86 ID:kwE4M7oq0

 私を指さしてそう宣言するトゥルーデ。

ミーナ「その根拠は?」

トルゥーデ「飛びかたがリーネのそれとよく似ていた。 一緒に飛んでみればミーナにもわかるはずだ」

ビショップ「待ってください、私はそのリーネとかいう人を知りません」

トゥルーデ「口ではなんとでも言える!」

坂本「落ち着けバルクホルン」

 にらみ合う私とトゥルーデの間に坂本少佐が割り込む。

ミーナ「……美緒はどう思う?」

坂本「たしかにリーネによく似ているが……ネウロイにしてはやり方が回りくどすぎる」


86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:48:13.95 ID:kwE4M7oq0

 それから、二人に退室を促し、ミーナ中佐は私に向き直った。

ビショップ「中佐、リーネというのは?」

ミーナ「あなたが現れる直前の戦闘で行方不明になった隊員よ……突然、操作不能に陥りストライカーが光ったかと思ったら消えていたわ……」

《ウォーウルフ1が発光している! 視認不能!》

 僚機の悲鳴のような叫び声を思い出す。

ビショップ「私も……同じような状況でした」

ミーナ「じゃぁ、やっぱり……あなたとリーネさんが入れ替わったと考えるのが自然ね……」

ビショップ「……ミーナさん。 今は何年ですか?」

ミーナ「1945年よ」

ビショップ「私は1978年の生まれです」

 中佐は驚いたような顔をしていたが、世界が違うという中佐の発想が確かなら、年代は意味をもたないかもしれない。

ミーナ「お、おいくつなのかしら?」

ビショップ「前の世界では37歳でした」


87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 05:54:39.83 ID:kwE4M7oq0

 そういった途端、ミーナさんは立ち上がり私の両手を固くつかんだ。

ミーナ「な、仲間ね、リーネさん!」

ビショップ「あ、あの?」

 瞳を輝かせて手を握るミーナさんは、はっとわれに帰ると赤面して再び椅子に腰掛けた。

ミーナ「あ、おほんおほん……よければそちらの世界の事を聞かせてもらえるかしら? 何かの参考になるかもしれないわ」

 私はゆっくりと口を開いた。

 西暦2015年に、「アフリカを取り戻す」をスローガンとする反政府運動がアフリカ全土で激化し、アフリカ諸国は戦乱の嵐に包まれた事。

 NATO加盟国は多国籍軍をアフリカに派遣し、各地で作戦を行っていた事。

 しかし、反政府軍はどこからか入手した最新兵器で武装化されている上に地形を生かしたゲリラ戦を展開しており、戦局は泥沼化していた事。

 旧友のホセ・“ガッツ”・グティエレスと共に第108タスクフォースを率いて任務に従事していた事。
 
 ある日、同じ指揮下にあるヘリ部隊が正体不明の爆発で壊滅する事件が発生し、兵士達は口々に「反政府軍が新型爆弾を開発した」と噂しあった事。


89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:05:25.71 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「私は、その事件に一人の男の影を見て……その男を追っていました」

ミーナ「……そう、あなたが飛んでいたのは人と人が憎しみあう空なのね……」

 ミーナさんは深くため息をつき、窓の外。 どこまでも広い青空を見上げた。

ミーナ「事情はわかりました。 この問題は私の責任で処理します……しばらくはこの部隊で一緒に過ごしてもらえると助かるわ」

ビショップ「わかりました」

 退室を促され、ゆっくりと立ち上がった私に、ミーナさんが「あ、そうだわ!」と手を叩いた。


91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:13:58.54 ID:kwE4M7oq0

エイラ「なんで、中佐達がここにいるんダヨ」

ミーナ「新型ストライカー F-22は索敵能力が高いそうなの。 もしかしたらサーニャさんとローテーションが組めるかもしれないわ」

サーニャ「そうですか……」

エイラ「で、どうして今夜は一緒に飛ぶなんて話になってるんダヨ」

ミーナ「新型の運用試験も兼ねてるから性能が不安なの。 サーニャさんはあくまで後詰よ」

エイラ「ふ、二人っきりだなんて絶対許さないカンナ!」

サーニャ「わがまま言っちゃダメよ、エイラ」

エイラ「だって、サーニャはただでさえ寝不足なんダゾ……」

ミーナ「だからこそ、今夜の夜間哨戒は二人でやってもらいます。 いいですね?」

サーニャ「はい」

エイラ「キョウダケダカンナ!」

サーニャ「行ってきます……」

ビショップ《ウォーウルフ1、離陸する》


92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:15:23.28 ID:kwE4M7oq0

 レシプロではありえない轟音と共に飛び立っていくストライカーを見送りながらミーナは一人ため息をついた。


93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:22:50.19 ID:kwE4M7oq0

サーニャ《ららーらーらー♫》

 無線から漏れ聞こえる歌声。

 例の夜間警戒機の少女が歌っているのだろう。

ビショップ「ウォーウルフ1より管制塔、定時連絡。 異常なし」

 暗視装置無しでも十分な光を得ることのできる高高度を飛行しつつレーダーに目をやりながら一定感覚で旋回する。

 本来なら単機で使用するには微妙な性能だが、昼間の先頭から予測するに相手は対レーダー処置を全く施していない。

 もっとも今が1945年だとすれば航空機がこうして高性能レーダーを積んでいることが異常なのだろうが……

サーニャ《あ……》


94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:30:24.77 ID:kwE4M7oq0

 巡航速度ですれ違うと、少女は驚いたようにこちらを目で追い続けていた。

 他の航空機と亜音速でパスするなんて経験したことがないのかもしれない。

サーニャ《速いですね》

 少しだけ興奮したような声が無線から聞こえた。

 やはり空を飛ぶものとして大なり小なり速さには憧れがあるのだろう……

ビショップ「ははっ、まぁ、ステルス性能を捨てて増槽を付けてるからあんまり速度は出せないんだけどね」

 企画の違う増槽を文字通り針金でくくりつけてなんとか機能させている状態で、あまり速度を上げるとちぎれて落ちかねない。

 現代戦闘機は翼で揚力を得ない分、ガス欠に極めて弱いのだ。

サーニャ《セーブして音速……すごい、未来の飛行脚みたい……》

 ほうけたように呟くサーニャさんに内心舌を巻く。

 実はかなり鋭いのかもしれない。


96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:42:55.58 ID:kwE4M7oq0

 結局、その夜は敵の襲撃もなく。

 次の日からは私には軟禁されていた部屋が与えられ、基地内の行動が許された。

 シャーリーさんや、ルッキーニちゃんに基地を案内してもらったり、芳佳ちゃんの家事を手伝ったりなんだかんだでひどく充実していたと思う。

 一週間、二週間と過ぎたがF-22はシャーリーさんの簡易メンテナンスで問題なく運用できていた。

 ステルス塗料は劣化しているだろうがそもそも敵「ネウロイ」が対空レーダーを装備しているのかどうなのか。

 一ヶ月がたった頃。

 私は何度か迎撃に上がり、ミサイルを使い果していたがM61A2の20mm徹甲弾はネウロイに驚くほど効果的だった。

 芳佳ちゃんが元気がないのが気になったが、シャーリーさんはF-22をなんとかモノにしようとなんども飛行してはハイパワージェットの挙動をつかんでいた。

 だが、私はちょっとした予感を感じていた。

 始まりが唐突なら、きっと…… 

シャーリー「ネウロイ?」

坂本「ああ、今回はシャーリーとウィルに上がってもらう」


98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:53:34.94 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「わかりました」

エイラ「占いは……ま、平穏で何も変わりないって感じダナ。 だいたい中佐の新型ならなんの問題もないだろうシナ」

シャーリー「ま、今回はエイラの占いを信じて行こうかウィル! 帰ってきたらもう一度貸してくれよ?」

ビショップ「いいけど、壊さないでよ? シャーリー」

 何気ない会話だけど、今や私は彼女たちの一員として迎え入れられてる感じがする。

 失うにはあまりに惜しい仲間たちだった。


99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 06:58:45.61 ID:kwE4M7oq0

整備員「だいたい、オーダー通りのセッティングですよ! 最高速重視なのでかなりピーキーですけどね」

シャーリー「わかってるよ、アタシなら大丈夫だって」

整備員「魔導エンジン始動……装備重量は~、カタパルト出力の調整を!」

シャーリー「サンキュー、デッキオフィサー!」

整備員「射出!」


100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:01:04.79 ID:kwE4M7oq0

同時刻

ビショップ「……」

整備員「残弾数は217発、機体重量はかなり軽くなっているようなので離陸距離は長くないと思います」

ビショップ「ええ……」

整備員「……大丈夫ですか?」

ビショップ「大丈夫よ。 M61への通電を確認……ウォーウルフ1より管制塔、離陸許可願います」

ミーナ《こちら管制塔、離陸を許可します。 滑走路へ侵入してください》

 整備員たちが一様に敬礼を送ってくれている。

 この一ヶ月だけで稼いだ撃墜機数はかなりのものだ……ふたつの世界でトップエースの称号を持っている人間なんて恐らく私が初めてだろう。

ビショップ「滑走路へ侵入、管制装置の最終確認……チェック」

ミーナ《いってらっしゃい、あら、宮藤さん?》

芳佳《あ、あの! 美味しいご飯作ってまってますから!》

ビショップ「ありがとう、芳佳ちゃん ウォーウルフ1離陸します」


105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:22:56.71 ID:kwE4M7oq0

 空中で旋回待機し、最高速度で接近してくるシャーリーにあわせて、ストールギリギリで並んで飛ぶ。

 なんとか編隊を維持できたのは結局シャーリーとエーリカさんだけだった。

シャーリー「この速度で物足りなくなるとは思わなかったなぁ」

ビショップ「我慢しなさい、レーダーで敵を捉えたわ。 高度はかなり低いわね……」

シャーリー「レーダーに引っかからないようにだろ? 上からレーダー照射されてるなんて普通は思わないって」

ビショップ「そうね…… かぶせるわよ!」

シャーリー「あいよ、相棒! いーはー!」

 アフターバーナーに点火し、シャーリーさんを振り切って前方から急接近してやる。

 ヘッドオンでの正面接近、まるでチキンレースだがひく気はしない。


106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:24:58.65 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「どこを狙っているのよ!」

 何発か放ってきたレーザーも狙いははるか後方。

 音速の二倍の速度で接近する敵に対する迎撃能力なんて持っていないのだから当然だ。

ビショップ「フォックス1!」

 M61A2が短く火を噴くと先頭を飛んでいたネウロイが破片をまき散らしながらきりもみし、海面に激突した。

ビショップ「一機撃墜!」

シャーリー《敵の連携が乱れた! こっちのはあたしの獲物だぞ!》

 目をやると15機編成で飛行していた対地攻撃型ネウロイと護衛機は編隊を乱し、バラバラに飛んでいた。

 最初の一撃で編隊長機を落としたのかもしれない。


107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:27:32.11 ID:kwE4M7oq0

ビショップ「敵を撃墜!」

シャーリー《こっちもだ!》

 M61が火を噴くたびに敵の数が減っていき、護衛機はシャーリーが確実に潰していく……

ビショップ「後2機!」

シャーリー《アタシは右のやつをもらうよ!》

 高速で接近し、追い抜く寸前に引き金にかけた指に力をいれたその瞬間。

 F-22ストライカーは唐突に私のコントロールを離れた。


108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:29:57.20 ID:kwE4M7oq0

シャーリー《お、おい! ダッチロールしてるぞ? 被弾したのか?》

ビショップ「わからない、計器は正常……これって……」

ミーナ《ビショップさん! 何があったの?》

シャーリー《ウィルのストライカーがコントロール不能! エマージェンシーをコールしてくれ!》

ミーナ《わかったわ!》

芳佳《ウィルさん!》

ビショップ「強制パージが効かない……やっぱり、あの時と同じ……」

シャーリー《頑張れ! くそっ、追いつけない!》

芳佳《大丈夫なんですか!?》

ビショップ「大丈夫、大丈夫よ」

芳佳《リーネちゃんだけじゃなくて、ウィルさんまで居なくなったら……私……》

 芳佳ちゃんの鼻声には心惹かれるものがあるが、きっと、これで彼女の親友は帰ってくるだろう。

 そんな予感がした。


109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:36:07.70 ID:kwE4M7oq0

シャーリー《ウィル!》

ビショップ「また逢いましょう。 相棒」

シャーリー《何を言って!? ウィルのストライカーが発光……消えた?》

ミーナ《司令部にエマージェンシーをコールしたわ! すぐに哨戒艇がそちらにつくはずよ!》

リネット「ダメだ! 機体を捨てる! メーデー、メーデー……って、あれ?」

シャーリー「リーネ!?」


110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:38:36.16 ID:kwE4M7oq0

グラティエス《爆撃機がモスクワ上空に到達する! どうしようもないぞ!?》

ビショップ「……待たせたわね」

グラティエス《ボス!?》

ビショップ「悪い夢でも見ていた気分だ。 グラティエス、状況を説明しろ」

グラティエス《ハッハァ! まずは目の前の爆撃機をたたき落とすのが先決ですよ!》

ビショップ「了解! かぶせるぞ!」

グラティエス《いーはー!》


112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:46:06.61 ID:kwE4M7oq0


 あれから数週間……

 あの戦いの後、俺たちはトリニティをもったマルコフと首都で激突。

 奴の戦死という形でからくも勝利を収めた。

 そして……

シャーリー「いってー! ってここは?」

ビショップ「今度はお前か、ガッツ……」

シャーリー「あ、なるほど……また会えたね。 相棒」

       STRIKE WITCHES:ASSAULT HORIZON 
                       END

 http://www.youtube.com/watch?v=qtiFWMLTKHQ

 (ネタバレ注意、アサルトホライズンED)


113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:48:42.40 ID:ijneU4VZ0

良いSSだったぞ


114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 07:53:21.90 ID:DZgw6R9Q0

グレイト


118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 08:09:16.89 ID:xEDGeXVnO

素晴らしいSSだった乙


119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 08:19:31.31 ID:Evv379reO

あークソ面白かった乙
こういうの良いな


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